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ブロックチェーン技術を駆使したデジタル商品券プラットフォーム「Owlwallet」開発秘話と自治体導入までのストーリー

著者: エバーコネクト株式会社

エバーコネクト株式会社が提供するデジタル商品券プラットフォーム「Owlwallet」は、2年連続で目黒プレミアム商品券デジタル版に採用されるなど、2021年の正式リリースから3年で、決済額累計約14億6千万円、トランザクション数120万件強のプラットフォームに成長した。

しかしここに辿り着くまでの道のりは決して平坦ではなかった。


このストーリーでは、「Owlwallet」がここまでの成長を遂げるまでの道のりと今後の展望について紹介します。


左から吉田敬一(CEO)、福田徹(Chief Strategy Officer )

◆2017年からブロックチェーン技術の可能性に着目し、研究開発を開始

2017年に起業し、そこから1年半、ブロックチェーンの特性とその可能性に着目し研究開発を進めました。最初は海外の技術文献を読みあさり、ブロックチェーンでできることと、我々が挑戦したいことがいかに近づくかを徹底的にシミュレーションし、価値を移転できること(価値のシェア)、認可認証した者のみネットワークに参加できること(安心安全)、数百万回のトランザクションを欠損なく書き込めること(耐久性と信頼性)を最初の指標として、3つの異なるブロックチェーン技術を選択しました。そして我々が描くプラットフォームとして機能するか、それぞれPoCを実施し、どの技術を採用して開発に進むかを見極めました。

学びながらの開発。サービスローンチ後のトラブルも手探りで解決

2019年に入り、最初のパイロット版を約6ヶ月で開発しました。当時、ブロックチェーンネットワークの立ち上げに関する文献やドキュメントのほとんどが英語で書かれたものでしたが、弊社のエンジニアは全員が外国籍のため英語が社内言語だったこともあり、短期間で理解し構築することができたと思います。

この時は、価値を移転管理することに主眼を置いたバックエンドシステムのデジタルチケットプラットフォームと、発行したチケットの消し込みを行うビジネス向けのiOS版ネイティブアプリを開発し、2020年にクラウドファンディングのリターンチケットとして採用してもらいました。


しかし、技術検証では稼働していたものが商用サービスになったことで問題が顕在化するという、新しい技術で時々耳にする事態がここで発生してしまいました。その一つがブロックチェーンプラットフォーム自体の環境設定に起因して予期せぬタイミングでブロックチェーンネットワーク内のノード間通信が途絶えてしまうという事態に直面しました。

サービスを提供する側からするとまさに心が折れそうな状況です。


この事象については当時のブロックチェーンの文献やドキュメントに書かれていないことが多く、まったくの手探りの状態で原因を突き止め改善することになりました。結局2週間ほどかかりましたが、異なる環境を構築しトライアンドエラーを地道に繰り返しながら原因を突き止め、不眠不休で課題を改善していきました。


この時に思ったことが、文献やドキュメントに書かれていないことに直面するということは、我々が世界的に見ても先行している、そしてエンジニアに最先端の経験とノウハウが蓄積されるという、実は素晴らしい経験をしているんだと。

そして、この局面をチャンスに変える考えにチーム全員が勇気づけられ、全速力で課題を突破していきました。

デジタル商品券に開発の的を絞るという決断が功を奏し、「めぐろ生活応援券」にアプリが採用

その後、これまでの経験を元にプラットフォームの完成度を高め、2021年に飲食市場に特化したデジタルチケットサービスGotchを提供開始し、その年の11月に目黒区商店街連合会様と商店街で利用できるデジタル商品券の提供を開始しました。

この時に、1チームしかない開発体制で、2つのサービスを同時に推進していくことも検討しましたが、開発スピード、技術改善、完成度の追求、お客様へのサポートなど多面的に検討した結果、複数の開発体制を持てるまでは事業を1本に絞る、という決断をし、商店街で利用できるデジタル商品券に事業をシフトしました。


この判断が功を奏し、2022年に「めぐろ生活応援券」(プレミアム商品券)のデジタル化に弊社プラットフォームとiOS版とAndroid版のスマートフォンアプリ(お客様用と店舗用の合計4アプリ)が採用されました。


紙の商品券をデジタル化することで店舗の負担を軽減。全世代のユーザーを対象にするという挑戦も

我々の役目は、紙の商品券のデジタル集計を実現しバックヤードの業務負荷を改善することと、デジタル商品券の仕組みを提供し区内の商店や住民のデジタル化を推進していくことでした。

紙の商品券のデジタル集計では、事前に100万個以上のデジタルID(トークン)を生成し、紙商品券にQRコードとして印刷することで、店舗での消し込みから集計までをデジタル化しました。これにより集計業務を簡素化したことで、店舗様への振込サイトを短縮することもできました。

デジタル商品券のお客様アプリについては、UXを極力シンプルにすることに注力しました。


一般的なアプリを使ったサービスは、ターゲットとして絞り込んだユーザ層に対してUXや仕様を精査して開発を行いますが、自治体の事業の場合は全住民がターゲットになります。もちろんその中には、スマホをあまり使ったことがない人たちも含まれるわけです。

老若男女、幅広く使われること、使えることが重要視されるのが自治体向けのサービスの特徴であり、この点が新しいチャレンジでもありました。

機能を削る、操作性をシンプルで簡単にするということが一番手間がかかり難しい面でもありましたが、開発期間中は事務局のオフィスに詰めて、関係者から直接ご意見をいただきながら進めることで開発を進めていきました。

リアルタイムでの履歴確認機能など、店舗にとって更に便利に。チーム一丸となって小さなサービス向上を積み重ねる

2023年になりプレミアム商品券も2年連続で採用していただきました。今年度は「めぐろデジタル商品券」として、デジタル商品券のみを取り扱う事業となっています。また、今年度から我々はプラットフォームのブランドを刷新し、「Owlwallet」として提供しています。

昨年度からの改善点として、事務局と店舗向けにWebブラウザで閲覧と管理ができるDashboardを開発し提供しています。このDashboardにより、店舗様はリアルタイムで利用履歴を把握することができ、さらに振込データまで自動で生成する仕組みも具備しているため、バックヤードの業務を昨年以上に改善することができています。


Umberto Ferreira(Senior Architect & Head of Engineering)


これまでを振り返ると、大きな一歩の飛躍ではなく、チーム一丸となり、一歩一歩の積み重ねがサービスの向上に繋がり、プロダクト全体の完成度を高めていくことができたのだと思います。

◆社会にブロックチェーンの活用を浸透させていきたい

自治体におけるブロックチェーンを活用した商用サービスの事例はまだ少ないのではないかと思っています。

ある意味、ここが弊社の強みでもあり、そして、もっと社会にブロックチェーンをはじめとするWeb3技術を活用したサービスを浸透させていきたいと思っています。


いずれは、情報が紙からデータになったように、通貨やモノの価値がデータになり、その時には選択肢の一つとしてブロックチェーンが活用される世界が来ます。


地域経済の発展や地域のDX推進に貢献し、そして世界で利用されるサービスへと成長させていきたいと思っています。

デジタル商品券は最初の1歩にすぎません。我々は、安心安全に人と情報がつながる世界を目指して、日々、技術革新とサービスの向上に努めていきます。


我々は、これからも、大胆に、そして謙虚にテクノロジーで世界をつなげていきます。




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