単なる社内システムではない。キャリアオーナーシップ支援プラットフォームの価値を世に問う「CareerMill」
パーソルグループでは、「キャリアオーナーシップ*」の考え方を大切にし、社内の人材活用に取り組んでいます。
*「キャリアオーナーシップ」とは、個人が自分の「キャリア」に対して主体性を持って取り組む意識と行動のこと。
パーソルグループの「キャリアオーナーシップ」を支える人事×テクノロジーの取り組み事例として今回紹介するのは、パーソルグループ社員が利用するプラットフォーム、「CareerMill」(キャリアミル)。
なぜ、社内向けのキャリアオーナーシップ支援プラットフォームが必要だったのか?
なぜ、グループ社員が利用する大規模プロダクトを、インハウスで開発したのか。
今回は、「CareerMill」のPdMとして開発の指揮を執った、パーソルホールディングス プロダクト開発室 シニアコンサルタントの道家(どうけ)に話を聞きました。
パーソルホールディングスが運営するWebメディア「TECH DOOR」では、パーソルグループ内で取り組んでいるITプロジェクトを紹介しています。本記事と併せてぜひご覧ください。
目次
・キャリアオーナーシップを支援するべく立ち上がった「CareerMill」
・4カ月にわたるチームビルディング。志をひとつに挑んだアジャイル開発
・最大価値を発揮するサービスとして進化し続ける
キャリアオーナーシップを支援するべく立ち上がった「CareerMill」
―「CareerMill」はどのようなプロダクトですか?
パーソルグループ社員がキャリアを自律的に考えるためのキャリアオーナーシップ支援プラットフォームです。
パーソルは、キャリアを自分ごととして考えて行動する、キャリアオーナーシップの考え方を強く持っています。
パーソルグループの全社員に向けた施策を実施する人事では、社員のエンゲージメント向上に向けたキャリアオーナーシップの推進のため、さまざまな制度、研修を取り入れています 。
―インハウスで開発することになった背景をお聞かせください。
もともと、グループ内異動に手を挙げる仕組みとして利用していた前身のサービスが、2020年度で終了することとなりました。次のプラットフォームを模索していた当時の人事部長に、新たなシステムをインハウスで開発することを私から提案しました。
というのも、従来利用していたサービスは既成のATS*1だったんです。そのため、管理できるのは社員が登録されてから異動先が決まるまでの部分だけでした。
キャリアオーナーシップ支援の観点から、キャリアの履歴を蓄積し管理していくシステムが必要だと考えたんです。
ATSでは、私たちがやりたいことはできないし、世の中にほしいサービスはない。「では、自分たちのやりたいことにフォーカスしたプラットフォームを、自分たちで作ろう」と、インハウス開発が決まりました。
「これは楽しそうだ」という期待と同時に、パーソルグループの人事施策を世に問うプロダクトになる可能性を感じました。もちろん不安もありましたが、経験則から、チームビルディングさえしっかりすれば、良いものを作る自信はありましたね。
*1 ATS:採用管理システム
―「CareerMill」にはどういった機能が備わっているのでしょうか?
今後も機能を充足していく予定ですが、現時点で提供しているサービスの一部をご紹介します。
「キャリアチャレンジ」
グループ内の公募型異動制度です。自分らしいキャリア形成に向けた異動チャレンジ機会を提供しています。 面接に合格すればグループ会社間での転籍が可能です。キャリアチャレンジのプロセス全体が、「CareerMill」で完結できるようになっています。個社内での異動にも利用されています。
「ジョブトライアル」
グループ内の他の部署の仕事を短期間体験できる制度です。本業をしながら、最大3ヶ月間(月8時間)、別組織の仕事体験や交流を行うことができます。
キャリアチャレンジは転籍・異動が前提ですが、ジョブトライアルはあくまでもグループ内インターンシップのような位置づけで、「他の組織や業務を知りたい」 「やりたいことを見つけたい」というニーズに応えるための制度です。
ジョブトライアルのプロセス全体が、「CareerMill」上で完結されています。
「Smyle研修」
社員が自身のキャリアデザインを行うワークショップです。研修への応募機能、アンケートに留まらず、ワークショップで使用するキャリアデザインのシートも「CareerMill」上で実現することで、自身のキャリアの棚卸を定期的に閲覧、振り返ることが可能です。
「グループ内複業」
社員が、グループ内で複業できる制度です。複業を通じてさまざまな経験を蓄積しキャリア形成につながるほか、収入を増やすことにもつながります。「CareerMill」上では複業案件の公開や応募が可能です。
なお、現在グループ内複業の対象個社や募集職種が限られています。
▲「CareerMill」操作画面イメージ
―リリース後、人事のフィードバックにより機能を充足した事例があれば教えてくだい。
これまでさまざまなエンハンスを繰り返してきましたが、そのうちの一つとして「キャリアチャレンジ」におけるマッチング精度を高めるべく、「打診エントリー」機能を追加しました。
キャリアチャレンジに関する機能を「CareerMill」でリリース後、社員から応募があったものの、人事目線で「別の公募案件がマッチするのでは」というケースがあることがわかりました。しかし、社員のチャレンジはすべて記録に残したいので、システム内で完結させようと判断しました。
そこで、社員の応募に紐づいて、オープンポジションがあるグループ会社側から打診できる機能を加えました。マッチングの最大化も図れますし、そういうキャリアに関係する履歴情報を一元的に管理できることが、何よりのメリットだと考えています。
―ADVANCED HR SHOWCASE(先進人事のショーケース)*2として意識したことはありますか?
「CareerMill」に限らず、私たちは常に「世に問える価値があることをやっている」と思いながらプロダクトを作っています。
グループで使うシステムを作るということは、グループ会社の社員すべてが使うプロダクトを作るということです。そこで「いいね!」といわれるプロダクトであれば、外販の可能性も含め世に問うていく価値は十分あると思うんです。それがモチベーションの源泉にもなっています。
「CareerMill」に関しても、ただ、社内の仕組みを自分たち用にカスタマイズしているのではありません。
私たちと同じような数万人の社員を抱える企業にとって、社内リソースの循環は重要課題のはず。「CareerMill」は、世の中の企業に対して、人的リソースの最大活用を支援できる価値を持っていると考えています。
*2 ADVANCED HR SHOWCASE:パーソルグループの人事ポリシー。先進的なHRショーケースで社会をリードするべく、お客さまにも紹介できるような、誠実で科学的な人事を行うことをHRビジョンとし、実験的な人事を行っている。
4カ月にわたるチームビルディング。志をひとつに挑んだアジャイル開発
―人事部門とIT部門が人を出し合い開発チームを組んだとのことですが、それはなぜでしょうか?
たしかに、本来であればお客さま側である人事メンバーが、チームに入ることはあまりありません。
一般的な社内SIは、お客さま側と開発する側がいて、社内といえども目に見えない契約関係があります。「できる・できない」といった押し合いをしたり、変えられないことに対する議論を延々としたり。時間的にもマインド的にもロスが増えることが多く、いいものを作ることが難しいと考えたんです。
そこで、開発をアジャイルに進めていくためにも、人事メンバーに我々の組織を兼務してもらい、開発チームに参加してほしいと打診したところ、即答で「やってみましょう」という返事が返ってきました。
自分の部下となった人事メンバーと最初に共有したのは、アジャイル開発におけるコミュニケーションの在り方でした。
社員の便益を最大化させるためには、今のリソースでできることを優先度の高い順に実現していくのがベター。「その考えを常に中心に置いてコミュニケーションをとることを、私たちの約束事にしましょう」と話しました。
―徹底して行われたという開発チームビルディング。ポイントとなったことは何ですか?
開発メンバーは7名で、社員は私とテックリードの2名。そのほかに5名ほどエンジニアがいました。
エンジニアチームのリーダーとなるテックリードは、社員であることが必須だと考えています。テクニカル面をすべて任せられるテックリードを見つけることが、私の最初の仕事でした。
メンバーとなるエンジニアは、テクニカル面よりまずマインド面を重視して選定しました。
私には、「作って終わり」ではなく、組織としてのプロダクト作りのケイパビリティ*3を高めていく目標がありました。技術そのものより、「より良い作り方」「より良いプロダクト」に興味があって、それにコミットできる人を選ぼうと考えたんです。
結果、今のチームを作るまでに35名と面談して4カ月間かかりましたが、まったく後悔はしていません。その時集まってくれたメンバーは、2年半経った今でもともに開発を続けています。彼らがチームに入ってきた時の目的意識がブレていないことが、大きな理由ではないでしょうか。
*3 ケイパビリティ:全体の組織力や組織固有の強み
―「CareerMill」プロジェクトで採用されたアジャイル開発。成功のポイントは何でしょうか?
自分たちのやり方を、常に自分たちでBPR*4し続けることが大切だと考えます。
一般的なSIの開発チームは、リーダーが作業指示を出して結果を集め、レビューしてOKかNGかというやり方。これは、もう時代遅れです。自分たちの仕事の終わり様を、自分たちで決めることが重要なんです。
開発内容をリストアップするのはPdMである私ですが、それをタスクに落とし込むことは彼らに任せます。タスクの終わり様の定義を自分たちで決め、自分たちがコミットしたことは意志を持って実行する。障害が出たら「やり様が正しくないのでは?」と考え直す。
このサイクルの中で検証していく自律的な動き、つまり自律的BPRマインドこそアジャイル開発成功の鍵だと考えています。
*4 BPR(ビジネスプロセス・リエンジニアリング):効率や生産性を劇的に改善するために業務全体を見直し、再構築すること
―コロナ禍でフルリモートでの開発となりましたが、コミュニケーションで留意したことは何でしょうか?
フルリモート開発でのコミュニケーションに懸念はありましたが、始めてみるとリモート会議も「意外といけるね」となりました。しかし、1つ問題も。メンバーはカメラもマイクもオンで参加するのですが、自分が話す必要がないと積極的に話そうとする意識が低いんです。
そこで、テックリードがスクラムマスターも兼任する体制をやめて、エンジニアが持ち回りで会議をファシリテートして、強制的に発話する環境を作りました。
1年半後、「CareerMill」リリースの頃になると、チームのコミュニケーションはかなり成熟していました。そのタイミングで、テックリードが別の案件にアサインされたんです。テックリード不在のまま進め、チームがどう変化するかを見定めることにしました。
はじめは戸惑いが見られましたが、あるタイミングでコミュニケーションがフラットに変化しました。メンバーに「自分はテックリードではないから」という感覚がなく、私に対しても「この仕様、おかしいんじゃないですか?」と発言する。立場の甘えがなくなったんです。
もともと、誰もがあらゆるタスクを実行できるチームにする前提で採用したことも、テックリード不在という体制にチャレンジできた要因です。
最大価値を発揮する“サービス”として進化し続ける
―「CareerMill」リリース後の社員からの反響はいかがでしたか?
毎年、プロダクトについて社員アンケートをとっています。「「CareerMill」は使いやすいと感じましたか」の問いに、約70%以上が使いやすいと評価してくれています。それに対して、ネガティブな意見は約10%です。「見やすい」「直感的に使える」といった声が多いですね。
「CareerMill」のようなキャリアを考えるシステムでは、堅牢さと合わせて、しっかりコンバージョンにナビゲートしていく使いやすさが重要です。そこが弱いと、個人にとっても企業側にとっても機会損失になると思うんです。
その点で、使いやすさを評価するコメントをもらったことは、個人的にすごく嬉しいですね。
―「CareerMill」の今後の展望について教えてください。
まずは機能の充足です。
リリースしている機能の中で、使われているものと使われていないものがあります。使われていない要因の1つとして考えられるのが、接点の少なさ。モバイルの機能を整えて「いつでも使える」状態にすることで、利用のハードルを下げていきたいと考えています。
もう1つがマーケティング的要素です。
機能がリリースされたことをどう訴求するか、公募案件を増やすための営業をどうするか。プロダクトというよりも、サービスとして捉えた時に、社員にしっかりと最大価値を発揮できるような仕組みを整えていきたいと考えています。
パーソルホールディングスが運営するWebメディア「TECH DOOR」では、パーソルグループ内で取り組んでいるITプロジェクトを紹介しています。本記事と併せてぜひご覧ください。
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