福井県で手づくりの清酒と古酒を造り続けて100年余の南部酒造場。大反響の『東京卍リベンジャーズ』コラボ商品の制作秘話とは
福井県⼤野市にある株式会社南部酒造場は、享保18年(1733年)初代七右衛門が創業。明治34年酒造りを開始し、昭和8年献上酒に選定されるなど、数々の銘酒を世に送り出してきました。現在は鑑評会で数々の好成績を収めるなど、高評価を得ています。
南部酒造場
南部酒造場は、『週刊少年マガジン』(講談社)にて当時連載中だった⼤⼈気漫画『東京卍リベンジャーズ』(作者:和久井健)とコラボレーションした日本酒2種類を、2022年8⽉に全国で発売しました。
東京卍リベンジャーズコラボ
左: TIME LEAP 2005 花垣 純⽶⼤吟醸(限定800本)
右: 花垣 純⽶⼤吟醸(限定4,700本)
主人公の苗字と当蔵の銘柄が偶然同じだったことから始まったコラボレーション
「東京卍リベンジャーズ」との協業の経緯は、漫画の主人公と当蔵の酒の銘柄が偶然にも同じことでした。担当の南部氏が初めて東京卍リベンジャーズを知ったのは、2019年頃、南部酒造場の社員が原作漫画について教えてくれた事がきっかけでした。主人公の名前が『花垣武道』であり、当蔵の銘柄『花垣』と同じ名前。
その当時は偶然にまつわる雑談だったが、同じ名前『花垣』として、コラボが出来ればなぁ、と話していたそうです。
それから1年後に広告代理店からコラボレーションの話があり実現に至りました。
コラボレーションの実施に至る経緯
コラボレーション企画として、原作漫画を知らない社長へ原作漫画のムーブメントについて、今回の企画への熱意や自社商品への波及効果を伝えました。その結果、酒造りの最中ではありましたが、急遽製造計画を修正して専用のコラボ商品を製造する決裁も頂き企画を始動する事ができました。
社長自身も原作漫画をこのコラボ企画を機に全巻自費で購入し、原作漫画を知らない社員に貸し出すほど企画を推し進める上で協力を頂きました。
若い世代や子供がいる社員にはコラボ企画を説明しやすくはありましたが、社内ではどれぐらい世間から反響があるか未知数で不安がる社員もいました。そのため、広告代理店と相談の上、特設サイトの開設やポスターの作成など販促ツールの拡充を計画に含めることで販売への土台づくりを周知し、社員からの賛同を得ていきました。
南部酒造場の強みである「古酒」を知ってもらいたいという思い
南部酒造場は、独自の「古酒」づくりで高い評価をいただいています。当蔵でつくる熟成古酒は、全体の1割ほどですが、新鮮な味わいのものから寝かせたものまでさまざまな味わいを楽しんでもらうため、1990年から古酒造りをしています。
花垣が日本酒の「熟成古酒」の貯蔵を開始したのは1990年のことです。ウイスキーやワインは、熟成で酒質が向上するという概念があるのに、なぜ日本酒にはないのだろう?
長年そう考えていた南部酒造場の9代目・現当主である南部隆保は、ある時100年前に醸造された日本酒をきき酒することになりました。その際に、初めて口にした得も言われぬ熟成古酒の味わいに、一瞬にして魅了され、「古くて新しい日本酒の幕開けだ」と直感し、自社で熟成古酒を開発しようと決意しました。
しかし、これまで本格的に日本酒の長期熟成に取り組んだ経験がなく、どんなお酒がどのように育っていくのか全くの未知数。全国でも取り組み始めたのは数社だけ、その日から手探りで研究する日々が始まりました。
熟成古酒の貯蔵を始めてから30年余りが経った現在では、1990年に最初の貯蔵を開始に日本酒を筆頭に、年代別に50種類以上、1800mlで2万本の熟成古酒を保有するまでとなりました。
左から、「花垣 BLEND IN 純米古酒」、「花垣 貴醸年譜3年」、「花垣 貴醸年譜20年」。
「東京卍リベンジャーズ」とのコラボレーション企画を進めながら、ちょうど、「東京卍リベンジャーズ」の主人公がタイムリープする先が2005年だということもあり、2005年の古酒を販売することを決定しました。
話題になったクリエイティブの制作秘話
『サイト概要』
東京卍リベンジャーズの読者の方々に楽しんでもらうため、主人公花垣武道の手に触れることで「タイムリープ」を演出。サイトに関しては、2005年に流行ったガラケーサイト風の作りを忠実に再現。当時の文字を再現するため、ドット文字は一から作成し、キリ番や隠しページなど詳細まで拘りました。
『制作意図』
同世代だったら「わかるよね」という感覚を大切にしました。
今回のターゲットは日本酒を飲み始める20代後半〜30代前半に設定。
南部氏、広告代理店の担当者2名もターゲットと同世代だったこともプラスに働きました。広告や媒体で年齢セグメントするのではなく、ターゲット世代のみが反応するクリエイティブを作ること、逆に言えばターゲット世代以外が見てもわからないクリエイティブを作る方向で進行しました。ターゲット世代だけが共感することが、「自分たちと同じ世代の人に教えたい」という思いを想起させ拡散する可能性が高いと考えました。
また、通販サイトでは商品ページに至るまでの動線を短くすることが定石ですが、あえて動線を長くし、リンクからサイトまでの動線をクリエイティブで楽しんでもらえる作りにしました。社内ではターゲット世代と違う方たちにウェブサイトを見てもらい、「サイトの意図を理解してもらえないこと」を確認する作業を大切にしました。ターゲット世代の方は、「黒歴史を思い出して恥ずかしくなる。」「高校時代の友達にも見せたい」という反応でしたが、それより上の世代の方は「なぜ、そんなにキラキラしているのか。」「申し訳ないけど色合いがナンセンス。」「見にくい。」という反応でした。この反応こそ、求めていた「世代間での反応の違い」でした。
結果、テレビ、新聞、雑誌から取材が多数入るなど、大きな反響がありました。ツイッターの投稿ではリツイート・いいねが1万を超え、引用リツイートだけでも1,000件以上あった。古酒に関しては予約段階から、完売するなど大きな反響がありました。
最後に
大きな反響があった1番の要因は、単なる日本酒のコラボではなく、しっかりと漫画のストーリーに合わせたプロモーションになったことにあると考えています。また、広告代理店のアイデアを受け入れつつ実現に向けて共創できたことも大きいです。花垣の酒造りと同じで「心を込め、手間ひまかけて、世に送り出す。」ということをプロモーションでも実施できたと考えています。
南部酒造の『花垣』について
南部酒造場が酒造りを開始したのは明治34年(1901年)、20世紀の初年でした。初めて出来た酒は、ふくよかで華やかな味わいが満開の桜に例えられました。密集して咲き誇る様子は花の垣根のようだと言われたことから、「花垣」と命名されたと言われています。
フルーティーな大吟醸から旨口の純米、キレの良い純米大吟醸など、6種類のバラエティに富んだ花垣を楽しめます。
福井県は日本海側のほぼ中央に位置し、典型的な日本海側気候(冬は降雪が、夏は晴天が多い)のため県全体が豪雪地帯に指定されています。
湿潤な気候が育む豊富な水資源など、豊かな自然環境に恵まれています。このため、稲作栽培にも適し、国内有数の米どころとなっています。「コシヒカリ発祥の地」でもあります。
福井県大野市は、福井県東部に位置し、背後に白山山系を望む北陸屈指の豪雪地帯です。
大野市の総面積の8割以上を占めるのは森林です。四方は1000m級の山々に囲まれた盆地で、山に降った雨や雪解け水がじっくりろ過され、湧き水となって街を潤しています。代表する湧水池「御清水(おしょうず)」は環境庁選定の名水百選に選ばれています。
また、肥沃な土壌で盆地が形成されているため、福井県の中でも米どころとして有名です。激しい寒暖の差が、米をはじめ農作物全般に刺激となり、深みのある味を生み出すのです。酒米で有名な五百万石は、ここ越前大野が特A地区と言われています。
良質の水と米、冬の長く厳しい寒さ。大野市は、酒造りにとって最適なこれらの条件を兼ね備えた理想郷なのです。
花垣はこの大野市で、自分たちが造りたい酒造好適米を、地元篤農家に依頼して栽培してもらっています。同じ水脈上で育ったお米と水で造ることで、日本酒に「テロワール」が生まれると考えます。大野のものだけを使うことによって、日本酒に大野ならではの味わいが生まれ、他にはない個性のある日本酒になると考えています。大野の風土に思いを馳せて、お召し上がりいただけたら幸いです。
※限定販売しておりました「東京卍リベンジャーズ」とのコラボ商品は、
大好評につき完売となりました。
ご購入くださった皆さま、誠にありがとうございました。
【制作担当】
南部酒造場:南部拓也
読売連合広告社:AP=多田充輝/CD=高橋英樹
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