ゲームQAに革命を起こして、クリエイターの挑戦とゲーム業界の未来を支援したい。QA工程をAIで自動化する『Playable!』の開発ストーリー
AIQVE ONE(アイキューブワン)株式会社は、「品質管理に、革命を。」を理念に、ゲームのテスト自動化などの品質管理事業を展開しています。
2023年6月30日(金)より、ゲーム開発のQA工程をAIで自動化する次世代ゲームテスティングソリューション『Playable!』の提供を開始しました。『Playable!』は、ゲームQAに掛かる多くの時間、判断をコンピュータ・AIに代替させることにより、QAの高度化・効率化を実現するソリューションです。
今回は、代表取締役社長の山崎太郎と、開発担当の取締役CTO松木晋祐が、『Playable!』の開発の経緯や想いをお伝えします。
AIQVE ONE株式会社 代表取締役社長
山崎 太郎
AIQVE ONE株式会社 取締役CTO
松木 晋佑
労働集約型のゲームテスト。コスト構造を改善し、日本のゲーム産業の衰退を防ぎたいという想いから創業
山崎:AIQVE ONEは、2021年2月に誕生した会社です。
「品質管理に、革命を。」を理念に掲げる当社ですが、この理念が生まれた背景には、これまでのゲームテストにおいて、人を大量に集めてテストを行う労働集約型のビジネスが主流になっているという現状がありました。ゲームテストには膨大な『テストタイプ』があるため、AI活用が限定的であることや、ゲームのファジーな部分は、暗黙的に人がテストした方が速いなど、さまざまな要因が考えられます。
一方で、少なくとも日本では人口減少が続いており、最低賃金が上がっているという現状は間違いなく事実としてあります。そこに対して効率化を進めていかないと、どうしてもメーカーさんがゲームを作り続ける本数が減っていったり、作れる会社が減っていったりすることにつながってしまいます。そうなると、日本が世界に誇れるせっかくのゲーム産業が衰退していく未来が目に見えています。誰かが手を打たなければいけないと思っていました。また、他社と差別化するためにも、自動化、AI化というのは必須でした。
ゲームテストの効率化を考えたときに、当然、どこを自動化、AI化すればよいのかという問題が出てきます。
メーカーさんであれば、自社の製品に対して最適化するというアプローチをしているので、やりやすいところを自動化すればよいのですが、私たちの場合は、メーカーさんではなく、サービスを第三者的に提供するという立ち位置の違いがあります。そこで、どんなお客様でも比較的時間がかかっている汎用的なところで、かつ、本来人でなくてもよいと思われるところから順番にAI化を進めていきました。その第一歩が、コリジョンチェックです。
コリジョンチェックとは、ゲーム内に存在するPCの侵入不可地点(壁等)に対して、角度や移動方式によって侵入を許してしまう地点がないか、あるいは意図しない奈落落ちが発生しないかを検出することを指します。
このコリジョンチェックというテストは、どのようなゲームでもだいたい行っています。さらに時代の流れとして、ゲームのフィールド自体がどんどん大きくなっていく傾向にあり、コリジョンチェックの範囲がますます広大していったという背景もありました。ここをすべて自動化できれば、かなり効率化できるのではないかというところから、プロジェクトがスタートしました。
こうして、この考えに共感いただいたとあるお客様とともに研究がスタートしました。
研究、開発を進めるに当たり、実験するプロジェクトが必要です。大手のAAAタイトルを開発しているディベロッパー様に提案しましたが、すんなりとはいきませんでした。成果が出るかどうかというのは約束できないので当然のことです。最終的にはご理解いただいて、無事スタートすることができました。
『Playable!』をデモするためだけのゲームを制作
すでに要素技術だけはできている状態でしたが、実際の商用案件で使い物になるかどうかは誰も分からない状態でした。まず、実案件に適用してどれくらいの成果が出るのかという案件のディレクションは開発担当の松木が担当しました。そして、一定の成果が出ることが分かったので、それをプロダクトとして仕上げていきます。
松木:要素技術だけでは、これが何に使えるかというのは、一般のユーザー様やお客様は分からないんです。まず、「これは何なのか」という製品を定義するところから始めました。ただ、実案件だと、商用のゲームを利用することになるため、私たちの製品のデモができないのです。そこで、「私たちの製品は何なのか」ということをアピールするためだけに、ゲームを丸1本作りました。
山崎:非常に良く出来たゲームです。もちろん売ったり、Steamに出したりするつもりは一切なく、この『Playable!』をデモするためだけに作りました。私たちはテスト会社であるが故に、いつもジレンマを抱えています。どんなにいいサービスや製品を作っても、適用する対象となるものがどうしても必要です。その対象となるものはお客様が持っているので、毎回お客様にお断りを入れて使わせてもらったり、展示させてもらったりする必要がありました。お客様にもメリットがあればもちろんよいのですが、あまりないケースがほとんどなので、だったら自分たちで自由にできるものがあった方がいいという発想でした。
開発プロセスの在り方にもこだわったと言います。
松木:最初に商用案件を使って開発しているので、そのままやっていくと、案件ごとの個別対応を積み重ねていくという開発プロセスが続いていたはずです。一方で、なるべく広く世の中に使っていただきたい製品を作る際に、個別対応を積み重ねていく方法というのは効率が悪いんです。標準版を1つ作り、案件が出てきたらその標準版から使える部分をピックアップし、デリバリーしていくという開発プロセスの基本線を敷きました。
「ゲームクリエイターの挑戦機会を増やしたい」
『Playable!』は、「技術やAIでゲームQAを革新する」「ゲームQAに革命を起こす」というAIQVE ONEのビジョンをそのまま表現するものでもあります。その上で、『Playable!』単体の思想について、松木はこのように語っています。
松木:QAは、単にテストやデバッグという話ではなく、製品の生産プロセスの技術です。なので、私たちがうまくなることは、モノづくりがうまくなることと、ほぼイコールだと思っています。QAのターンアラウンドタイムが短ければ、クリエイターが挑戦できる機会を増やすことができます。クリエイターがちょっといじった瞬間にテスト結果が返ってくれば、次の挑戦ができますから。クリエイターの挑戦の回数が増えた結果、より質の高い作品が市場に出る確率が高まります。私たち自身がゲーム好きな人たちなので、質の高いゲームが世の中に溢れてくると、私たちも幸せなんです。
開発チームは十数名で、複数社にまたがっています。このビジョンが変わることはないので、その実現に向けメンバーと意見を戦わせながら調整していきました。
松木:ビジョン、ゴールはしっかりと確認し合ってきたので、ゴールとアプローチの背骨の部分だけはぶれないように。そこに向かう方法は、皆で議論しながら、最善な形を取っていきました。
オンラインホワイトボードを使った開発チームのやりとり
松木:大きなマイルストーンごとに、開発チーム全員で振り返りを行っていました。本当に最初の振り返りのときは、製品がなかったんです(笑)。デモができないとか、いろいろあったのですが、いろいろな問題を一つずつチームで解決していきました。
山崎:会社としてこのようなデジタルサービス、いわゆるSaaSの製品開発をほとんど経験したことがなかったので、売り方をどうしていくのか、値付けをどうしていくのか、ユーザー登録やユーザー管理の方法さえもノウハウがない中で、手探りで一つ一つやっていきました。例えば、値付けに関しては、大手の会社だけではなく、ゲーム開発に関わるすべての人の効率化を後押ししたいという思想のもと、極低価格に設定しています。いわゆるインディーゲーム開発者、本当に個人に近いような方でも手に届きやすい価格を目指しました。
「開発チームが『ChatGPT』の大波を見事に乗りこなしてくれた」
私たちが示したビジョンの1つの形が、『汎用エージェント』。汎用エージェントとは、自然言語で指示を打ち込むと、botやエージェントがそれを理解して、何をすべきかを解釈し、勝手にプレイしてくれるという機能です。
松木:作り始めたときはこんなものができるかどうか分からなかったんです。「やるべき」「やりたい」だけはあったのですが、本当にできるかは分からない状態で、できるか分からないものに投資を続けるというのはなかなか勇気のいることでした。そんな中、『ChatGPT』が登場し、ジェネレーティブAIの大波が来たんです。
もともと、定型文を入れて自動操作する方向で考えていましたが、『ChatGPT』が登場したことで、自然言語での指示をLLM(大規模言語モデル)により解釈し、ビヘイビアツリーの動的な生成を通じ、プレイヤーキャラクターを自動で操作する方向に切り替えました。
松木:今年の頭から開発チームと話してきたのですが、開発チームは見事にこの波をうまく乗りこなしてくれました。開発が加速した1つの要因でもあったと思います。
山崎:この『汎用エージェント』を使うことで、今までは、1人のテスターがゲームコントローラーやスマートフォンを持って実際に操作しなければできなかったことが、1人の作業者が並行して100個の指示を出せば、100人分の操作をすることが可能になります。そうなると100倍の効率化が行われるので、本当に革命的なことだと思っています。一方で、テスターがいらなくなるという話ではなく、操作を入れるためのプロンプトエンジニアという別の職種が必要になりますし、判定をするのはやはり人間でしかできません。また、ゲームは、良い悪いだけではなく、「楽しい」「快適」のようなファジーな部分、フィーリングに近い部分がありますので、どんなに頑張っても最終的にはAIには判断できない部分が必ず残ります。そのような領域を人間が決めていけばいいと思っています。ですから、人間がやることがなくなることはないので、エンジニアは引き続き育てていかなければなりません。とはいえ、人間ではなくてもいい作業は100分の1にできる可能性を具体的に示すことができたのではないかと思います。
時代のトレンドに乗れたこともあってか、サービスイン後、多くの反響をいただいています。
https://gamemakers.jp/article/2023_07_05_43174/
『Playable!』を紹介していただいたゲームメーカーズというメディアのTwitterでの投稿が12万ビューを超えたり、はてブのホットエントリーにも載ったり、かなりの反響をいただいております。サービスイン1週間で、20件以上の無料トライアルのお申込みもいただきました。
『Playable!』という製品名に込めた想いと、今後の展望
『Playable!』の製品名の由来について、松木は次のように語っています。
松木:「このツールを使いこなしている人=かっこいい人」というイメージになるような製品名にしようというのが背景にありました。いくつか候補があったのですが、この製品はグローバルを目指しうるポテンシャルを持っていると思うので、日本人だけが分かるかっこいいものではなく、海外から見ても分かりやすいもの。さらにエンターテイメント業界に届けるものなので、パッと見て楽しそうなもの、五感全体が楽しそうなものがいいということで、いくつか候補がある中から決定しました。「!」を付けたり、ロゴをカラフルにしたことも、ゲームやエンタメを意識しています。製品を通じてプレイ可能にしていくという直球の意味も込められています。
大手開発会社から、個人の開発者にまで使っていただけるサービスへ
山崎:まずは広く皆さんに使っていただきたいと思っています。今はまだ導入ハードルが若干高いので、その導入ハードルを下げて、使っていただける数を増やしていきたいですね。全体を底上げしなければ面白いゲームは増えないので、大手の会社から、インディーゲーム開発者や、個人に近いような方、そして、日本から海外まで、広くあまねく使っていただけるようなサービスに育てていきたいと思っています。
『Playable!』を通じてゲームのテスターが魔術師になれる
松木:この『Playable!』を通じて、ゲームのテスター・デバッガ―が、『ウィザード(魔術師)』になることができます。今までは、『ファイター(戦士)』しか選択肢がありませんでした。ファイターは基本的に、直接一人一人を相手に戦います。これはゲームテストで言うと、1人1台コントローラーを握ってテストをするということですね。ウィザードは、後ろから爆発の呪文を唱えて一気に敵を倒すことができます。ただ、たまに味方を巻き込んでしまったり、小回りが利かなかったりという弱点もあるので、ファイターがいらなくなるということはありません。でも、パーティーにウィザードを入れることができれば、多様性が生まれます。多様性があったほうが、理論的には勝てます。
またウィザードは、コンピュータ業界で、敏腕エンジニアの意味も持ちます。『Playable!』を使って、たくさんの方がウィザードの役割を手に入れてほしい。そして、世の中にたくさんの面白いゲームが溢れてほしいと願っています。
『Playable!』無料トライアル実施中!!
『Playable!』の無料トライアルを開始いたしました。ぜひこの機会に『Playable!』をご体験ください。
<登録方法>
①『Playable!』サービスサイト(https://playable.qa/)にアクセスする
② サービスサイト最上部の[はじめる]をクリックする
③ Register(ユーザ登録)から必要情報を記載し、アカウントを仮登録する
④ メールに記載のURLを押下し、本登録を完了する
※無料トライアルの期間は90日間となります。
導入手順など詳しい説明は、サービスサイト上部の[ドキュメント]からご覧ください。
何かご不明点等ございましたら、お気軽に以下フォームよりお問い合わせください。
『Playable!』についてのお問い合わせ
『Playable!』は数多くのゲーム開発現場での導入を目指すと共に、最新の研究成果に基づくゲームテストツールを今後も続々とリリースしてまいります。買い切り型のライセンスではなく、安価な月額課金制を採用しているため、わずかな月額費用で導入することができます。
『Playable!』についてのお問い合わせは、下記お問い合わせフォームよりお願いいたします。
https://www.aiqveone.co.jp/contact/
より詳細なサービス内容や、具体的な導入事例や導入効果をご紹介いたします。
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