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ストーリーの著者は、読者でもあります

建築業界初!離島で建築の地産地消を実現!6次産業に取り組む企業が自ら島の木材を加工し建築する訳。ウェルネスガーデン「千年オリーブテラスfor your wellness」のストーリー

著者: 小豆島ヘルシーランド株式会社

小豆島ヘルシーランド株式会社は、1985年創業。『心と体と絆の健康を追求し、小豆島の発展に寄与する』という社是のもと、香川県の離島・小豆島でオリーブを栽培し化粧品や健康食品の研究開発・製造・販売を行っています。自社農園「オリーヴの森」は、2003年から本格的な森づくりを開始し、現在、6.82haの栽培面積に約9,300本のオリーブを栽培しています。


2023年7月、農園の一角にオリーブで心と体をととのえるウェルネスガーデン「千年オリーブテラスfor your wellness」を、オープンしましたコミュニケーションラウンジ・ショップ・宿泊・スパ・サウナなどを備え、千年生きるオリーブのすごい力を五感で感じるインタラクティブな体験をお愉しみいただけます。


千年オリーブテラス「The GATE LOUNGE」(写真 太田拓実)


お客様をお迎えする建物「The GATE LOUNGE」は、小豆島産の木材・石材を使用し、地産地消で施主自ら建築資材を調達、デジタルファブリケーション技術で加工と、建築業界初(※)の取り組みで建築しました。なぜ、オリーブの化粧品を製造販売する私たちが、自ら建築に携わったのでしょうか。このストーリーでは本プロジェクトの開発経緯について、当社代表取締役社長の柳生敏宏が振り返ります。


※日本国内における「島内で伐り出した木材(地場産材)を施主自ら木材運搬、皮剥、乾燥、塗装、仕口の加工するプロジェクト」として (2023年3月 当社調べ)



代表取締役社長・柳生敏宏

1000年続くオリーブの森をつくる。人の営みや町がありつづける未来を願って

創業者である先代から二代目として事業を引き継いだ私は、オリーブの見識と技術を高めるためイタリアを訪れ、樹齢300年のオリーブが樹海のように広がる森に出会いました。人間の何倍もの年月を生きているオリーブのパワーに圧倒されただけでなく、人智を超えた自然の営みと恵みを、その土地の人々が何世代にもわたり受け継ぎ、 その命のリレーの中にオリーブが介在しているということに深く感動しました。森が続くということは、人々の営みも、町も在り続けているということです。オリーブと人が共存しながら豊かな生活を営んでいる未来の小豆島の姿を強く願いました。そして、私たちが植えているオリーブも何世代先にわたりしっかりと受け継がれる森にしていこうと決意しました。


2011年3月15日、縁あってスペイン・アンダルシア地方から樹齢千年を超えるオリーブの樹(以下、千年大樹)を当社農園に移植しました。 当時より、ここにお客様を迎え入れる施設を作りたいと考えていましたが、森を切り開く開発には抵抗がありました。小高い丘の上に千年大樹が枝葉をのばし、海風が心地よく、鳥のさえずりがする、この心地よい場所を損なうことなく、1000年続くオリーブの森を目指すには、どういった在り方が相応しいのだろうかと、プロジェクトの進め方を模索していました。


「樹齢千年のオリーヴ大樹」

自分たちで丸太の皮をはぎ、乾かし、加工する。オリーヴの森プロジェクトは「建築の民主化」を実践するプロジェクト。


そして、今回のプロジェクトを進めるにあたり、VUILD株式会社(代表取締役CEO 秋吉浩気氏)をパートナーとして迎えました。VUILD社は、建築の⺠主化を掲げ、どんな⼈でも建築に関われる仕組みを理想としている会社です。デジタルファブリケーション技術によって木材を加工し、組み立てる、その過程に私たちも携わることができます。実際に彼らが北海道でデジタル家づくりプラットフォーム「NESTING」で建設している現場にも足を運び、お話を伺う中で彼らとなら建築する過程から一緒に、私たちの目指す持続可能な森づくりに向かって進んでいけると確信しました。


※デジタルファブリケーション:デジタルデータをもとに創造物を制作する技術(総務省)。今回の建物は送信されたデジタルデータをもとに、小豆島にある木工用CNCルーターキット「shopbot」を使って自分たちで木材を加工しました。


木工用CNCルーターキット「shopbot」

オリーブ栽培で使用しているビニールハウスで木材を乾燥

離島である小豆島で木造建築を建てる場合、島外から木材を調達するには建設費が⾼くなるだけでなく、CO2排出量や輸送エネルギーが多くかかります。ですから、可能な限り島の森林資源を活用したいと考えました。小豆島の山には立派なヒノキがあります。しかし、島には木材の乾燥を行う施設がないことから、木を伐採しても機械乾燥をするのに島外に輸送するため、搬送費用がかかります。結果として建築費が高くなることから、安価な輸入の建材に頼らざるをえないという状況があることがわかりました。


1000年続くオリーブの森を作り、小豆島の資源や人々の営みも在り続けるには、島のヒノキを使い循環させることが、未来につながるはずと秋吉さんも同じ思いで、論⽂など調べながら木材を乾燥させる方法を調べてくれました。そして、ビニールハウスで乾燥できるのではないかと提案をいただいたのです。ビニールハウスなら、オリーブ自社のオリーブ栽培用のハウスを活用でき、新たな施設を作ったり機材を導入する必要がありません。こうして、地産地消の建築を実現させる道筋が見えてきました。


オリーブ栽培用のビニールハウスで木材を乾燥


そして、小豆島の森林(大部財産区)から切り出したヒノキの丸太を、当社スタッフ自らが運搬し、樹皮を剥ぎ、デジタルファブリケーション技術で自ら製材・加工して建築に携わるプロジェクトがスタートしました。農園スタッフが中心となり、普段はオリーブ畑を整備するためのトラックで、山から切り出した木材を運び出し、樹皮をはぎ、オリーブ栽培用のビニールハウスで乾燥させることができました。


私たちは、オリーブの木を育て加工し販売する6次産業を行っています。トラックやショベルカーなどの機材を使い、ビニールハウスや、資材を保管する倉庫もある、そういった意味では、自分たちで建築をする環境が備わっていたとも言えます。農園のメンバーは、きっと本当に自分たちで加工した木材で建築ができるのだろうかと半信半疑だったと思います。同じ木を扱うと言っても、木を育てるのと加工するのでは全く異なりますし、戸惑うことも多かったはずです。しかし、島で育った木の恵みを大切に使いたいという思いがあるからこそ、一つ一つの作業に丁寧に取り組んでくれました。


切り出した木材を運ぶ農園スタッフ


塗装作業にはさまざまな部門のスタッフが参加


そして、乾燥した木材は3D木材加工機「ShopBot(ショップボット)」で製材し、主要となる建材を自分たちでつくりだしました。デジタルファブリケーション技術を使っているので、修理が必要になった場合でも、同じデータで⽊を切り出しパーツに組み換えることができます。


「ShopBot」で木材を加工


「オリーヴの森プロジェクト」は、世代を超えて受け継がれるプロジェクトです。私たちが、木材を運び建築するところから参加しているから、壊れたら再び⽊を伐採し、⽪を剥ぎ、乾燥させ、加⼯し⾃分たちの⼿で修理⽤の建材を作ることができる。同じように、室内の什器や備品も、敷地内の砂を使って当社のスタッフが塗装しました。塗装はワークショップ形式で実施し、様々な部門のスタッフが参加しました。定期的に塗り替えたり、メンテナンスが必要ですが、自分たちで作ったから自分たちで直せる、そうやって直しながら使っていきたいと思っています。


室内の塗装

土に還るサステナブル素材 ”NULL” で什器を塗装


また、構造に使った丸太の端材も床材や外観などに使用しています。通常は製材すればするほど歩留まり悪くなり、使えないものが出てきます。丸太を全部使い切ることができれば、歩留まりが100%に近づく。これは、秋吉さんいわく⾰命的なことだそうです。私たちは、自分たちで育てたオリーブの木の恵みを余すところなくお客様に届けしたいと考えています。オリーブの油だけでなく、葉や枝も全てオリーブの恵みを丸ごと生かした商品作りをしています。ですから、私たちにとって素材の恵みを余すことなく活かすことは当たり前のことだと思っています。


ゲートラウンジは、自然の光と⾵が⼊ってくるように設計され、空調に頼らずできるだけエネルギーを使わない形で設計してもらいました。風の心地よいこの場所のよさを生かして、お客様を迎える場所を作りたいという私たちの思いが形になりました。


千年オリーブテラス「The GATE LOUNGE」内観(写真 太田拓実)


多くの方を受け入れ続けるには限界が。目指す方向性を議論した


今回のプロジェクトを進めるにあたり、社内でさまざまな意見がありました。樹齢千年のオリーヴ大樹のあるエリアは、これまで一般公開していたこともあり、たくさんの方が訪れていましたし、施設利用者に限定するクローズドな空間にすることに反対意見もありました。はじめは、私もこの場所に漠然と売店やカフェなどを併設した観光施設を作り、たくさんの方を迎え入れる場所を、と考えていました。けれど、私たちが目指す持続可能な森づくりを考えた時に、今までのように多くの方を迎え入れ続けるには限界があると考えました。日本は観光立国として、これからも観光客の数は増えていくでしょう。すでに、オーバーツーリズムが全国各地で問題になる中で、私たちが目指す方向性はそこにはないと考えました。


そして、コロナ禍に直面し人や企業が集積することで経済性や生産性が高まるというこれまでのシステムが大きく見直される時代がやってきました。 Withコロナという新しい時代において、『開疎化』という言葉と共に小豆島、 地方のもつポテンシャルが注目されるときがきたように思います。また、多くの人々があらためて命や健康について考えるようになったのではないでしょうか。 人々の生き方も働き方も持続可能な社会に向けてこれから大きく変化するはずです。


オリーヴの森


循環型プロジェクトの発信拠点として

そこでこの場所を、宿泊していただいたり、日帰りでもゆったり過ごしていただけるウェルネス施設にしようと考えました。オリーヴの森にある「千年オリーブテラス for your wellness」は、一過性の消費ではなく、帰った後も体験や関係性が続いていく施設を目指しています。日々の喧騒から離れ、ニュートラルな自分に立ち戻っていただけるよう、ゆったりとした時間を過ごしながら、マインドフルネス体験などで心と身体をととのえたり、オリーブにまつわるさまざまな体験によって、千年生きるオリーブの力を取り入れていただける施設です。さらに、この場所を”1000年続くオリーブの森” へ繋がる循環型プロジェクトの発信拠点にしていきたいと考えたことで、今回のプロジェクトの方向性が見えてきました。


宿泊施設「STAY」外観



宿泊施設「STAY」内観


近年、SBNR(Spiritual But Not Religious)といわれる、特定の宗教への信仰を持たないけれど、精神的な豊かさを大切にする人たちが、欧米だけでなく日本でも増加しているそうです。SBNRは、マインドフルネス、リトリート、自然、健康的な食事、多様性、サスティナビリティなど、目に見えない精神的な価値をもたらすものへの関心が高い価値観やライフスタイルとされています。まさに、私たちのお客様の姿と重なります。普段から健康意識を高め、 自分にとって本当に必要なものは何かを見極め、 自分らしく心地よく暮らす。 シンプルだからこそ得られる上質な暮らしを私たちは提案していきたいと考えています。


施設をオープンしてから、樹齢千年のオリーヴ大樹に何度も訪れる社内のスタッフが「あらためて、風や景色が本当に心地よい場所だと気づいた」と言います。新しい建物を建てはしましたが、大きな開発はせず本来そこにあるものの価値を磨くことで、樹齢千年のオリーヴ大樹の生きる力がより輝き、滞在して五感を開放することで感覚がより研ぎ澄まされる場所になったのではないかと思っています。


私たちの主力商品である『ジ・オリーヴオイル』は天然オリーブオイル100%の無添加・無着色・無香料の美容オイル。 発売以来、 「これ1滴だけ」 のシンプルケアを実現してきました。 余計なものを加えず、 自然がもつチカラをそのまま活かし、 磨き上げることを強みとしてきた私たちだからこそできる 「シンプルさの追求」 があると考えています。

『ジ・オリーヴオイル』天然オリーブオイル100%の

無添加・無着色・無香料の美容オイル


今後、この場所には、スパやサウナも開業する予定です。そして、これからも私たちの思いに共感していただけるパートナーを増やし、さまざまな機能を増やすプラットフォームにしていきたいと考えています。








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