人手不足時代、“選ばれる現場作り”のために。住宅建築の現場で働く「社員大工」に聞く、建築・建設業界の変化と魅力
10月18日は、「木造住宅の日」です。
「2024年問題」を始め、人手不足が多くの業界で問題となるなか、建築・建設業界でも現場の人員確保に向けた取り組みが数多く行われています。
分譲戸建住宅を中心に年間1万棟以上の住宅を供給し続けている一建設は、2014年から大工を含む技能職の正社員化を進めながら、現場での技能・知識習得のための仕組みの整備をはじめ、働きやすく、ライフスタイルを選択しやすい環境作りを行ってきました。高校生を対象にした現場見学会なども積極的に行い、従来の建設・建築業界のイメージを変えていく取り組みを進めています。
今回は、一建設の木造住宅を建築する“社員大工”を紹介すると共に、実際に働いている社員の声をもとに、過去から現在までの働き方の変化、今建築・建設業界で働く魅力を考えていきます。
技能職社員の研修会
技術や働き方の変化に合わせて業界のあり方が変わるなか、“約10年前から”大工の社員化に取り組む
労働人口の低下や高齢化があらゆる“現場”を持つ業界で課題となる中、とりわけその問題が大きい建築・建設業界。その背景にはさまざまなものがあり、各社があらゆる取り組みを進めていますが、その1つとして雇用のあり方の変化、具体的には大工・職人の正社員としての雇用が各社で進んでいます。
分譲戸建住宅を主力事業とし、注文住宅、マンション、リフォーム、リースバック事業なども手掛け、年間1万棟以上の住宅を供給している一建設は、その先駆けとして約10年前となる2014年から大工を含む「技能職」の採用・育成に注力しています。
その背景と課題を、人材開発部 部長の菊地はこう語ります。
一建設株式会社 人材開発部 部長 菊地 修一
「建築業界全体の課題として、大工の育成を担っていた徒弟制度が成り立たなくなったことがあると考えています。以前は個人事業主である、いわゆる“一人親方”が1棟を受け持ち、時間をかけて建てていく中で、弟子を育てて……という仕組みがありました。それが、プレカットなど建築手法の合理化が進むことで、報酬面や働き方に変化が起こり、高齢化も相まって弟子を取らなくなり、従来の技能継承や人材の確保が進まなくなったことが大きいです。」
一建設が、大工をはじめとした「技能職の正社員化」に向けた取り組みを始めた約10年前は、まだまだ業界全体として取り組み自体が非常に少なかった。と菊地は話します。
「我々がいち早く取り組みを始めたきっかけは、都内の高齢化の動向を感じ取ったことにあります。本社があり都内の現場も数多く担当していた我々としては、その後の地方への波及を見据え、進めていきました。当初は社内に育成の仕組みがなかったので、現場を請け負ってくれている大工さんに依頼していましたが、現在は社員が社員を教え、ノウハウの共有やOJTが社内で行えるようになってきました。」
幼い頃からの「ものづくり」への憧れから大工の現場へ、「先駆け」として学び、育成する立場へ
その「教える立場」にまで成長した入社9年目の大工技能課 技能主査の栗原は、「ものづくり」への強い関心から現在の仕事を選んだと言います。
「大工さんは、小さな頃から憧れの存在でした。高校卒業後、そのまま大工を目指そうかと思ったのですが、その当時は就職先がなかなかなく、職業訓練校に進み、技能を身につけていく中で、就職先をいくつか紹介して貰いました。
そこで紹介された企業のうち社員雇用は3社ほどで、それも地方での寮生活が条件だったり、請け負っている住宅に制限があったりする中で、一建設から『社員制を導入したばかり、先駆けにならないか』」と声をかけて頂き、やれることの幅広さや東京赴任という環境の良さにも魅力を感じ、入社を決めました。」
一建設株式会社 生産管理本部 人材開発部 大工技能課 技能主査 栗原 紫唯茄
一建設の育成制度の成熟と共にキャリアを重ねた栗原から見て、現在の教育や受け入れ環境については、入社当初より非常に良くなっていると語ります。
「私の入社時の不安として、訓練校で習った技術がそのまま現場で使えるのだろうか……という思いがありました。実際、現場に出てみると、使う道具から違っていて、現場の中で追いついていくしかなかった形でした。現在は、入社後2週間ほどは研修期間で、ビジネスマナー、各部署での座学・OJTとしっかり教育がなされ、使う道具や環境づくりについても整備がされている印象です。」
現在、社員大工として入社した後輩たちの技能だけでなく、悩み相談などを積極的に受けているなか、気をつけていることがあると言います。
「現代は働くことに対して、さまざまなモチベーションを持っている方がいます。大工というものへの価値観も違いますし、そのスタンスに寄り添ったコミュニケーションを行うことが重要だと思っています。受け身な社員への対応はもちろんですが、やる気はあっても建築工法がシステム化されていることもあり、業務や技能に対する一見した期待値のズレなどが見られる社員もいます。その為、そういった社員に応えてあげられる仕組み作りを進めていきたいと思います。」
仕事と「ライフワーク」を両立できる環境の魅力
職業選択において、「自身のやりたいこと、なりたい姿を実現できるか」という点は重要な要素です。入社4年目で外構工事を担当している水上は、その点に魅力を感じ一建設に入社を決めた一人です。
一建設株式会社 生産管理本部 人材開発部 総合技能課 技能主任 兼
SHINMEIGROUP若潮野球部 副キャプテン 水上 拳希
一建設は、東京都足立区軟式野球連盟1部リーグ所属のSHINMEIGROUP若潮野球部と約10年間に渡り人材交流を続け、オフィシャルスポンサー契約を締結しています。一建設では、高校野球や大学野球に注力してきた選手が、社会人になっても野球を続けられる環境を整備し、正社員として雇用しています。
大学まで強豪校で野球を続けていた水上もその1人で、今シーズンは若潮野球部の副キャプテンとして活躍しています。
「元々志望業界として建築・建設業界を目指していたわけではなく、一建設のことも正直知らなかったです。一建設に入社を決めた理由は、SHINMEIGROUP若潮野球部さんからご紹介を頂き、菊地部長が大学にいらしてくださり、安定して野球を続けられる点と、元々職人が多い家系だったこともあって入社を決めました。入社するまで住宅建築の知識はありませんでしたが、今は責任ある立場として働けていることもあり、仕事も非常に楽しいです。」
基本は毎週日曜日が活動日で、平日は業務後に自己練習、という生活ですが、問題なく両立できていると言います。
「勤務時間は7時~17時(※大工職のみ8時~18時)までで、残業はほとんどありません。仕事をしながら、トレーニングの時間はしっかり確保できています。チームメイトの半分以上が一建設で働いている方で、同じ立場の方がたくさんいるのは心強いですし、仕事上のコミュニケーションにも良い影響が出ている実感があります。実は上司もチームメイトです(笑)。」
今後も、仕事とライフワークとしての野球をしっかり高いレベルで両立していきたいと考えています。
「外構工事の現場では、目に見える成果を感じることで、ものづくりの面白さを日々実感しています。仕事では、“親方”を目指して、今後は管理職に求められるスキルを修得し、野球についても体が動くまで続けていきたいと思っています。」
「達成感がいつも身近にある」女性大工の向上心
「社員大工」の中には女性の社員もいます。平田は2022年の新卒入社で、現場で働くようになってから1年ほどの社員です。
一建設株式会社 生産管理本部 人材開発部 大工技能課 平田 寿々
「私も栗原さんと同じく職業訓練校から入社をしました。小学生の頃から、職人さんの履いている「ニッカポッカ」を履いてみたかったんです(笑)。就職活動をしている際、正社員での求人数が少なかった中で、一建設の求人は非常に魅力的に感じました。」
男性中心の現場が多いなか、当初は不安もあったが、今では充実して働けていると言います。
「現場に出てみないとわからないことは色々とありましたが、その度に先輩社員の方々から丁寧に教えて頂き、現場での戸惑いのようなものは余りありませんでした。一建設の社員以外に多くの方が参加される現場では、コミュニケーションなどに難しさを感じることもありますが、目の前の仕事を綺麗にできた時、いつもより上手くできた時の達成感がいつも身近に存在する喜びは大きいと感じています。」
一建設では女性の技能職での雇用に条件を設けておらず、性別にかかわらず採用を行っています。ただ、「学校の方から『女性でも大丈夫か』という問い合わせがあります。」(菊地)という現状です。
平田は、女性の技能職社員が安心して働くために、現場で働く女性社員が積極的に情報を発信することが必要だと感じています。
「これから現場に女性の技能職が増えていくためには、わざわざ聞きにいかなくても分かるよう、雇用条件や勤務の実態をもっと我々が発信していかなければいけないと考えています。今、私以外にも数人女性の社員大工の方がいますが、もっと増えていって欲しいですね。」
「ものづくり」の楽しさを伝え、それを支える組織とキャリアパスの成熟を進めていきたい
人手不足が危惧されるなか、建築・建設業界で働くことを選んでもらうために、必要だと感じることを現場で働く目線から栗原はこう語ります。
「ものづくりが好きな人にとって、自分達の仕事以外にもさまざまな種類のものづくりを知ることができる非常に良い環境だと思います。また、正社員という安心材料も、非常に大きいと感じていますので、その魅力は伝えていくべきだと思います。その一方で、先ほど話した点と重複しますが、建築工法がどんどんシステム化されているなか、いかに目の前の仕事の面白さや意義を伝えていくかは、一つの課題だと感じています。現場の目線から、その点をきちんと伝えていければと思っています。」
「自分の家を自分で建てたい」という想いで新卒入社し、現場監督、施工管理のキャリアを経て、現職で人材育成や組織のあり方を設計している菊地も、組織として、技術職の社員が向上心を持って働ける仕組みづくりを行うことが、今後に向けて重要なポイントだと考えています。
「今まで明確に設計できていなかった技術職のキャリアパスですが、その構築は、今後、大きなポイントになると思います。約10年経ち、栗原のように指導に回れるスキルを持った人材が増えてきたので、今後は組織化を行い、管理職をきちんと設けるなど、明確なキャリアパスを作っていくことに注力していきたいです。」と菊地は話します。
さまざまな形で産業構造が変化していく現代において、魅力を持った“選ばれる現場”を作り出すために、一建設はその先駆けとして、「技能職の正社員化」をはじめ建築・建設業界で働く魅力を今後も発信し続けてまいります。
「自分がやった仕事が残っている、いつまでも身近に感じられるのがこの業界の魅力です。それを支える環境の整備も進めていきながら、やりがいや面白さをしっかりと伝えていきたいですね。」(菊地)
<技能職社員のある1日のスケジュール>
<今回、登場した社員のプロフィール>
菊地 修一 (きくち しゅういち)
一建設株式会社 生産管理本部
人材開発部 部長
大学を卒業後、1996年4月に一建設株式会社に新卒で入社。
入社後は、建築現場の施工管理を担当。
2004年に幕張工事営業所(現在 千葉工事営業所)の工事長に就任。その後、各工事営業所の工事長を担当した後、2007年7月に東海工事統括部(名古屋市)の工事ブロック長、2011年3月に東関東工事統括部の統括ブロック長に就任。
2012年8月には、工事統括部の副部長を務めると共に人材開発課にて技能職(正社員)の採用と育成制度を整備。
2016年より人材開発部の部長に就任し、現在に至る。
【出身】
埼玉県
【略歴】
1996年4月:一建設株式会社 入社
1996年4月:西新井工事営業所 配属
2004年2月:幕張工事営業所(現在 千葉工事営業所) 工事長に就任
2007年7月:東海工事統括部 工事ブロック長に就任
2011年3月:東関東工事統括部 統括ブロック長に就任
2012年8月:工事統括部 副部長に就任
2016年4月:人材開発部 部長に就任
現在に至る
栗原 紫唯茄 (くりはら しいな)
一建設株式会社 生産管理本部
人材開発部 大工技能課 技能主査
2014年4月に一建設株式会社に新卒で入社。
一建設が大工など技能職の社員制を導入した1期生。 幼い頃から大工という職業に憧れがあり、職業訓練校に在籍中に就職活動をしているなかで、できる業務の幅広さ、就業環境に魅力を感じて一建設を就職先として選択。 入社後は、社員大工として活躍し、2018年に技能主任、2023年4月に後輩の育成を担当する技能主査に就任。 現在は、後輩の育成も担当し、社員大工として現場で活躍している。
【略歴】
2014年4月:一建設株式会社 入社
2014年4月:西新井工事営業所 配属(※社員大工として就業)
2016年6月:人材開発部 大工技能課 配属
2018年4月:人材開発部 大工技能課 技能主任に就任
2023年4月:人材開発部 大工技能課 技能主査に就任
現在に至る
水上 拳希 (みずかみ げんき)
一建設株式会社 生産管理本部
人材開発部 総合技能課 技能主任
大学を卒業後、2020年4月に一建設株式会社に入社。
大学生まで、第一線で野球をプレーしてきたこともあり、社会人になっても野球を続けたいという思いから、一建設がスポンサーを務めるSHINMEIGROUP若潮野球部の山崎代表より一建設を紹介され入社。
入社後は、塀・フェンスなどを整える外構工事を担当。2023年4月に技能主任となり、現場では後輩の指導も行う。
また、休日は若潮野球部で野球を続けており、2023年からは、若潮野球部の副キャプテンに就任している。
【出身】
山梨県
【略歴】
2020年4月:一建設株式会社 入社
2020年4月:人材開発部 総合技能課 配属
2023年4月:人材開発部 総合技能課 技能主任に就任
現在に至る
平田 寿々(ひらた すず)
一建設株式会社 生産管理本部
人材開発部 大工技能課
2022年4月に一建設株式会社に入社。
幼い頃に職人が履いているニッカポッカを履いてみたいと思い大工に興味を持つ。
職業訓練校在籍中に就職活動をしているなかで、正社員として大工ができるなど、就労条件に魅力を感じて一建設を就職先として選択。
入社後は、社員大工として数多くの現場を担当している。
【出身】
佐賀県
【略歴】
2022年4月:一建設株式会社 入社
2022年4月:人材開発部 大工技能課 配属
現在に至る
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