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「学びづらさをもつ子どもや保護者の方の力になりたい」ひとりひとりの特性に合わせた学習プリント「マイラビ」の誕生ストーリー

著者: 株式会社どりむ社



2022年12月、文部科学省からショッキングなデータが公表されました。発達障害(神経発達症/神経発達症群)*の可能性がある、いわゆるグレーゾーンの児童・生徒の割合が、通常学級で8.8%を占めるという調査結果です。10年前の調査では6.5%だったところ、現在では11人に1人が生活面や学習面で困りごと、学びづらさをもっていて、何らかの支援が必要であると報告されたのです。

以前から「グレーゾーンの子どもが増えている」ことは、現場の先生や保護者の間では“なんとなく”認識されていました。しかし、実際に数値として示されると、その驚きは大きく、教育関係者はもとより医療関係者の間にも衝撃が走りました。

ただ、ひと口で「学びづらさ」といっても十人十色です。例えば、文字を書いたり読んだりするのが苦手な子もいれば、見えないことを理解したり想像したりするのが苦手な子もいますし、板書の文字を追うのが苦手な子もいます。何に対して「困り感」があるのか、子どもによってそれぞれ異なるのです。

ましてやグレーゾーンの子どもは行動や会話は他の子どもと大きな違いがないことから、周囲から気づかれにくく、そのまま大人になるケースもあります。

こうした事実を目の当たりにして、早く対策を講じなければという一念で作られたのが、子どもの特性に合わせて教材をカスタマイズできる通信教育教材「マイラビ〈my learning habit〉」です。

業界でも珍しい「カスタマイズ」形式をとった教材づくりに隠された思いと誕生秘話に迫ります。


*「発達障害」について検索される方の便宜を考慮し、 神経発達症のことを一部「発達障害」と表記させていただいております。


教材のカスタマイズとスケジュール管理ボードで「生きる力」を育む


「マイラビ〈my learning habit〉」は、お子さまそれぞれの特性に合わせてカスタマイズできる通信プリント教材です。小学校の学習内容の基礎的な部分をカバーしつつ、WISC(児童向けウェクスラー式知能検査)-Ⅳ・Ⅴをもとに分析した教育支援で、学びづらさをサポートします。

支援タイプは、スタンダードを基本に大きく4種類に分かれ、組み合わせが可能で、最大6パターンの中から選ぶことができます。最初に選択基準を参考に支援タイプを決めますが、合わない場合は途中で変更も可能です。

また、マイラビでは、物事の段取りや見通しを立てるのが苦手なお子さまのために、段取りやスケジュールを管理できるボードでサポートしています。勉強だけでなく、教材に取り組むまでの流れを習慣化させることで、将来的に必要となる「生きる力」を育みます。


社是に立ち返り、学習支援が必要な子どもに対する事業を展開することを決意


「マイラビ〈my learning habit〉」を開発したどりむ社は、創業以来30年以上、学校現場をはじめ、塾や家庭など、さまざまな場で使用される学習教材を企画・編集・制作している会社です。

その活動の中で、ここ数年、スタッフが感じていたのは学習支援が必要な子どもが増えているという現実でした。

社内では「このまま放っておいたら、大変なことになる」「教材編集のノウハウのある自分たちなら何かできるはず」という声が上がる一方、「ニッチな対応が迫られ、手間がかかりすぎる」「繁忙期に差しかかり手があかない」「どんな内容にすればいか見当がつかない」と難色を示す意見が多数上がりました。

しかし「社会的に意義があり、必要に迫られている」こと「このタイミングを逃すと手遅れになる」こと、何より「あらゆる人たちに豊かな知性と感性を育む事業を展開することで 社会に貢献する 」という社是(原点)に立ち返ることで、あえて高いハードルに挑戦する方向で話が進んでいました。


「特性に寄り添える教材があれば」―という小児科医の思い


同じころ「発達に遅れのある子どもたちに何らかの支援ができないか」と考えていた小児科医がいました。武庫川女子大学教育学部准教授の宇野里砂先生です。宇野先生もまた、長く児童発達支援センターで発達障害の子どもの診療にあたる中で、年々「発達障害」という診断がつかない、いわゆるグレーゾーンの子どもたちが増える様子を見て「なんとかしなければ…」と焦燥感を募らせていました。

「この子たちは親がついていると勉強はできる。でも、つきっきりだと保護者のほうが疲れてしまう。どうすればいいのか…」そう考えて思い至ったのが「時間・空間・活動の構造化」でした。

「構造化」とは、何かの活動を行う前に、その活動を行いやすくするために環境を整えることです。発達障害(神経発達症/神経発達症群)の子どもを支援する「構造化」は、「いつ」「どこで」「何を」「どうする」ことを「見える化」して、子どもが見通しを立てて行動できることを目的としています。

宇野先生は「これらを落とし込んだ教材で勉強を続ければ、やがて子どもは一人で勉強できるようになる」と考え、旧知の仲であったどりむ社に相談を持ちかけたのです。


学習の見通しを立てやすくする「ミッションシート」

1つの「ミッション」が終わると、マグネットを移動させます。

「いつ」「何を」「どうする」をわかりやすくしました。





推奨学習スタイル

準備からかたづけまでを「学習」とし、プリントを置く位置、かたづける場所のモデルを決めました。「どこで」「何を」「どうする」かをわかりやすくしています。



宇野里砂先生

医学博士・児童発達支援センター小児科医師・武庫川女子大学教育学部准教授。

センターや保健所での乳幼児期から18歳までの発達や、学童の神経発達症の診療を担当。園・小中学校・支援学校・教育委員会等において、教員・保育士・学校看護師対象に、発達支援や医療的ケア児支援に関する講演等を行っている。



前例のない教材。産みの苦しさを何度も経験


どりむ社スタッフと宇野先生の思いが合致して、プロジェクトがスタートしました。

スタッフはまず、子どもたちが学習に対してどのような「困りごと」を持っているのかを調べました。参考にしたのは、主にWISC(児童向けウェクスラー式知能検査)-Ⅳ・Ⅴです。

しかし、調べれば調べるほど、困りごとの多様さと特性の違いを思い知らされ、それをどのように教材に反映すればよいか、まったく見当がつかない状態が続きました。

そこで、宇野先生の助言を受け、困りごとをある程度パターン分けすることにし、それぞれ支援内容を具体化していきました。

しかし、前例がない教材ゆえに、問題のレベル、ボリューム、レイアウト、色使い、見せ方、説明の仕方など、すべてにおいて手探り状態で、宇野先生の指導を受ける→ダメ出しされる→修正する→改善指示を受ける→修正する…の繰り返しが続きました。

そして、半年以上かけて、ようやく現在の形に落ち着いたのです。


子どもの特性に配慮した、マイラビならではの工夫の数々


教材づくりに際し「困りごと」の分析と同時に行ったのは、さまざまな特性をもつ子どもたちの「つまずきポイント」でした。

例えば、算数の場合「文章を読み解けない」「文字で書かれている場面がイメージできない」「数字や文字で記号化(概念化)されたものがイメージできない」「算数で決められているルールになじめない」などがつまずきポイントとして挙げられます。

実は、算数の問題は暗黙のルールがたくさん隠されていて、ふつうは「暗黙の了解」として特に意識せずに理解できるのですが、学習に遅れや偏りがある子などは「ルールだから」という理由で理解するのが難しいのです。

そこで、それを支援する方法として考案したのが「文中のポイントになる箇所に下線を引く」「場面をイラストで示す」「記号化されたものは具体物にして見せる」「文章などでルールを明確に示す」などの工夫です。

つまり「見えないルール」を理解させようとするのではなく、子どもが次にすることをはっきり目で見えるかたちで示し、ひとつひとつ見ながら確かめられるような工夫を散りばめたのです。

ただ、子どもの特性はそれぞれ異なるので、これらをすべてを教材に落とし込むと、子どもによっては邪魔になったりかえって混乱したりすることも考えられます。そのため、支援タイプを分けて、より特性に合った支援が子どもたちに届くようにする「カスタマイズ方式」に至ったのです。

また、題材は「子どもにとって身近にあること」にこだわり、家庭で準備できそうなものに特化することにしました。具体物を目の前に置いて、よりイメージできる状況を作りやすくするためです。


工夫例


最終目的は、良い点をとるより学習習慣をつけること


こうして、今までにないオリジナルのプリント教材ができ上がりました。

ただ、その紙面を一見すると、ゆとりが感じられるので「もっと問題があったほうが…」と思う方もいらっしゃるかもしれません。実際、教材づくりの試行錯誤の段階では、少しでも多くの問題に触れてひたすら解いていく教材にしては…という案も出たといいます。

しかし、学習に遅れや偏りがある支援が必要な子どもにとって大切なのは、問題の正答率を高めるのではなく(もちろんそれも大切なのですが)、中学や高校に進んだ後も一人で学習できる「学習習慣」なのです。

自ら見通しをもって計画を立て、自分ひとりで準備から学習、答え合わせ、片付けまでの一連の流れを完結する力なのです。

そこには、監修者である宇野先生の言葉も反映されています。

「もう少しあったほうが…と思うくらいのボリュームがちょうどいい。でないと、子どもはやりきることができなかったことに対してストレスを感じて、続かなくなる」

また、継続することを意識して取り入れられているのが「マイラビ」独自のスモールステップ方式です。学習を進めるうえでつまずくことがないように、カリキュラムはステップ数を多く設定されています。

解き方や取り組み方についても、「まねる→解けた」というサイクルが自然に身につくように工夫されています。

「見本を見てまねたら解けた」→「自分で解けたプリントを次回の見本にすると、その次の問題も解けた」そうやって成功体験を重ねることで自信と意欲が生まれ、学習習慣を身につけていくのをねらいとしています。



見本を見ながら、プリントに取り組む。


ひとりでも多くの人の「学びづらさ」を減らすために


学びづらさがある子どもたちが無理なく学習に取り組め、保護者も安心して見守ることができる教材を――という思いから生まれた「マイラビ」。

特性に合わせた学習支援タイプをカスタマイズすることで、ひとりひとりに寄り添った支援内容で学習を進めることができ、ひいては学習習慣が身についていきます。

さらに、「マイラビ」では、メールで医師など専門家に相談できるシステムを整え、保護者の不安や困りごとを軽減できるようサポートしています。

こうしたきめ細やかな対応は、マスを対象とする通信教育教材業界においてかなり特殊で希少といえます。それだけに、スタッフのなかでは不安もあります。

「この伝え方でよかったのか」「もっとわかりやすい方法はないか」サイトの内容や、サンプル資料など更新をし、「マイラビ」が学習に不安をかかえる子どもと保護者にとって救いの一手になるように模索を続けています。








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