もう一度清酒造りを盛り上げたい。老舗酒蔵が挑む、若年層から親しまれる新ブランド「ikou」に託した想い
株式会社東亜酒造は埼玉県羽生市で清酒「晴菊」を醸す、酒造メーカーです。晴菊大吟醸は、IWC2020ゴールドメダル、晴菊特別純米酒は、フェミナリーズ世界ワインコンクール2021にて金賞受賞しました。ウイスキーでは、ゴールデンホース武蔵・武州を販売。2021年2月には20年ぶりに羽生蒸溜所を復活させ、自社蒸留を再開いたしました。
本ストーリーでは、東亜酒造の新ブランド「ikou(いこう)」がどのように生まれたのか、そしてこれからの展望について、代表の仲田恭久とブランドを立ち上げた4名の若手社員がお話いたします。
ikouメンバー(左から石井、要田、大川、浦上)と代表取締役社長 仲田 恭久
寛永2年から続く酒蔵を守る
江戸時代のころは、埼玉県は米処として広く知られ、約700蔵もの造り酒屋があり、東の灘と言う意味の東灘(あずまなだ)と言われるほどの酒処でした。
16世紀から17世紀にかけて酒造りも盛んになり、寛永2年(1625年)に秩父で酒造りをはじめたのが、東亜酒造の原点です。そして、昭和16年に豊かな水に恵まれた穀倉地帯の羽生市に本社を移し、現在に至っております。
主力である、清酒は「晴菊」(はれぎく)をメインブランドとして大吟醸、地元埼玉県の「彩の国酵母」を使用した特別純米酒を製造しております。さらに日本で唯一のムジナモ自生地で国の天然記念物である宝蔵寺沼をPRしようと、地元羽生市で栽培された原料米を使用したブランド、「貉藻」(むじなも)を2020年に立ち上げました。
主力ブランドの晴菊と貉藻
若年層に親しまれることを目標に若手社員による開発がスタート
「今までの東亜酒造にはない製品を」、「若い世代に手に取っていただけるような日本酒を」、「若手が技術を磨き、活躍できる商品開発ができないか」思いを巡らせておりました。そんな中、2021年冬に社内でも指折りの日本酒好き4名の若手社員、石井、要田、大川、浦上にプロジェクトを託しました。
仲田社長:「彼らには、酒質の設計からデザイン、プロモーションまで各担当する業務を活かして商品化してほしいと思いました。」
2021年2月、念願であった羽生蒸溜所の復活が叶い、ウイスキーづくりでは新たな一歩を踏み出していました。その一方、ウイスキーだけが我々の取柄ではなく、清酒造りあってこその東亜酒造という自負を4名は持っていました。
2021年2月に復活した羽生蒸溜所
ブランド名にこめた思い。「憩いを感じてもらえる瞬間を提供する」
2022年初頭より酒質設計の話し合いを繰り返す中で、3月上旬、他社の製品研究に向かう盛岡行きの新幹線に4名の姿がありました。粗方、ひねり出された酒質の次は、ブランド名の考案でした。
石井:「揺れる車内で小さなメモ帳にブランドの候補名を書き出していったのを覚えています。出されたものが、メンバー4名(石井、要田、大川、浦上)のイニシャルを組み合わせた「ikou」でした。」
浦上:「お酒を飲むことで、張りつめた緊張を和らげ、心身を休める「憩い」のひと時を感じていただきたいという願いを込めました。」
また若い世代のアルコール離れ、日本酒離れが激しさを増し、現状のままでは…という危機感を意識しつつも、好きだからこそ、この職に就き、自らの手で納得のいく味にチャレンジできる機会に我々はあると4名の心は沸き立ちました。
大川:「「ikou」にはもう一つ、これまでの東亜酒造の酒造りにはない新たな挑戦、異なる次元、高みへ「行こう」という4名の熱意も込め、商標登録も出願し、商標を取得しました。」
造りたい味わいへの挑戦と葛藤する日々
酒質を話し合う中で、目指すところは、私たちと同じ世代の人に楽しく飲んでいただきたい、日本酒を飲む機会が少なく、苦手意識を持っている人に飲んでみようという機会を作りたいと皆同じでした。
この酒質のものを造るためには、今まで造ってきたジャンルとは一線を画し、今までの東亜酒造にはなかった味わいを目指さなければ、目指す人々のところには届けられません。
各々、経歴や学んできたこと、醸造経験も様々ですが、日本酒が好きであることは皆同じであり、それぞれが歩んできた経験・業務を活かしながら、新たな仕込み手法に取り組みました。
挑戦1年目の味わいを超えるため、2年目に再チャレンジ
浦上:「挑戦1年目に目指した味わいは、香り高く、甘みを出しつつも甘すぎず、程よく酸を出し、長く楽しめる味わいでした。」
仲田社長:「商品を一から造るということで、厳しいようですが、彼ら4名だけが満足するのではなく、会社全体で納得のいく味わいにならなければ、プロジェクトの成果として商品化することはないと事前に4名には伝えました。」
要田:「絶対に納得のいく味わいで商品化させたいと思いました。皆で一心不乱に麹造り、仕込みに励みました。上立ち香をもう少し出したかったですが、含み香に厚みがあり、程よい酸味のある食中酒に仕上げることが出来ました。」
挑戦2年目、1年目に得られたデータや教訓を基に、1年目よりも甘さは控えながらも1年目同様、酸を出すことで、より軽快感のある味わいへと変化し、香りの要素も昨年よりも出すことが出来ました。
仲田社長:「飲み比べていただくと少しずつ上へ歩んでいるように感じます。」
ラベルからもブランドテーマである「憩い」を感じて欲しい
ラベルデザインも、「安らぎ」、「休息」、「オフ」などの「柔らか」、「柔和」、「緩み」のイメージから、角のない丸ラベルを採用しました。
ラベルデザインを考える際にも、従来の漢字を冠したラベルでは「ikou」ブランドの新規性を表現することはできません。
大川:「新たな着眼点でデザインいただこうと同じ羽生市内のデザイン会社である、indesignの入江氏へコンセプト、構想原案を伝え、「憩い」をメインテーマとして、4名の「繋がり」や「絆」、「個性」を表現いただきました。」
それぞれのイニシャルにキーカラーを設定し、各自の干支を柔らかいタッチで表現いただきました。4名共にメガネということで各キャラクターもメガネを付けています。
チャレンジ2年目は、「憩いのひと時」=「好きなことをして過ごすひと時」ということから各自の「趣味時間」にフォーカスしました。
各々の趣味をラベルで表現しようとシリーズ初回は要田の趣味、「サウナ」を各キャラクターがバレルサウナの中で楽しむ様子を表現しました。
さらにikouにはもう一つ、異なる次元へ「行こう」という意味も込めているため、サウナの「ととのう」という要素から、「ととのう」=恍惚、トランス状態となることから、「憩いのひと時」に無我の境地へ誘う一献となりますようにという願いも込めました。
プロジェクトはまだ序章、今後東亜酒造が目指す未来
石井:「一年目、吟醸造りの機会は決して多くはないものの、『自らの手で味を決める酒』造りのチャンスを得て、自社にはなかった酒を造ることは叶いました。二年目、一年目に得られたデータ、造りを重ねる毎に改良を行い、昨年よりも少しずつですが、成長できたと思います。」
要田:「今後は同じ材料でもまったく異なる味の表現や、米、種麹、酵母の品種を変えながら、それぞれの品種に得意があるはずなので、データの蓄積も重ねたいですね。目指すものに近づけるため、チャレンジしたい事はまだまだ沢山です。」
大川:「毎年楽しみに待っていただいている方、新たにブランドを認知頂く方など、多くの方々に取り組みを知っていただき、毎年変化、成長する味わいを届けていきたいと思います。」
浦上:「自信を持って薦められるものを目指し、常に前回を超えることを念頭に、足りない経験は論文や資料を漁り新たな知識・手法を取り入れ奮闘していきたいと思います。」
仲田社長:「毎年、去年よりもという成長が感じられるブランドに育ってほしいです。そして、挑戦する4名を会社全体で盛り上げていけるような姿を目指したいですね。」
日本酒の奥深さや面白さを知っていただけるよう、さらなる高みへ「いこう」…
4名の挑戦は、まだ始まったばかりです。
【会社概要】
会社名:株式会社東亜酒造
代表者:仲田 恭久
所在地:〒348-0054 埼玉県羽生市西4丁目1-11
事業内容:酒類(清酒・合成清酒・焼酎・ウイスキー・リキュール・スピリッツ)の製造販売
設立:1941年11月
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