不動産業界に対する使命感。「いえらぶCLOUD」の開発秘話と、25,000社に利用されるまでの道のり
いえらぶGROUPは2023年8月、不動産業界向けバーティカルSaaS「いえらぶCLOUD」「いえらぶBB」の利用社数が25,000社を突破したことを発表しました。
不動産業務を一気通貫でカバーする「いえらぶCLOUD」は2009年にローンチされました。日本経済新聞が「SaaS元年」と称した2018年よりも、約10年も前のことです。
まだSaaSという言葉がない時代から、「いえらぶCLOUD」を中小企業でも導入可能なパッケージシステムとして提供してきた理由を「業界を見れば必然だった」と共同創業者の庭山はいいます。
いえらぶGROUPは、不動産会社出身のメンバーで創業されました。現場発想から生まれたサービスが、25,000社もの不動産会社に利用されるまでの過程を庭山がお話しします。
株式会社いえらぶGROUP 常務取締役 庭山健一
ITの力で不動産業界をもっと楽に。使命感を感じ創業を決意
前職は、新築マンションを手掛けるデベロッパーのIT事業部に在籍していました。
2000年代は、インターネットの普及が急速に広まった時代です。ソフトバンクの孫正義社長がさまざまな企業で「IT事業部」の立ち上げを推進するなど、人々が「IT」を求めるようになりました。そして前職の企業も例にもれず、IT事業部を新設しました。
そのときIT事業部長となったのが、共にいえらぶGROUPを創業した代表の岩名です。彼は私の一つ年下で当時はまだ25歳でしたが、熱意にあふれ、共にする仕事はどれも刺激的でした。
IT事業部に在籍して痛感したのが、いかに不動産業務がアナログかということです。私たちの最初の仕事は、Excelを導入したことでした。今では到底考えられませんが、それだけで「IT化だ!」と盛り上がっていました(笑)。
不動産業界は、お客様の「人生に数回しかない買い物」をサポートする仕事です。一方、扱う情報量ゆえに膨大な事務作業に日々追われているような業界でした。
そのため、もともと不動産業界にはお客様想いの方が多いのに、多忙のあまりコミュニケーション不足になってしまう。そしてお客様に不信感を抱かれるという悪循環があるように思います。
そのような状況を間近で見たので「業界を変えたい」という気持ちが非常に強くなりました。
それを実現できるのがITであると実感し、役員から独立を後押しされたこともあり、いえらぶGROUPを創業しました。
業務支援SaaS「いえらぶCLOUD」で小規模な不動産会社でもデータベースを持てるように
始めにとりかかったのは、IT事業部での経験を活かした不動産会社向けのホームページ制作事業です。多くの会社様がネット集客をできるよう、当時の制作相場の10分の1で提供できるホームページ制作サービスを作り上げました。
今でこそ安価でホームページが作れるサービスはたくさんありますが、当時はまだ珍しく、実績もない状態からのスタートだったので、営業活動にも必死でした。
もちろん苦しい時もありましたが、ここまで全力で取り組めてきたのは、やはりお客様を第一に考えているからです。
クライアントの増加にともない、年末年始に泊まり込みでサーバー移管を行ったこともありました。会社でお雑煮を作って、せめてもの正月気分を味わったのもいい思い出です(笑)。
その後、SaaS事業を立ち上げることになります。
当時は「SaaS」という言葉すらない時代でした。しかし、業界を知ればパッケージシステムの提供に至るのは必然だったと思います。
不動産会社の商材は「情報」です。家や土地そのものではなく、それらの情報が流通し、商品としてユーザーの手元に届いていきます。すなわち不動産会社にとって、本来データベース構築は必要不可欠なものです。
しかし、データベースの構築ができるのは資金力のある大手の不動産会社だけです。少人数で経営している不動産会社には金銭面の負担が大きく、データベース構築は難しいものでした。
そういった観点から業界と真剣に向き合った結果、低コストで業務支援に特化したSaaSを提供すれば、不動産会社の負担を大幅に軽減できるのではないかと考えました。
業務支援SaaS「いえらぶCLOUD」はこのような発想から生まれ、安価なデータベース提供を実現しています。
さらに、お客様からいただくリクエストに応え、週単位でのアップデートを行っています。時流の後押しもあり、業界に貢献できる範囲がどんどん増えていっています。
複雑なシステムも安価で提供でき、かつ柔軟なアップデートが可能なSaaSは、不動産業界の支援に最適な手法でした。
困難な状況でも、真摯に向き合い諦めないことが重要
勢いよく事業が拡大していく一方で、多くの課題や困難にも直面しました。
最も辛かったのは、サーバートラブルが続いた時期です。事業の急拡大にインフラ整備が追いつかず、「いえらぶCLOUDが動かない」「ホームページが映らない」といった事態が立て続けに起こりました。
お客様に多大なご迷惑をおかけしただけでなく、組織的にもボロボロになった時期です。連日徹夜で復旧に臨むエンジニアや、謝罪対応に追われる営業部隊。「この会社は存続できるのか」「もう終わりなんじゃないか」そんなネガティブな雰囲気が社内に漂っていました。
今だから言えますが、私もかなりのプレッシャーに生きた心地がしませんでした(笑)。
それでも代表の岩名とともにメンバーを鼓舞しつつ、私自身もお客様のもとに足を運び続けました。決して諦めず、真摯に向き合い続けた結果、お客様からの信頼を再び取り戻すことができ、社内の雰囲気も好転していきました。
経営者が諦めてしまってはビジネスは成功しないと、身をもって知った経験です。
諦めない限り負けはないので、私たちは勝つまでやり続けます。
約10年前 当時のオフィスの様子
不動産業界の多様なニーズにマッチするバーティカルSaaS
賃貸管理会社と賃貸仲介会社をつなぐ業者間流通システム「いえらぶBB」と「いえらぶCLOUD」を合わせると、現在では25,000社もの不動産会社様に利用いただいています。
「いえらぶCLOUD」を提供し始めたときは意識していませんでしたが、バーティカルSaaSは不動産業界ととても相性がいいと感じています。
なぜなら、不動産業界は独自の慣習が多く、ホリゾンタルSaaSではカバーしきれないからです。
電子契約を例にしてご説明します。
電子契約は、業界によって使い方が異なることは少ないため、クラウドサインやGMOサインのようなホリゾンタルなサービスが広く普及しています。
しかし、不動産業界は違います。賃貸借契約ひとつとっても締結の方法は様々です。入居者と物件オーナーが直接契約をする場合もあれば、間に不動産会社が入る場合もあります。さらに賃貸借契約書とセットで重要事項説明書を取り交わす必要があるなど、とにかく多くの業界特有のルールが存在します。
このような背景から、ホリゾンタルSaaSでは柔軟な対応が難しく、バーティカルSaaSが受け入れられたのだと思います。
実務にフィットしたサービスで不動産業界の未来を切り開く
私たちのコアとなる想いは「不動産会社様の役に立ちたい、業界を良くしたい」というものです。そのため、SaaSの提供にとどまらず総合的な不動産テック関連事業をグループ会社10社で展開しています。
例えば賃貸管理業務を代行するBPOサービス。
SaaSの役割が「定型業務の効率化」だとすれば、BPOの役割は「定型業務からの解放」です。社内から煩雑な作業や電話対応がなくなれば、社員の皆様は、入居者や物件オーナーとのコミュニケーションといったコア業務に集中できます。
社員が人と向き合うコア業務に集中できれば、不動産業界が持たれがちな「情報が不透明でグレーな印象」も払拭でき、業界の価値を上げていくことができる、そう考えています。
もちろん「いえらぶCLOUD」「いえらぶBB」もまだまだ進化の過程にあります。直近では10月にはじまったインボイス制度への対応を行いました。法改正・トレンドをいちはやくキャッチアップしてサービスに反映させることもSaaSの使命です。
これからも不動産会社様の声に耳を傾け、より実務にフィットしたサービスを提供できるよう全社一丸となって邁進していきます。
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