ゲームを通じて、壁を破る力を。難病のeスポーツプレーヤー・Jeniが語る、バリアフリーeスポーツイベント「HACHIMANTAI 8 FIGHTS」への想い
バリアフリーeスポーツを提唱するePARAは、「本気で遊べば、明日は変わる。」をステートメントに、障害者がeスポーツを通じて自分らしく、やりがいをもって社会参加するための支援を行っています。
当社は9月23日(土)~24日(日)、岩手県最高峰・岩手山にある安比リゾートセンター・プラザホールを会場に、バリアフリーeスポーツイベント「HACHIMANTAI 8 FIGHTS」を開催します。
このストーリーでは同イベントを紹介すると共に、イベントプロデューサーであり、難病の筋ジストロフィー症を患いながらも格闘ゲームプレイヤーとして活躍するJeniこと畠山駿也に取材し、開催経緯やイベントに込めた想いをお伝えします。
「HACHIMANTAI 8 FIGHTS」とは?
ePARAでは、障害×ゲームの可能性を広げる試みを行っています。直近では、6月2日に最新作が発売された人気対戦格闘ゲーム「ストリートファイター6」のサウンドアクセシビリティに協力。視覚情報を用いずに対戦が可能となる“サウンドエフェクト”の改善に向けた助言レポートを行いました。その他、音声情報のみで状況を判断して戦うeスポーツイベント「心眼カップ」を開催するなど、活動は多岐に渡ります。
そんな我々が次に仕掛けるのが「HACHIMANTAI 8 FIGHTS」。テーマは「あそび方は無限大。ゲームで紡ぐ八幡平」。IT技術の進歩で多様になったゲームの遊び方を、障害の有無を問わず、あらゆる人に体験してもらう交流型ゲームイベントです。
会場は8エリアで構成。バリアフリーeスポーツアスリートによる研究発表などを行う「ステージイベントエリア」。サウンドアクセシビリティを用いたゲームで対戦できる「心眼ゲーミングエリア」。ストリートファイター6を障害の有無を問わずに対戦交流できる「バトルエリア」など。特に「バトルエリア」にはサイコム社のゲーミングPCを30台設置し、充実した対戦環境を実現させます。
▲2022年4月に開催した「心眼カップ」の経験を活かして「心眼ゲーミングエリア」を展開
▲「バトルエリア」では、ストリートファイター6をプレイしながら自由に交流できます
▲サイコム社の高性能ゲーミングPCによって快適なゲーム体験が可能に
イベントで伝えたいのは、障害を越える「遊び」のチカラ
「『仕事』のためにICT技術を学ぶのではなく、『遊び』から触れるのもアリだと思っています。このイベントがデジタル技術に触れ、学ぶきっかけになって欲しい。ゲームを通じてできることを増やせるはず」と語るイベントプロデューサーのJeni。障害者の社会参加や自己実現のために大切なICT技術を、ゲームを入口にして習得してもらう狙いがあります。
また、ゲームをプレイしたくとも、障害のために一般的なコントローラーが操作できない人もいます。そのため準備しているのが「バリアフリーeスポーツ体験エリア」。アクセシブルコントローラーや視線入力装置など、ゲーム体験を補助するツールが試せるエリアです。「障害によって、ゲームを操作するのに工夫が必要な方も少なくない。実践的なノウハウを当事者へ届けたいし、支援する人が工夫を知るきっかけにもしたいですね」。
会場には作業療法士が常駐し、障害者一人ひとりに合わせてゲーム体験をサポート。Jeni自身が車椅子ユーザーであることから、車椅子が動きやすい動線や設備にも配慮。併せて、地元の盛岡医療福祉スポーツ専門学校と連携し、学生ボランティアに視覚障害者を誘導してもらうなど、万全の準備を整えています。
目指すのはあらゆる面でストレスのないバリアフリーなイベント。そして、ゲームを通じて障害というハードルを越える力を届け、可能性を広げたいと考えています。
▲最新デバイスで障害者のゲーム体験をサポートする「バリアフリーeスポーツ体験エリア」
青春、ゲーム、障害。イベントに込めた「オフライン」への憧れ
「イベントにはePARAとしていろんな狙いがありますが、いち個人としての想いは、“ゲームの楽しさ”を知ってもらうこと」と真っすぐに語るJeni。この言葉には、彼のこれまでの歩みが大きく関係しています。
Jeniは1994年1月生まれの29歳。指定難病である筋ジストロフィー症を患い、小学2年生から車椅子で生活しています。「ボンバーマン」や「スマッシュブラザーズ」などプレイするゲーム少年でしたが、最も夢中になったのが「ストリートファイター」をはじめとする対戦格闘ゲームです。
当時、対戦格闘ゲームのメッカといえばゲームセンター。Jeniも友人と遊びに行くことがありましたが、ゲームセンターのゲーム台やコントローラーでは障害の都合で操作できず、友人のプレイを隣から眺めるのが常でした。「あまりゲーセンでプレイができなかったこともあり、誰かと同じ空間で対戦することに強い憧れがあって。同じ目的を持って、同じ場所にいることが素敵だなって思うんです」。
その後、オンラインの対戦環境の進歩によって、ネット上でプレイすることがメインに。障害を持つ者にとって嬉しい進歩である反面、「誰かと、同じ場所で対戦する」ことへの憧れは、ますます大きなものに。そんなオフライン対戦への想いが注がれるのが「HACHIMANTAI 8 FIGHTS」なのです。
▲イベントプロデューサー/Jeni(畠山駿也)。デュシェンヌ型筋ジストロフィー症を患うePARA社員であり、ゲームアクセシビリティアナリストとしても活動
開催へつながる2つのイベントでの実体験
Jeniの想いが詰まった「HACHIMANTAI 8 FIGHTS」ですが、開催へのきっかけには、彼が参加した2つのゲームイベントの存在があります。
「EVO Japan 2023」
1つめは、2023年3月に開催された「EVO Japan 2023」。このイベントは、アメリカで開催される世界最大規模の対戦格闘ゲームトーナメント「Evolution Championship Series」の日本版。世界のトッププレイヤーが集う一大イベントに、Jeniはストリートファイター5の種目で参戦することに。
一般的なコントローラーで操作できないJeni。自宅ではレバーを“アゴ”で操作する自作の「顎コントローラー」とPCキーボードでプレイしていましたが、大会の規定で使用NGに。そこで、大会で使用可能なコントローラーを新たに製作して大会へ挑みました。
「格闘ゲームを通して友人がたくさんできたけど、その友人たちとオフラインで対戦したことがなかったんです。“友人と格闘ゲームをプレイする目的”でどこかへ行ったのは、このイベントが初めて」。オフライン対戦に憧れ続けてきた彼にとって、念願のイベントでもありました。
イベントでは、当時まだ開発中だった「ストリートファイター6」の体験版をプレイする機会も。しかも、一緒に参加した友人たちとの対戦も実現しました。「友人と初めてのオフライン対戦。たった30分だったけど、人生で一番濃密な30分でした」。リアルな空間で、お互いの存在と感情を共有しながら対戦する喜びを心から感じたというJeni。この感動が「HACHIMANTAI 8 FIGHTS」という、オフライン対戦イベントの原動力になりました。
▲「EVO Japan 2023」でのプレイ風景。エドというキャラを操って対戦
▲「顎コントローラー」。指でつかむボールの代わりにアゴがフィットするカップが付いている
「G019サミット」
2つめは、2019年11月、初めて参加したオフライン大会だという「G019サミット」。その時、偶然見かけたある光景に心を動かされます。「車椅子の少年が、会場で初めて出会った障害を持たない子とゲームをしていたんです」。
これは憧れのゲームセンターの光景であり、障害の有無が関係ないeスポーツだからこそ生まれた光景だと感じたJeni。「僕が小学生の頃にこのイベントがあったら絶対に参加してました。知らない人とのコミュニケーションは、自分の世界を広げること。とても意味があることだし、自分がその場を作らなきゃって」。オフライン対戦の場を作りたいという想いが芽生えた瞬間です。
当時は「リーグ・オブ・レジェンド」というゲームをプレイしていたJeni。実は病気の進行で対戦格闘ゲームが思うように操作できなくなり、プレイ可能なタイトルとして選んだものでした。「会場で格闘ゲームをプレイする人を見て、そこにまだ居たかったなって…。当時は、顎コントローラーなんて考えてもいなかったし、『できっこない』と決めつけていました」。一度は諦めた対戦格闘ゲーム。創意工夫で障害に挑み、顎コントローラーという武器で乗り越えたJeniだからこそ、「HACHIMANTAI 8 FIGHTS」ではeスポーツの可能性を伝えたいと言います。
▲Jeniは岩手eスポーツ協会の一員としてイベント運営経験も。
「できっこない」から、共に一歩を踏み出そう
対戦格闘ゲームには「対策」という考え方があります。相手や自分のキャラクターの特性や技を分析し、戦略を組み立て、勝率を高める攻略法です。「これって生きる上でも大事だと思うんです。10対0の差がある場面でも、対策をすれば9対1になる。ゼロじゃないなら勝機はある」。
そして、こう続けます。「目標は子どもの頃の僕が参加したいと思うイベント。そして、『できっこない』っていう壁を無くしたい」。全ては壁を破る意思を持ち、挑戦することから始まる。「HACHIMANTAI 8 FIGHTS」は、勇気ある一歩を応援します。
障害・難病の有無や性別、年齢、地域などを超え、個々が持つ無限の可能性に触れられる舞台が「HACHIMANTAI 8 FIGHTS」。ePARAのステートメントである「本気で遊べば、明日は変わる。」を具現化したものです。公式サイトのオープンをはじめ、これからも最新情報を発信してまいりますので、引き続き注目していただけると幸いです。
さいごに−Jeniからのメッセージ
「コロナ禍を経てあらゆるオンライン環境が整いましたが、だからこそ、オフラインの価値を見直す時期が来ていると思います。障害を持つ人はもちろん、障害がない人も、障害者を支援する人も、格闘ゲームの経験がある人も、ゲームに触るきっかけが無かった人も、 ゲームから離れてしまった人も、あらゆる人がゲームを楽しみ、交流し、仲間を見つける機会になるよう準備しています。むしろ、誰よりも僕自身が楽しむつもりなので、会場で対戦してもらえると嬉しいです!岩手山の上でお待ちしています!!」
【イベントインフォメーション】
▼概要
イベント名/「HACHIMANTAI 8 FIGHTS」
開催日/2023年9月23日(土)・24日(日)
開催会場/安比リゾートセンター・プラザホール(岩手県八幡平市安比高原)
開催内容/eスポーツ体験、交流会教育カンファレンス
実施タイトル/「ストリートファイター6」を中心とする対戦格闘ゲーム
主催/株式会社ePARA
協力/八幡平市
協賛/株式会社サイコム 、株式会社Yogibo、ジャパンエナジー株式会社、株式会社JAPANNEXT
運営サポート/岩手eスポーツ協会、eSocial Cue(イーソーシャルキュー)株式会社、MCL盛岡医療福祉スポーツ専門学校、Beat
▼公式WEB
https://hachimantai8fights.epara.co.jp/
▼公式Twitter
▼参加方法
入場自由・無料(事前エントリーで入場特典あり)
事前エントリーフォーム:
▼問い合わせ
本イベントに関するお問い合わせおよびePARAの活動をサポートしてくださる企業様・個人の方・障害をお持ちの方、そして共に活動したい障害当事者の方は随時募集しています。下記、連絡先よりお問い合わせください。
株式会社ePARA「HACHIMANTAI 8 FIGHTS」担当宛
問い合わせフォーム: https://hachimantai8fights.epara.co.jp/form/
E-mail: info@epara.jp
Tel: 03-4400-2855
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