店舗メンテナンス業者の手配を10倍速くするアプリ「Qナビ」、店舗とメンテナンスの両業界を発展させるサービスの開発秘話
現在、店舗向けメンテナンスの市場規模は、約7,800億円と言われています。店舗とメンテナンス、それぞれの領域で優先されるべき「本来業務」を創出するため、株式会社グローバーはアプリ開発によるアナログな業務フローの効率化に着目しました。リアルとデジタルの理想的な協働を目指すアプリ「Qナビ」の開発と成功、現在地と未来像を、代表取締役の平田勝治に聞きました。
店舗運営とメンテナンス、それぞれの業界にある課題がアプリ開発の着想へつながった
私たちが目指したのは、店舗運営に関わるクライアントが「本来業務」に専念できる環境づくりを提供すること。本来業務とは、店舗運営に携わる人が「本当にやるべき業務」です。具体的には、例えば飲食店において、メニュー開発や人材教育など、お客さまに喜んでもらうために欠かせない仕事があり、そこに向き合う時間を創出することが私たちの仕事だと考えています。
実際の店舗の現場では、日々こなさなければならない業務が多く発生していて、本来業務に取り組む時間を奪っている状況を感じました。調理や接客以外の、お客さまには見えない業務が多く、とにかくやることがたくさんあって、従業員の方々は疲れ切っていました。
一方、業者側においてもその本来業務を奪っている状況があります。そのひとつに報告書をはじめとする書類作成がありました。日付だけを変えれば内容はほとんど変わらないようなケースも多いです。つまり、形式化してしまったアナログな作業が、現場で日々繰り返されていました。
加えて、店舗メンテナンス業界では、担当者の人手不足と高齢化が進み、属人的な傾向が強まっていました。さらに、顕著に見られるのが設備機器市場の変化です。厨房衛生管理の推進や設備機器の高度化・複雑化が進みました。調理機器においては、ただ温める、冷やすというシンプルな機能ではなく、ソフトウェアが入っていて、一流シェフの調理を再現するようなレベルにまでなっています。そうなると、厨房における調理機器の役割は大きく使用頻度も高くなり、そのぶん故障のトラブル回数が増え、必然的に修理対応の機会も増えていました。
このように、店舗側とメンテナンス業者側の両方の領域で、改善すべき問題点が見えてきたのです。
きっかけは若手スタッフの何気ないひと言。自由な発想と長年の現場経験が開発を後押し
Qナビの開発背景には、コロナによって、店舗側のデジタル化が進んだという流れも後押しとなったと思います。非接触を目的としたキャッシュレス化やロボットの導入が増え、スマホやタブレットなどのデジタルデバイスが現場に普及しました。そういった面からも、当社開発のアプリが浸透しやすい環境の下地ができたと考えています。
開発のきっかけは、今から6~7年前になりますが、若手スタッフの「アプリを使って、店舗と業者のマッチングができないか」という何気ないひと言でした。店舗側では、故障のトラブルが発生したときの、修理業者を探すところからが面倒な手間としてありました。そして、メンテナンス業者側には、修理業務に関連する提出書類がとにかく多いのです。見積書や作業報告書、請求書などの仕様がチェーン店ごとに違い、提出のシステムも異なります。それは作業員側の大きな負担ともなっていました。
そういった、長年の現場作業の経験を通じて感じていた、あらゆる面倒な業務をなにか効率化できないかという想いと、若手スタッフから出たアイデアが結びついて、ウーバータクシーのメンテナンス版を想定したアプリ、Qナビの開発が始まったのです。
Qナビを業界に浸透させ、マッチングを成立させるためにメンテナンス業者の開拓を強化
メンテナンス業務を専門に行っていた当社にとってソフトウェア開発は初めての経験。開発当初はすべてが手探りで、紹介してもらったベンダー企業にまずはお任せするしかありませんでした。
当初はビジネスチャンスを狙って、飲食店は個人店を対象としていましたが、チェーン店向けに方向転換をしました。個人店の場合は、自分で修理をしたり、急な故障に対応する資金の余裕がなかったりと、修理依頼がなかなか発生しません。そこで、思い切って、ターゲットをチェーン店に絞ったのです。
しかし、Qナビはそもそも、今まで業界にないアプリだったので、このシステムを理解してもらい、信頼してもらうまで、とても苦労しました。今では笑い話ですが「本当にアプリで業者が来るの?」と言われたこともありました。一方で、メンテナンスの案件が発生したときに業者が名乗りでてこないこともありました。マッチングを成立させるうえで、店舗と業者の数を両方増やしていく必要があったのです。
最初は1都3県に絞って、そのエリアで展開している中堅チェーン店と、同エリアで動いてくれる水関連の修理業者に参加してもらっていたのですが、飲食チェーン店にとっては水だけしか対応できないことによって、既存の業者とQナビ、つまりアナログとデジタルを併用する状況になってしまい、かえって業務効率化につながらないケースが発生しました。そのようにアプリをリリースしてから最初の2年間ぐらいは、なかなか売上につながりませんでした。
そこで、全国展開でメンテナンス業者の開拓を強化し、対応メンテナンスをフルメニューで構築したことから、課題解決に応えることができ、チェーン店の広がりが出ました。そこから、100店舗規模のチェーン店の利用につながり、昨年から軌道に乗った手応えを感じています。
Qナビ導入後、メンテナンス業者の手配は従来の約10倍に
現在、全国で約1,000社のメンテナンス業者が登録しています。利用開始後の大きな変化として、チェーン店本部側ではメンテナンス業務に関わる時間を80%以上削減することができ、本社管理部の介在時間を大幅に削減することもできています。また、メンテナンス業者にとっては、手間のかかる書類作成の自動化などQナビならではの機能の活用によって、作業員が1人で1日に受けられる案件が2倍以上となりました。これは、人員不足の解消にもつながっています。
私たちは、メンテナンス業者のネットワークを持ち、全国エリアでフルメニューで対応できる体制を整えており、店舗側と業者側の双方のユーザーと直接取引をしているので、両業務の理解度が深いことが強みです。それはどちらのユーザーにとっても業務改善に有効な付加価値のある機能を提案する能力につながります。アプリの拡張においても企画から実装までのスピードが速いことも大きな強みです。
デジタル化すべき場面、人間が培った知恵や経験値を活かす場面を見極める
私たちは業務の効率化を求める中で、すべてをデジタル化することは目指していません。メンテナンス業務において、人間が培った知恵や経験値を活かし人が携わったほうがいい領域がかならず存在します。
作業員であるノンデスクワーカーの長年の現場経験や、お客さまと築いた信頼関係をもとに、臨機応変に対応したり、付加価値のある提案をするということは人間ならではのものです。一方で、膨大なデータの処理や繰り返し作業などの正確さと迅速さは、人間よりもデジタルが優れています。
だからこそ、あくまでも私たちは業務をサポートするという役目から外れることなく、デジタルとアナログの適切なすみ分けを判断することを大切にしていきたいと考えております。そこが難しさでもあり、醍醐味でもあります。「本来業務」に専念する時間をつくり、より人の持つ能力を発揮できる機会を創出するという、リアルとデジタルが協働できる最強のソリューションを構築していきたいと考えます。
メンテナンス業務の効率化が、店舗側の課題解決につながると信じて
店舗メンテナンスの全国的なインフラを目指すうえで、メンテナンス業者側のサービス改善と向上に注力することが必要だと考えます。故障トラブルの対応に1分1秒でも現場に速く着いたり、お客さまの希望する日時に、求める技術者を派遣できるかといった満足度を高めることが問われていくでしょう。
また、蓄積する膨大な作業データをもとに、店舗ごとにパーソナルな対応ができるようにしたいとも考えています。将来的には、ノンデスクサービスとしての、店舗メンテナンスのプラットフォームとなるように成長させていきたいです。メンテナンス業務の効率化を進めることで、より店舗側の課題解決へとつながるということに、明るい未来があると、信じています。
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