福島市の特産品「桃」の価値を国内外に広げたい。『ふくしまピーチホリデイ』で実現する、市の抱えていた「桃の課題」を解決し、地域に循環させる持続可能な取り組み。
地域資源を生かした観光を推進し、地域を活性化させることを目的とする観光地域づくり法人(DMO)である一般社団法人 福島市観光コンベンション協会は、「ふくしまピーチホリデイ」へ取り組んできました。このキャンペーンは、「規格外桃の高付加価値化」を図るため2022年から始動し、福島市特産の桃をテーマに設定しています。
桃が最盛期となる7月~9月までの2か月間、桃のスイーツはもちろん、食事やお土産、宿泊施設で提供される桃づくしの創作会席料理プランや桃の葉を浮かべた温泉、桃の剪定枝を利用した草木染め体験など、桃の資源を余すところなく使用した、観光客や市民に福島市の桃を楽しんでもらう企画です。
「ふくしまピーチホリデイ」は、福島の大切な資源のひとつである規格外の桃を活用し、新たな価値創出により経済を循環させることを目指しています。
桃の産地なのに、桃メニューがなかった福島市
桃の消費量においてはダントツ1位、市町村単位で全国2位の生産量を誇る福島市。寒暖差の激しい福島盆地は全国屈指の果物の生産地です。桃は7月の早生種から10月の晩成種まで様々な品種が収穫されています。
そんな桃王国も、観光推進という観点から見ると大きな課題がありました。市内の飲食店や温泉施設などの宿泊施設では、悪くなるのが早い桃を使ったメニューが提供されることが少なく、観光客が特産の桃を現地で味わえない状況が続いていたのです。その理由を探るため調査を行ったところ「果樹農家」「飲食店や宿泊施設」それぞれに悩みがありました。
慢性的な人手不足に加え、収穫時期は忙しすぎて手が回らない果樹農家。福島市では甘く色づきのよい桃を育てるため、袋をかけず太陽の光をたっぷり浴びせて栽培しています。しかし桃はとてもデリケートで、雨風で葉や枝がこすれるだけで傷がついてしまい、天候の影響を受けやすく、傷ありなどの「規格外」と呼ばれる桃が出てしまいます。規格外の桃は市場では正当な価値がつかず、農家直売所で販売されるなどしていますが、それでも売れないときは加工業者に低価格または無料同然で引き取られるか、廃棄せざるを得ない状況でした。
市内の飲食店や宿泊施設側も特産の桃を提供しづらい面がありました。そもそも果樹農家と繋がりが薄く仕入れができない場合もありましたし、「福島市民にとって、桃はもらうもの。桃メニューにお金を出してくれるか分からない」と産地ならではの考えがありました。
果樹農家、飲食店、宿泊施設をつなげる配送の仕組みを作る。桃で地域をつなぐ試み
観光客や市民の「桃を楽しめるところが少ない」という印象の打開には、果樹農家や飲食店、宿泊事業者が抱えている課題の解決が必要でした。
そこで「ふくしまピーチホリデイ」では、傷桃や形が不ぞろいで規格外となってしまった桃に価値を付けて福島市内を循環させる仕組みを作ることにしました。折しも2022年6月は福島市の果樹畑集積地帯を中心に降雹(ひょう)があり、実ったばかりの実を直撃。流通させられない桃が大量に発生したことで、支援を申し出る観光事業者が次々に手をあげ、果樹農家と飲食店や宿泊事業者をつなぐ配送システムを確立できました。配送の仕組みができたことで、果樹農家と市内の飲食店・宿泊事業者がつながり、福島市に桃の好循環が誕生しました。
規格外となってしまった桃へ、価値を付けて福島市内を循環させる仕組みの図
2022年開催の経済波及効果はおよそ3,800万円
福島市内観光の5年後を見据えて小さくスタートしたプロジェクトでしたが、1年目にして予想以上に注目を集める結果となりました。2022年は67の市内事業者が参加し、111の桃コンテンツ(メニュー・体験コンテンツ・お土産品など)が登場しました。その経済波及効果は、7月~9月までの2か月間でおよそ3,800万円にのぼりました。
参加事業者へおこなった事後アンケートでは、期間中における桃メニューの平均売上が導入により前年比で平均21%向上したと回答がありました。桃メニューの全体売上に占める割合は平均で19%を占め「売上だけでなくPRの効果があった」「来年も継続しておこないたい」という喜びの声が聞かれました。
参加した観光客や市民におこなったアンケートでは、6割強が「非常に満足」という結果になりました。アンケート参加者については、福島市外からの来訪者が55%を占め、全体の8割が女性、年代も20代~50代と幅広い層にアプローチすることができました。
夏の風物詩として定着させることを目指し、フルーツで地域がつながる福島市へ
今年2年目を迎えた「ふくしまピーチホリデイ」は、今後3年計画でさまざまな桃にまつわるコンテンツを作り、福島市が誇る桃の魅力を国内外に発信、最終的には夏の風物詩として定着させることを目指しています。
人口減少や少子高齢化など先行きが不透明な時代に、地域のサービスや文化を維持・成長していくためには、地域全体の理解と協力が必要不可欠です。ピーチホリデイは一つのきっかけに過ぎませんが「果樹農家の力になりたい」「規格外の果物に付加価値をつけて販売したい」「加工品に挑戦してみよう」「福島の魅力である果物に関わっていきたい」など、地域がつながる輪は少しずつ広がっています。
ふくしまピーチホリデイ、SDGsやインバウンドへの取り組み
規格外の桃は、傷があったり大きさが不揃いだったりと見た目は少し悪くても、味は同じ美味しい桃です。ピーチホリデイでは、果樹園が手間暇かけて育てた桃が、規格の区別なく正当に評価されるよう、持続可能な消費を促していきます。
美味しく楽しく桃を味わうことが、農家の方への支援や、フードロス削減につながっており、SDGsの視点から見ても一歩進んだ「規格外桃の高付加価値化」に向け、進化を続けています。
さらに今年は剪定した枝や葉、摘果した果実を活用し資源を循環させる取り組みや、障がい者が農業分野での活躍を通じて自信や生きがいをもって社会参画を実現していく「農福連携」、障がいがある方も気軽に楽しめる福祉タクシーを利用した観光プランの造成にも取り組んでいます。
またインバウンド誘客に向けては、福島市の桃のベストシーズンと夏休みが重なる台湾からの誘客に力を入れています。果樹園でピクニックしながら桃のアフタヌーンティーを味わう体験などを企画し、みずみずしく甘い本場の桃で訪日観光客をもてなします。
ピーチホリデイの反響を受け、10月からは規格外のりんごを活用した「ふくしまアップルホリデイ」を開催予定。来年以降はブドウやナシなど、ほかのフルーツでも展開したいと考えており、福島市のフルーツの魅力を伝えるため日々奮闘していきます。
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