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この世界が終わるとしても、映画を作りたい。戸田真琴の半生とそこに差す光。新作映画「さじを投げる/Eat The Sun」クラウドファンディングに至るまで

著者: 株式会社ゴーストイッチ

この世界が終わるとしても、映画を作りたい。戸田真琴の半生とそこに差す光。新作映画「さじを投げる/Eat The Sun」クラウドファンディングに至るまで


映画「永遠が通り過ぎていく」や私小説「そっちにいかないで」を発表した元AV女優の戸田真琴。一度は諦めた創作の道へ帰還し、新たに短編映画の制作を決断。Motion Garellyにてクラウドファンディング、「さじを投げる/Eat The Sun」プロジェクトを立ち上げました。


苦労した子供時代、言葉と想像に支えられた


2019年に制作された初監督作品「永遠が通り過ぎていく」は戸田真琴自身の自伝的要素を詩と映像によって心象風景に翻訳し直すポエティックな作品となり、多くの少女たち、思春期に遺恨を残した人たちの心を攫いました。


その背景には、彼女自身の創作に対する強い渇望が潜んでいました。

埼玉県で子ども時代を過ごした戸田は、カルト宗教の熱心な信徒である母と教育に無関心な父のもとで育ちました。絵を描くことや文章表現が元来得意だったにもかかわらず、家族や周囲の友人からは不思議がられることが多く、徐々に他人と直接的なコミュニケーションを取ることを避けるようになり、代わりに熱中したのが、日記やスマートフォンでの撮影などの個人記録でした。


つらいことがあると、イヤフォンをして、目の前の風景をこの曲のMusic Videoだと思うことにする。そうしてつらい少女時代をやり過ごしているうちに、徐々に「映像」というメディアに強い関心を持つようになりました。映像には、音楽も音も言葉も詩も光も影もすべてがある。そう思った戸田は、美術大学の映像学科へと進学し、実家から逃げるように上京しました。


一度は諦めた映像監督への道。表向きの顔とは真逆の道で、表現者としての可能性がひらけた

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美大に入ったものの、人付き合いが苦手な戸田は劇映画のゼミにも馴染めず、一人でずっと8mmフィルムを撮影していました。その時制作していた、映像詩的作品群が現在も表現のベースになっています。内にこもったまま大学を卒業し、多額の奨学金返済を抱えた戸田は、創作を巡る一切合財を一度諦め、AV女優として働き始めます。しかし、ファン向けのコンテンツとして綴っていたブログの質が評価され、映画にまつわるコラム連載や評論、エッセイなど文字を巡る表現活動機会を数多くもらい、AV女優としての顔に反して、表現者としての評価が上がっていきました。「ユリイカ」や「キネマ旬報」、各映画のパンフレット寄稿をはじめ、二冊のエッセイ本の出版、短編小説や詩の発表などを続けていく中で、ついに2019年、映画監督のチャンスが訪れました。そこで制作されたのが、映画「永遠が通り過ぎていく」でした。


情熱的な感想の数々を受け止め、新作映画制作を決意した

「永遠が通り過ぎていく」はMOOSIC LAB2019招待枠として上映後、2021年、自主配給によってアップリンク吉祥寺や川崎チネチッタ等全国で上映されました。既存のファン層を超え、シネフィル層や若年層の少女たちにも届きはじめ、SNSは情熱的な感想で溢れかえりました。

そこでは、幼少期から言われ続けた「わからない」という言葉を超えた、映像と音と言葉、「映画」だからこそ伝わるものが受け渡されていました。戸田は、映画をつくるという一度は諦めた道のりを、遠回りして再び志そうと決めました。

そして、2023年1月に晴れてセクシー女優業を引退。新作短編映画「さじを投げる/Eat The Sun」の構想が始まりました。


今この時代に、窮屈な世界から、心だけを逃がしたい

「さじを投げる/Eat The Sun」は、ある老人の人生最後の瞬間を描く短編映画です。戸田は、家庭環境に抑圧され「いい子」を演じなければならなかった子ども時代、そして今も社会的な「普通」の規範に苦しむたびに、自由への渇望と、その実現の難しさに思い悩むようになりました。「抑圧と開放」は、前作「永遠が通り過ぎていく」や私小説「そっちにいかないで」、その他作品群でも繰り返し戸田が描いてきたテーマでもあります。

社会的、人間関係的な抑圧を受け、自分自身の選びたいことと逆の選択をし続けて生きてきた老人が、最後の瞬間を、自分がなりたかった姿になって踊り過ごす、そういったイメージを、今この時代に撮りたいものとして思い描いたのが企画の発端でした。

(詳しい経緯やあらすじはMotion Garellyにて公開中※リンク)

https://motion-gallery.net/projects/todamakoto-shortfilm


当企画は、「戸田真琴、カンヌに挑む。」と銘打ち、カンヌ国際映画祭を始め世界各国の映画祭短編部門に応募予定です。また、映画業界のやりがい搾取やハラスメントの起こりやすい環境への意思表示として、「新しい才能がある人が幸せに仕事ができる現場」を実現すべくゆとりのある予算運用を目指して資金集めをしています。国内の短編映画において、目標金額1200万円は決して安い金額ではありませんが、思い描いたスケールの作品を安心・安全な環境下で制作するため相談の末決定しました。また、大きなスポンサーのつかないインディペンテンドなつくりかたをすることによって、より型に囚われない作品が生まれる可能性もあると考えています。これらの理念に少しでも賛同する方々に、ぜひご支援をしていただきたいプロジェクトです。


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発表後の反応

本プロジェクトのリターンでは、戸田真琴監督からの御礼状や世界観を反映させたデジタルパンフレット、完成披露試写会へのご招待のほか、限定VHSやシリアルナンバー付き台本、企業様向けのロゴ掲載やMV・CMへの監督起用権などバラエティに富んだ内容をご用意しています。

プロジェクト開始から数日で達成率は50%を超え、数々の熱い応援メッセージが寄せられました。現在、クラウドファンディング実施日数残り約1ヶ月を迎え、その先に待ち構える撮影まで刻一刻と時期が迫っている最中、改めて戸田監督の思いをみなさんにお伝えできれば幸いです。


生き続ける苦しみの皮膚感覚を表現することが、自分の命の使い道だと信じています(戸田監督より)

ただの子どもだった私が映像表現に出会って、言葉にならないモヤモヤを救われていったことも、ただのAV女優をしていた私の言葉や表現を沢山の人が読んで、その反応に自分の心が本来求めていたものを思い出させられたことも、すべて偶然ではなくて、どこかへ向かっていくための目印だったのだと思います。

この世界には監督を目指している人も現在監督をしている人もびっくりするほどたくさんいて、私の居場所はほんとうにどこかにあるのだろうか?と日々怖くなります。また、「映画」という言葉のあまりの豊かさに、いつも、お前にはいったい何が作れる?と、銃口を向けられているような気持ちにもなります。作ることは恐ろしく、本当はもっとやばいことで、それと同時に、映画を見ることも、本当はもっとやばいことです。

日々、生き続けることについて苦しみが増す社会を生きていると思っています。若い人たちは低賃金と相次ぐ増税により、無謀な夢を見ることも、未来の幸福を描くこともどんどん難しくなっていると皮膚感覚で感じています。そしてもっと下の世代、これからを生きる子どもたちに、この世界を生きていくのは素敵なことだと、どうしても言い切れないような気持ちでいます。そんな今私が作りたいのは、例えばここに今少年がいたとして、その人が、これからもっともっと生きて、思い通りにならずに生きて、本来の自分などどうであったのかも忘れてしまうほどに長い時を生きたあとという、その瞬間の映画です。

プロットを話せば話すほど、何がしたいのかわからないと言われる映画です。しかし、完成させて、観てもらって、あなたの中に何が光ったのかを私はどうしても聴きたいです。それが自分の命の使い道だと勝手に信じてこうして動いています。

ご支援は1000円から可能です。信じることや、期待すること、完成を待つことは、無料でできます。余裕がある方は、すこし多めにお心を分けていただけたらとてもありがたいです。どんな形でもいいので、このプロジェクトに携わって、ほんの少し先の未来を夢見る理由にしていただけたら幸いです。頑張ります。



戸田真琴プロフィール

文筆家・映画監督。「いちばんさみしい人の味方をする」を理念に活動中。映画『永遠が通り過ぎていく』は1年間の自主配給が話題を呼び全国ロードショー。大森靖子『M』、諭吉佳作/men『CHRISTMAS AFTERNOON』などミュージックビデオの監督も務める。

連載にTV Bros.『肯定のフィロソフィー』、KAI-YOU.net『悩みをひらく、映画と、言葉と』、fika(CINRA)『戸田真琴と性を考える』

書籍に、エッセイ集『あなたの孤独は美しい』(竹書房)、『人を心から愛したことがないのだと気づいてしまっても』(角川書店)、私小説『そっちにいかないで』(太田出版)がある。

world's end girlfriend「Resistance & The Blessing」にて詩の提供を行うなど、形式を問わず積極的に文筆活動を行う。


各種リンク

Motion Garelly 「戸田真琴、カンヌに挑む。『さじを投げる/Eat The Sun』制作プロジェクト」

https://motion-gallery.net/projects/todamakoto-shortfilm

映画「永遠が通り過ぎていく」公式HP

https://www.eien-movie.com/

書籍「そっちにいかないで」(太田出版)

https://www.ohtabooks.com/publish/2023/05/25173548.html

戸田真琴 公式HP

https://www.makolin.com/





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