PR TIMES Renewal Journal VOL.2 | プレスリリースは誰のためのもの? 2011年に変わった、PR TIMESの「届け先」
2023年冬から、プレスリリース発信者用の管理画面や閲覧者用のユーザー画面をはじめとしたUIの全面刷新、複数の新機能導入といった“大型”リニューアルを行う、プレスリリース配信サービス「PR TIMES」。
この一大プロジェクトのキーワードを「透明性」とし、ここではプロジェクトの背景や過程を、連載形式で皆さまに公開しています。
昨年から取り組んできたプロジェクトをいよいよ発表するにあたり、プロジェクトメンバー3名の想いを聞いた前回。それに続いて今回は、プロジェクトオーナーでもあるPR TIMES代表取締役社長の山口拓己のストーリーをお届けします。
聞き手は引き続き、フリーライターの冨田ユウリさんです。
プレスリリースで「豊か」になる?
——本日はよろしくお願いいたします。今回のリニューアルに向けた山口さんの「想い」は、PR TIMES企業会員の方々(*)にお手紙で届けられていますよね。
(*)PR TIMESを2023年内にご利用いただき、累計10件以上ご利用いただいている企業様(5月31日時点)
本プロジェクトのリリースと同時に、ステークホルダーやPR TIMESユーザーに向けた
メッセージを配布
——「新しいPRの可能性」を追求するということですが、プレスリリースにはどういった可能性があるとお考えですか?
プレスリリースは、新しいコミュニケーションツールになると思うんです。InstagramやTikTokといったSNSが普及したことで、生活様式や人々の行動、ビジネスにも変化が生まれましたよね。同じように、皆さんの生活が「PR TIMES」によって、より豊かになることをイメージしています。
たとえば、履歴書で考えてみると。ある人が関わったプロジェクトがプレスリリースで発信され、その人の関わりが可視化されていたら、仕事の遍歴がプレスリリースを参照すればわかるようになります。このような状況を生み出せると、プレスリリースが履歴書の代わりになる社会が作れるかもしれません。これまでのPRという枠組みを超えて、プレスリリースで理想的な社会を作っていきたいと考えています。
——山口さんが考える理想的な社会とは、どういうものでしょう?
私が考える理想的な社会は、若い世代の人たちが「働きたい」と思える世の中です。あの人みたいに働きたい、あの人と一緒に働きたいと、若い世代の人たちが憧れるような仕事が本当はたくさんあるはずなのに、マスメディアを通じて限られた職業が目立ってしまっているように思えます。
先程の履歴書の話にも通じますが、働いた成果や行動した結果が、プレスリリースという形となって、多くの人に届けられる。プレスリリースを通じて互いの頑張りを讃えあって、行動を応援しあう。楽しそうに行動する人、行動したい人で溢れる社会になれば、次の若い世代も「一緒に働きたい」と思うようになるはずです。
「生活者に届いている」と実感した2011年。
——そのために、プレスリリースをより多くの方々へ届けられるプラットフォームに変えていくということですね。
そうです。とはいえ私自身、2007年に会社を立ち上げた当初は、プレスリリースの可能性を今ほど信じられていませんでした。あくまで、企業の広報とメディア関係者をマッチングさせるサービスを目指していて、プレスリリースは小さな市場だと捉えてしまっていたんです。
——可能性を感じ始めたのはいつからですか?
2010年頃、スマートフォンの普及が大きなきっかけです。PCだけでなくスマートフォンでもインターネットを利用できるようになったことで、皆さんいつでもどこでも、その場で情報を検索できるようになりましたよね。
「PR TIMES」全体のページビューも、それまで月間平均50万PVほどだったのが、100万PVへと駆け上がるように伸びた。誰でも気軽に情報を手に入れることができ、SNSを通じて情報が広がりやすくなったことで、広報やメディア関係者だけでなく“その先”にいる「生活者」にとっても「PR TIMES」が欠かせない存在になれるのでは、と感じ始めました。
——スマートフォンの普及で、広報やメディア関係者だけでなく、それ以外の生活者の方々にも情報を届けられる土壌が整ったんですね。
そもそもプレスリリースというのは、生活者に大切な情報を届けるために生まれたものです。1906年、アメリカでペンシルバニア鉄道の脱線事故が発生した際、鉄道の広報担当者が事故の詳細を発表し、ニューヨークタイムスに原本がそのまま掲載されたことがプレスリリースの始まりといわれています。私たち「PR TIMES」も「生活者に役立つ情報を届けたい」というコンセプトはずっとあって、どう実現していくか考え続けていました。
私たちが進むべき道が見え始めたのが、2011年、東日本大震災が発生したときでした。震災の影響で新商品の発売やプロモーション活動は次々と中止になり、配信されるプレスリリースの量は激減。私たち自身もプレスリリース配信の自粛を推奨していました。
当時のPR TIMESが発信したプレスリリース「東日本巨大地震後のプレスリリース配信につきまして」(画像上)、「東日本巨大地震に関連したプレスリリース配信・掲載の無料提供」(画像下)
一方で、被災状況や募金活動、支援活動のことなど、生活者にとって必要な情報、届けるべき情報はたくさんありました。今「PR TIMES」にできることは、必要とされている情報を届けることではないか。
そこで、震災に関わる情報であれば無償で掲載いただけるようにしたんです。これにより「PR TIMES」で発信される情報が少し変わっていったと思います。それまでのようなWebマーケティング的な成果を重視する内容の発信だけでなく、生活者にとって有用な情報を届けることを意識した発信が増えていきました。
さらに、2012年には非営利団体に無償でご利用いただけるプロジェクトを始動したことで、NPOやNGO、国境なき医師団など、社会が必要とする、これまで「PR TIMES」をご活用いただけなかった皆さまにご利用いただく機会を作ることができました。
——メディアだけでなく生活者の方も読み手と意識して、発信する企業が増えていったんですね。
はい。ですが、どれだけ有用な情報が溢れていても、読んでもらえなければ意味がありません。プレスリリースが一般の生活者の方々にそれほど見られていなかったのは、魅力的なコンテンツに見せられていなかったことが大きな要因だと考えました。
読みたいと思ってもらうためには「リッチコンテンツ化」、つまりコンテンツ自体を豊かにしていくことが必要だと思い、2015年に大規模なリニューアルを行いました。テキスト中心だったプレスリリースを、画像や動画を多く組み込めるような仕様に。視覚的にも伝わりやすく、よりおもしろく読んでもらえる記事としても配信できるようになりました。
どう「声」を聴く?
——今回はその2015年に匹敵する規模の“大型”リニューアルということです。ユーザーや専門家、生活者など、皆さんの「意見」を聞きながら進めていくと伺いましたが、どういう狙いがあるのでしょう?
私たち「PR TIMES」が何かを決めるときに大事にしているのが、「決める人が決める」ということです。組織やグループにおける決めごとの進め方には種類があって、トップダウンや合議型など様々です。日本で多いのは、たくさんの人が集まって会議して、トップが決断する、あるいは多数決で決めていくスタイルだと思います。
私たちはトップダウンでも多数決でもなく、「決める人が決める」。決断するのは社長や上の立場の人とは限りません。新人だろうと関係なくて、ミッションや会議ごとに決める人さえ決まっていればいいと思っています。ただ、決断するための材料として、色々な意見は必要となります。特に今回のリニューアルでは、誰もまだ見たことのない「新しいPR TIMES」を作り上げようとしています。ですから社員だけでなく、利用企業や企業会員の皆さまをはじめ、プレスリリースを受け取るメディアや生活者の方々など、できるだけ多くの声を聞いていきたいです。
——決めるための材料として、意見が大事なのですね。意見を集めるために、何が必要だと思われますか?
私はスノーボードが大好きなのですが、「どんなボードが欲しいですか?」と突然聞かれても、理想的なボードをイメージするのは難しい。でも、実際にいくつかボードを試しに滑って比較できたら、色々と判断することができます。「形はこっちのほうがいいな」とか「もっとこういう色だったらいいな」とか。漠然とした質問を投げかけられるより、実際に体験してみたほうが意見は出しやすいですよね。
今回のリニューアルに向けたプロジェクトでも、新しいUIや機能を反映したプロトタイプを開発し、利用企業や企業会員の皆さまに試していただくオフラインイベントを開催します。そこで皆さんの反応や意見を受けて、リニューアルを進めていく予定です。
——皆さんからどんな意見が出てくるのか、楽しみですね。
そうですね。開発者自身から「新しい機能の使い心地はどうですか?」と聞かれたら、気を遣って「使いやすいです!」と答えてしまう人もいると思います。そういった課題はいくつかありますが、大きなプロジェクトには課題はつきものです。
今回のリニューアルによって、「PR TIMES」が大きく変わり、プレスリリースの重要性がますます高まっていくのはもちろんのこと、その過程で皆さんから様々なお話を聞き、コラボレーションしていけることを私自身非常に楽しみにしております。皆さんも、このリニューアルプロジェクトの今後をぜひ楽しみにしていてください。
次回は、オフラインイベントに潜入! 「PR TIMES」は具体的にどう変わっていくのでしょうか。新しい仕様を試す、ユーザーの方々の反応も気になるところです。次回の記事もお楽しみに。
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取材・執筆:冨田ユウリ
撮影:持田薫
デザイン:大辻佑介(株式会社FLAG)
編集:星彩華(株式会社ツドイ)
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