京都老舗中華そば専門「珍遊」がコロナ禍を経て通販事業開始から更なる展開へ

2022年5月、中華そば専門「珍遊」を運営する株式会社京都クラシコは、お店の味をそのままに「珍遊オンラインショップ」（https://www.chinyu-online.jp/）をオープンし、冷凍中華そばを通販サイトにて販売開始しました。

「限定100鉢」京都　中華そば専門「珍遊」がラーメン鉢付きの冷凍ラーメンを販売開始

70年以上も前から中華そば一本にこだわり続けた「珍遊」が、一杯入魂の中華そばを届けるべく様々なこだわりをもって作り上げています。お店のスープを急速冷凍、真空包装し出来立てをそのまま味わえることが特徴です。本ストーリーでは、今回の商品が誕生するまでの軌跡をお伝えします。

中華そば専門「珍遊」とは

中華そば専門「珍遊」は京都市左京区一乗寺ラーメン街道に本店を構える、昭和二十五年創業の老舗ラーメン店です。

「一乗寺ラーメン街道」は道路沿いに30店舗を超える行列のできるラーメン店がひしめき合っている関西でも屈指のラーメン激戦区。「珍遊」は激戦区の中、愚直なほどに中華そば一本にこだわり続けたラーメン店です。「珍遊」の中華そばは見た目こってり、後味さっぱり京都ラーメンの源流と呼ばれます。

コロナ渦における緊急事態宣言で運営に大きな影響。半分以上の売上が消滅した店舗も。

人の流れが一気に止まり、マスクを外して食事をすることが悪と捉えられました。このコロナショックの影響は、珍遊の2号店である河原町六角店で顕著に表れ、コロナ前の同月比較で売上61％ダウンとなったのです。

京都河原町という京都でも有名な繁華街に位置する河原町六角店は、買い物客や観光客、外国人でにぎわっていました。しかし、緊急事態宣言が出た後の光景はかつて見たことがない、人がいないゴーストタウンのようになりました。

お店でお客様を待っているだけではだめだ、お客様が来店できないのなら、こちらから届けたい。お店の味を何とか再現できないかという思いが強くなり、事業再構築補助金を活用し珍遊河原町六角店のバックヤードスペースを活用し、製造室を作りました。

お店のバックヤードを活かし隣接して製造室を作ったワケ。

どうして、お店の裏に製造室を作ったのか。そこには商品づくりに対する、私たちのこだわりがありました。

お店でお客様に食べていただくことをイメージして製造できる
お店のその日のスープをそのまま急速冷凍、真空包装できる
お店の材料を共有できるため、味にぶれが起きない
お店が暇になったという理由で従業員のシフトを削るのではなく、従業員の新しい仕事を生み出すことが可能
長年お店で中華そばを提供し続けた経験を持つ、代表自らが製造できる

製造室が完成し、開発を始めた当時、冷凍ラーメンの商品は少しずつ出てきている状況でした。

しかし、当時の商品はスープと麺のみが主流。

珍遊は、スープと麺はもちろんのこと、チャーシュー、メンマ、九条ねぎ、海苔、と「中華そば並」をお店で注文された際に入っている全ての具材を商品に入れることにこだわりました。全ての具材が入ってこそお店の味そのままと言えると思ったからです。

特に京野菜である九条ねぎは京都ラーメンの特徴といえる具材です。お店ではねぎの量も選んでいただけるため、「珍遊」でねぎを外すことは考えられません。また、自家製チャーシューを個包装にして販売するには食肉販売業の資格が必要であり今の自分たちには不可能であること等、初めての経験で知らないことも多く、やりたいこととやれることのギャップを知り、保健所の方と相談しながら進めていきました。こうしてスープの中にチャーシューとメンマを入れ、九条ねぎ、海苔、麺は個包装にした現在の形が出来上がったのです。

しかし、困難は続きました。機械を導入する際はトラブルが発生。半導体不足による影響、アメリカのハリケーンによる自然災害により機械の部品が調達できず機械がいつ入るかわからないという問題。先の見通しがなくなったように思え、落胆したこともありました。

商品の完成、そしてオンラインショップ開設

試行錯誤とトラブルを経て、商品が完成し、自社オンラインショップでの販売が可能となりました。その後、オンラインショップだけではなく、京都市ふるさと納税返礼品にも選出され、Amazon、Yahoo!ショッピングにも出店、全国からご注文をいただくこととなりました。

京都市は大学が多くあり、昔も今も学生さまがたくさん住む所です。学生時代によく食べたけれど、京都を離れ、就職してからはなかなか食べに行くことができないので寂しいと言ったお声を何度もいただいていました。販売開始当初は、珍遊を元々ご存知で過去に京都に住まわれていた珍遊ファンの方が購入してくださることが多かったのですが、最近は全く珍遊をご存知ない方が通販で購入され、美味しかったので今度は実際のお店にも行ってみたいとコメントをくださるようになりました。お店から派生して完成したものが今度は通販で知っていただきお店にご来店いただける逆の現象に新たな喜びを感じております。

オンラインショップURL：https://www.chinyu-online.jp/

通販事業から更なる展開へ…BtoCにとどまらずBtoBへ

商品が完成したことにより、商談の機会が少しずつ増え、飲食店ではBtoCが当たり前だった世界からBtoBへのビジネスチャンスが生まれます。

百貨店の商品部、駅の冷凍自動販売機、高速道路サービスエリアに置いていただくことが叶いました。中華そば一本にこだわり続けた京都ラーメンの源流ということで京都ならではのお土産品として面白味を感じていただけたようです。

試食されたあと、再現性の高さにも驚かれることが多いです。珍遊は京都にしかお店がないため、来店しないと食べることができません。その京都限定の中華そばを再現性の高い冷凍中華そばとして商品化できたこともビジネスにつながった要因の一つと考えます。実際、少し価格的に高いと話されていた商談も、試食後は、これは美味しい、これだけの具材が入っていたら価値があると言って話が転換されたことも多いです。

今後の展望

今後はBtoBへの更なる発展として、アフターコロナの社内イベントとして使っていただくと面白いなと思っております。

例えば、社員食堂のある会社に冷凍中華そばをお届けする。そもそもご自宅でできる商品ですから、社員食堂であれば尚更簡単に調理いただける。スープは湯煎し、麺をお鍋で茹でていただくと完成しますので、期間限定で毎日勤務する社員食堂にて京都で行列のできる中華そば専門「珍遊」の中華そばを食べていただくことが可能です。

日常と違った社内食を提供することで京都に来たような気分転換や、社内での話題作りに貢献できればと思っております。その他にも、野外でのイベントや、ゴルフのコンペ商品に、社員へのプレゼントとして社内イベント実施に面白味を持って使っていただける機会が増えたらと考えております。

バトンを受け継いだ代表の思い

2代目の大将と奥さまから引継ぎ、当社で3代目。教え引き継がれた六車は一乗寺本店から修行をし、経験を経て珍遊の代表になりましたが、珍遊の様々な経緯を自分の目で見てきています。

創業時と味が違うとお叱りを受けることもありますが、同じ材料が明日にでも手に入らないかもしれない今、創業当時とは材料も作り手も変化しています。お𠮟りを受けることは残念ですが、珍遊の名に恥じないよう、目の前で喜んで食べてくださるお客さまを大切にしていくこと、一杯入魂で中華そばを作る思いは変わりません。

現在も河原町六角店や大手筋店の厨房に自ら立ち、麺をあげるのは、お店は生きていると考え、店の変化を敏感に感じ取るためです。お客様から求められていることを捉え、問題があれば改善する、京都市内にある３つある店舗も立地によって客層が異なるため、各店舗に合った柔軟な運営を行うことが必要です。

例えば若い年齢層が多い、河原町六角店では、コロナ渦にて人が使用したタブレットを触ることにも不安を抱くであろうということからタブレットではなくご自身の携帯でオーダーを取っていただくモバイルオーダーを早い段階で取り入れました。現在では半分以上のお客様がモバイルオーダーを利用され、従業員も作る方に専念することが可能となっています。

ラーメン店の生存率が3年30％と言われるデータがあるほど、生き残りが難しい業界。珍遊も実際5店舗あった時期もありましたが現在は3店舗に縮小。

続けていくことの難しさ、大切さを感じています。

コロナ渦から一転。ありがたいことに珍遊各店舗、非常に多くのお客様にご来店いただいております。目の前のお客様を大切に、常々感謝の気持ちを持ち続け、精進していく所存です。

京都ラーメンの源流と呼ばれる老舗中華そば専門店として、今後「珍遊」の役割は、まだまだ全国規模でいうと認知の低い、「京都ラーメン」を多くの方に伝える、その役割を担うべきと考えております。オンラインショップや京都市ふるさと納税、お土産で手に取ってくださった方から、少しずつ京都ラーメンをご存知の方が増えていき、京都ラーメンが全国に浸透することを願っています。