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佐野らーめん伝統の味を絶やさないために。店舗の開業希望者をサポートしながら、地域の課題も解決する「佐野らーめん予備校」の誕生秘話。

著者: 佐野市役所

人口約11万人の佐野市は、昭和初期からずっと変わらずに現在も約150軒の佐野らーめん店が点在する、日本有数の密度を誇る「ラーメンのまち」となっています。


この市を代表するご当地グルメ「佐野らーめん」の伝統の味を守り続けるため、「佐野らーめん予備校」は、佐野市への移住と、移住に必要な仕事として佐野らーめん店の開業をセットでサポートするプロジェクトです。


これまで予備校を卒業したのは22名。14世帯30名が移住し、7店舗の佐野らーめん店が開業されました。開業された店舗は、既に人気店になっている店もあるなど、着実に成果をあげています。


今回は、「佐野らーめん予備校プロジェクト」立ち上げのストーリーと取組のこだわりについて、代表の若田部が振り返ります。


名店の味、魅力ある既存店があるから修行したい、教わりたいと思える。

多くの地方都市が抱える問題として人口減少があります。佐野市も例外なく人口が減少していて、今後40年で、人口が約39,000人減少するという試算が出ているとも聞きます。そのため、将来的に佐野らーめん店にも廃業する方が増えることが懸念されていました。


もちろん、ご子息やお弟子さんが後を継いでいる店舗もありますが、後継者がいない店も多くあります。経営状況が良いのに、名店の味が消えてしまうことは、地域にとって良くないですが、実際には惜しまれつつも閉店する店がいくつかありました。


また、ラーメン店は、きつい、危険、汚い、など就職先として不人気な飲食業界の代表格と思われており、後継者もさることながら、従業員やアルバイトもなかなか見つからない状況です。昨今のコロナ禍の影響で先が見えない状況から早く抜け出して、脚光を浴びる職業にしなければいけないと考えていました。


そんなとき、市役所の移住定住を担当していた方から「地元で継いでくれる人が少ないなら、移住してもらって佐野らーめん店をやってもらおう!」という思いもよらない発想の話をいただき、「佐野らーめんの繁栄、佐野市の活性化に繋がるならやります!」と自然に言葉が出ていました。(笑)

ラーメンづくりの経験がない方、全くの初心者でも独立開業を目指せる仕組みづくり

私は本業で不動産業を営んでいるので、全国的な空き家問題が気になっていて、佐野市についても同様の課題意識をもっていました。


しかし、廃業した空き店舗が佐野らーめん店として生まれ変われば、大家さんに収入も生まれ、資産が活用され、まちがシャッター通りにならずに済む。その一助になればと思いました。



でも、このプロジェクトをやると決めてから悩みました。開業を希望する移住者に不動産を紹介するのは自分ができるから良いとして、佐野らーめんは大好きだけど教えられない。そこから、既存の店主さん達に、協力をお願いする旅が始まったのです。


お願いする相手が、らーめん店主さんですから、何も食べずにお願いする訳にはいきません。伺う度にらーめん一杯、次の店で又一杯と、三杯はしごすることも度々ありました。(笑)


始めは、佐野らーめんに特化していることへの懸念や、既存店の売上が落ちてしまうのでは等の厳しいご意見を頂くこともありましたが、何度も通ううちに不思議とこのプロジェクトへの思いも伝わり、講義や店舗見学などに協力してくれる店舗さんが次第に増えていきました


一番大きかったのは、現役店主の方が調理方法を教えてくれることです。佐野らーめんの伝統的な製法である青竹麺打ちに始まり、スープ、盛り付け、メニューのアレンジ方法など、惜しみなく開示してくれたこともあり、基礎的な佐野らーめんのつくり方を習得する仕組みづくりができました。また、ラーメン店といっても、事業の経営者ですので、マーケティングや資金計画、出店場所の選定方法、許認可関連の届け出なども、地元商工会議所や、金融機関などを巻き込んでワンストップでサポート体制をとることができました。

移住者ならではの佐野らーめんで、すでに人気店となっている店舗も。

移住される方へ佐野市での仕事として、佐野らーめん店の開業をサポートすることには明確な根拠がありました。それは、佐野らーめん店の廃業率を独自に調べる中で分かった、過去10年間に、高齢化によるものを除いた経営不振による廃業率が、約12.4%という結果です。


一般的に、飲食店の廃業率は、1年以内に30%、2年以内に50%が閉店すると言われているのと比較して、驚異的な数値です。そのため、佐野らーめん店の経営は、安定した仕事として選んでいただいても大丈夫だと思いました。



実際に予備校を卒業して開業した7店舗のうち、昨年から今年にかけて開業したばかりの4店舗は別として、初期に開業した3店舗は、売上も安定しており、人気の佐野らーめん店として順調に経営を続けています。その他の卒業生もまた、本格修行ということで既存店で3年間の修行をしている方など、それぞれのやり方で開業に向けて準備をしています。残念ながら、ご家族の事情などで移住や開業につながらない方もいらっしゃいますが、着実に実績はでていると感じています。


また、佐野らーめん予備校を経て開業される方は、その年齢やバックグラウンドは様々です。中華や和食の料理人だった方もいれば、工場の技術者だった方もいます。出身地も佐野市近隣の方もいれば、秋田県や奈良県、中国といった具合です。そのため、和風だしにこだわったスープの佐野らーめんや、秋田の魚醤をかえしに使った佐野らーめん。奈良のスタミナラーメンとのハイブリットの佐野らーめんなど、移住者ならではの佐野らーめんが続々と生まれています。佐野らーめんは、基本を守りつつも進化できる、懐の深いラーメンだと思います。

佐野らーめん予備校と佐野らーめんが地元の方と卒業生の架け橋に。

佐野市に移住して佐野らーめん店を開業される方は、土地勘もなければ、お知り合いの方がいないことがほとんどですので、始めは大変心配でしたが、取り越し苦労だったのかもしれません。開業する際には、改装工事事業者さん、厨房機器事業者さん、材料の仕入れ先など、地元の方とすぐ繋がりができます。


また、オープン前には、既存の店主さんや先輩卒業生も駆けつけてアドバイスしてくれます。予備校が緩衝材になって地元の方を繋ぎ、相互に協力し合う形が自然にできているのは、微笑ましい限りです。



そして、何より佐野の方は佐野らーめんが大好きなんです。友人や家族で食事に行くときは、必ず佐野らーめんが選択肢に入ります。そのため、新しい店舗がオープンすれば、すぐに聞きつけ、口コミで応援してくれますね。ありがたいことに今では、予備校も地元の認知度が広がって、空き店舗の情報や市内のイベントへの出展依頼もいただくようになりました。新たに出店する卒業生の店舗が、地元の方に愛されるように伴走するサポートにも力が入ります。


佐野市の美味しい水を使った澄んだスープに、青竹打ちの縮れ麺が特徴の「佐野らーめん」。その歴史は古く、大正5年頃、中国人コックが広東省で見られる青竹を使用して製麺する技術を広めたのが始まりと伝えられています。その伝統的な製法を受け継いでいくためにも、卒業生の修行受け入れや事業承継など、既存の佐野らーめん店との関係をさらに強化し、佐野らーめん自体の経済規模のすそ野の拡大を目指します。


「佐野らーめん予備校」公式ホームページ

https://www.sanoramen-yobiko.jp/





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