花王の炭酸研究の真骨頂。科学的根拠と効果感を追求した炭酸泡化粧料における“愛される泡” の進化とこれから。
温泉やシャンプー、飲用水など、わたしたちの日常生活のなかでも身近な存在である「炭酸」。炭酸泉が好き、炭酸水をよく飲んでいるという方もいるのではないでしょうか。花王では、70年代ごろから炭酸ガスの研究を続けてきた歴史があります。80年代には炭酸ガスを使った入浴剤・育毛剤の商品開発に着手。その後、2002年からは化粧品の噴射剤として炭酸ガスの応用研究にも取り組んできました。
長年の炭酸研究を活かした炭酸※1泡を使った化粧品開発にも取り組み、多くの生活者に提供してきましたが、今回さらなる改良を重ね、新しく進化した炭酸泡の開発を実現しています。また、炭酸泡の進化だけでなく、泡の気持ち良さの数値化にも挑戦しています。そんな“愛される泡”の進化の秘密を、研究担当であるスキンケア研究所(以下、スキンケア研)の曽根千晶さん、感覚科学研究所(以下、感覚研)の門地里絵さんに聞きました。
※1 炭酸ガス(噴射剤)
多くの愛用者がいる炭酸泡を、さらなる高みへ
冒頭でもお伝えしたように、花王では長年炭酸ガスの研究、商品への応用を続けてきました。2012年には、炭酸※1泡のマイクロバブル化に成功。曽根さんがスキンケア商品の開発に携わり始めたのは6年ほど前。ここ10年ほどの研究開発の歴史について、曽根さんは次のように語ります。
「2012年にマイクロバブル化を成功させたことで、炭酸泡を目に見えないサイズにまで小さくすることが可能となりました。非常に小さいサイズにすると、泡が弾けにくくなるんです。その後もマイクロバブルの良さを活かした炭酸泡開発を行ってきました」
今回取り組んだのは、炭酸泡の進化です。挑戦の背景について、曽根さんは「花王には常に研究志向があり、すでに良いとされている商品であっても、現状維持ではなく改善意識が高い」と説明します。さらに、今回の開発においては、すでに多くのお客様に愛用されている炭酸泡を改良するという点でも難しい開発になったと話します。
※1 炭酸ガス(噴射剤)
「現状の炭酸泡に欠点があれば、そこを改善させればいいわけですが、すでにご愛用いただいている方が多い炭酸泡で、ネガティブなところがはっきりとはしていない。どのように改良すればもっと喜んでいただけるか、検討は相当難しかったです」
愛用者が多い現状の使い心地から大きく路線を変えることはしたくない。でも、現状維持に甘んじるのではなく、さらなる高みを目指したい。この改善を実現するには、スキンケア研にはない知見を取り入れたいと考えた曽根さん。そこで、感覚研に相談し、タッグを組んでより良い炭酸泡に進化させていくことにしました。
感覚研は2019年に設立された、花王の中では新しい研究所。脳活動や心拍などの体の反応を、五感の感じ方を根拠に科学的に研究する感覚研ですが、門地さんは「立ち上がりは4年前ではありますが、それ以前よりいろいろな部署が体の反応を捉えて商品開発に活かしてきた背景が花王にはあります」と語ります。
炭酸※1泡がリピートされる理由に着眼。3つの要素を追及した”愛される泡“の開発秘話
これまでの愛用者の方にも使い続けてもらえる炭酸泡にするにはどうしたらいいのか。まず考えたのは、「そもそもなぜ、今の愛用者の方々がリピートしているのか」ということでした。愛用者の方の声から出てきた答えは「やわらかくて気持ちいい泡」。では、そのやわらかくて気持ちいい泡をどうすればより良いものにできるのか。“もっと愛される泡”にするための要素探しを主導したのが、感覚研の門地さんです。
※1 炭酸ガス(噴射剤)
「この、やみつき感触の“愛される泡”は、見て・触って・実感するの3つの要素が重要であると結論付けました。この3つに集約されたこと自体は、これまでのお客様のお声からある程度予想の範囲内ではありました。特に肌へのなじみ感、浸透感といった触覚部分に関しては、愛着を持つ要因になると予想していましたね。
ただ、愛用者の脳反応を見ていて意外だったのは、触覚的な要素だけではなく、視覚的な要素に対しても予想以上に好意的な脳反応が見られたことです。泡を手に出したときの白さ、肌に塗布して泡が透明に変わっていく様子に対しても愛着を持っていただけていることがわかりました。肌に使うものだから、肌で実感できさえすれば良いというわけではなく、総合的な感覚を持って愛着を持ち、リピートしてくださっているのだ。効果実感や触感だけでは足りないんだなという気付きになりました」
3つの要素を高めるため、開発されたのが高濃度※2の炭酸泡です。肌なじみの良さと泡質の良さを両立させ、もっと使い続けたくなる気持ちいい泡を目指して開発が進められました。
「なじみを良くすると、使用感がやわらかくなってしまい、愛用者の方から支持されているふんわりした泡ではなくなってしまいます。泡質の良さと肌なじみの向上は相反するもので、1番大切であり1番難しい部分でした。結果、良い成分を発見し、それを配合することで肌なじみの良さとふんわりした保ちの良い泡質との両立が叶いました」(曽根さん)
基礎的な研究を続ける中で見つけられた技術を使い、商品に使う高濃度の炭酸泡へと繋がった今回の研究開発。「今までの化粧料の開発では優先度を上げてまでは意識しない視覚的な要素を追求したことで、使い心地の触覚と効果実感と合わせて、より良いものに仕上がったという検証ができたと思います。」
※2 当社比
“愛される泡”への反応を脳波で測定。感覚研の挑戦
こうしてできあがった高濃度※2の炭酸※1泡は、科学的な根拠を持って、お客様に喜んでもらえるものになったか。ここを検証したのが感覚研です。今回、感覚研が調べたのは「やみつき度」。これは、脳波の研究を以前から続けてきた感覚研にとって、いつもの研究過程で測れるものではなかったと門地さん。
「今までは、健康関連商品による疲労感への影響、入浴剤を入れた湯船での温まり感といったように、1つの側面にフォーカスして身体反応を見る基礎研究が多かったんです。今回は、総合芸術のように作られている、ある意味完成された炭酸泡に対し、ユーザーがどう印象を受けるのかを脳反応を含めた感覚研究から見つけ、説明していくことが求められました。たとえば、大学教授が教科書に記しているような基本的な調査方法ではカバーできない部分があり、曽根さんとタッグを組んで微調整をしながら進めることで、適した実験を見つけ、進めていきました」
そもそも、「やみつき」とは何か?というところから検討を進めていった門地さん。結果、採用したのはP300という一過性の情報に対してミリ秒で反応する脳波です。P300は本人が興味がある情報や特別な意味を感じている情報に対して発生します。試験に参加される方に泡感触を体験してもらったあと、気持ち良さなどを示すいくつかの言葉に対する脳の反応を波形に表し、期待や関心の高まりを数値化しました。
1人の測定にかかる時間は45分。愛用者、非愛用者に対して研究を行ったため、かかる時間だけでも膨大になります。調査結果について、門地さんは次のように語ります。
※1 炭酸ガス(噴射剤)
※2 当社比
「効果実感や触感に加えて、視覚的要素が愛着に関わっていることがわかりましたが、今回の泡に対しても同様の結果を得られました。曽根さんたちがこだわって作り上げた炭酸泡の良さを、ユーザーが脳レベルで実感できていることが根拠を持って実証できたのがうれしかったですね。
また、予想していなかったのは、だんだん愛着度が高まっていくというわけではなく、第一印象から好反応を示す人が多かったことです。使い続けるうちにどんどん好きになり、リピートし続ける流れを漠然と想定していたのですが、今回脳波を測定してみたところ、はじめて使われた方も、愛用された方と同じように、最初から強い脳反応を示しました。最初から好印象を持っている方が使い続けることで、より好きになっていくプロセスがあると知れたのもうれしい発見でした」
科学的なエビデンスとともに、さらに“愛される”商品づくりのための研究を
今回、タッグを組んで愛される泡の開発を実現したスキンケア研と感覚研。今後について、曽根さんは「感覚研とタッグを組めるのは花王の強み。今後も引き続き連携しながら開発をしていきたい」と語ります。
門地さんも「科学的なエビデンスを持って、商品づくりをサポートしていますと自信を持って伝えられる材料にしたい。感覚研究で見出した好ましい印象を商品に実現できるのはスキンケア研の製剤開発技術があってこそ」と述べます。
「花王は、使っていただく方へのメリットを徹底的に追及したい、貢献したいという風土がある会社です。脳反応研究は人を見る1つの手段であり、脳反応以外の反応も測定していきたいですね。総合的に人に関心がある会社だと考えています。
小さな基礎研究は数多くの実績を積み上げてきましたが、商品として仕上がっているものに対する評価を数値や根拠を持って示すということについては、まだまだ知見を積む必要があります。そのものだけではなく、使い方によって五感が示す反応が異なることもわかっているため、商品の良さはもちろん、より効果実感できる使い方のご提案材料として活用できる研究を続けていけたら」(門地さん)
最後に、進化した炭酸※1泡について、改めて今の思いを曽根さんから語ってもらいました。
「炭酸泡製剤を活用した商品には多くの愛用者の方がいらっしゃり『肌の手入れに欠かせない相棒』と表現いただくこともあります。そんな愛用者の方にはずっと使っていただけるものを、まだ使ったことのない方には、ぜひ1度使っていただきたいなと思っています。今後も皆さんにスキンケア習慣をもっと楽しんでもらえるよう尽力したいです」
何となく感じている「気持ちいい」を科学的に数値で出した、気持ち良さが証明された炭酸泡。“愛される泡”がますます多くの人の毎日のスキンケアに寄り添う、心強い存在になると信じています。
※1 炭酸ガス(噴射剤)
曽根千晶さん
花王株式会社 入社1995年。
スキンケア研究所 美容液など商品の開発・研究 担当
入社以来、スキンケア化粧料、お肌や美容に関する研究に従事。
門地里絵さん
花王株式会社 入社2004年。
感覚科学研究所 感覚情報・商品に対する心理反応研究担当 博士(心理学)
入社以来、人の快さやストレスについての心理学研究に従事。
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