日本リミニストリートが提言する DXを理想論で終わらせないためのIT予算の現実的配分とは
企業ITを取り巻く状況は大きく変わりつつある。クラウドシフトやAI技術の発展、さらには全世界規模の新型コロナウイルスの流行によってオンラインでの経済活動の比率が急速に高まっていることから、企業もこうした状況に対応して自らを変革する必要に迫られている。とはいえ、変革の必要性自体はずいぶん前から繰り返し指摘されているにも関わらず、変われない企業も少なくない。「2025年の崖」を提唱したことで注目された2018年の経済産業省のレポートでも、DXの推進を強く訴える一方で、課題として「古いシステムの維持管理」や「システムサポートの終了」などのレガシーシステムの問題を指摘している。IT予算の大半がレガシー化した基幹システムの維持コストに費やされてしまい、新たな顧客接点の開拓やデータ活用の推進など、DX推進に繋がる取り組みに着手できないという企業が少なくないようだ。
さらに、こうした場合によく見られる間違った対応としてDX推進が目的化してしまい、なんのためにDXを推進するのかが忘れられてしまう例もまま見受けられるという。企業はDXに対してどのように取り組むべきなのか、現実的な対応策を見ていこう。
― デジタルありきではない、真のDXとは
第三者保守という事業分野を開拓した米Rimini Street, Inc.が日本市場に進出した2014年から日本での事業を担っている日本リミニストリート株式会社 代表取締役社長の脇阪 順雄氏は、企業ITシステムの中核となる基幹業務システムを主な対象とするサポートサービスを提供する立場として、国内のさまざまな企業のITシステムのあり方や運用保守/維持管理といった面での課題を熟知している。同氏は現職に就く以前は国内大手SI事業者でシステムエンジニアを務めた後、グローバル最大手のERPベンダーで18年に渡ってプリセールスエンジニア等の立場でユーザー企業のERP導入プロジェクトを支援してきた経験を有しており、こうした経験を踏まえて多くの企業のDX推進の取り組みの問題点を指摘する。
同氏はまず「DXという場合に、デジタルが主語であってはいけない。あくまでもトランスフォーメーション(変革)が主であるべきだ」と言う。現在はDXに関する情報が溢れており、政府のレポートでもDX推進が課題として取り上げられている状況なので「DXやらないと」と思ってしまうのも無理はない。しかし、よく聞く例として経営陣から「DXどうなっている?」と聞かれてIT部門が何かプランを考える、といった取り組みは「出発点が間違っている」と同氏は指摘する。企業として「やりたいこと」があり、それを迅速に実現するためにデジタルの活用を検討する、というのがDXを推進する正しい手順である。経営陣としても、おおきな方向性として「やりたいこと」を明確に示し、その実現手段を現場が考えていくというのが本来のあり方なのは間違いない。
実は、こうした「手段の目的化」は現在のDXブームで初めて起こったことではなく、これまでも何度も繰り返されてきた根深い課題でもある。たとえば、経営管理の中枢を担うシステムであるERPの導入でも同じような状況が見受けられた。ヒト、モノ、カネを精密に管理し、企業活動の現状を正確なデータを踏まえて把握できるERPは近代的な企業経営に不可欠なツールだと言えるが、あくまでもツールであり、ERPを使ってどうするのか、という点が本当の問題である。しかしながら、ERPがブームのようになり、各社が次々と導入している状況にあっては「自社でもとにかくERPを入れないと」ということで多額の予算を投じてERP導入に踏み切り、何年も費やす大規模プロジェクトを実施したものの、今ひとつ効果的に使いこなせなかった、という例は珍しいものではなかった。DXに関しても同様で、本来は変化の激しい現在において企業の構造や事業内容を迅速に変化させて状況に対応していくための手段であるはずが、それ自体が目的化してしまうと「なんのためにDXに取り組んだのか分からない」という状況に陥ってしまい、何の成果も得られなくなってしまう懸念がある。DXを成功させるためには経営陣が明確に目的意識を持つことが大切であり、これまでの現場主導の部門最適の発想から脱し、全体最適化を目指して取り組んでいく必要があると同氏は語る。
― 正しい方針に沿ったDXを成功に導く手法
これからの自社のあり方についてしっかりとしたビジョンを持ち、変革に取り組むという本来のDXへの取り組みが始まったとしても、その先にもさらに課題がある。それは、経産省のレポートでも指摘されていた「古いシステムの維持管理」という問題だ。
現在のIT部門の問題点は、既存システムの維持管理に予算の大半を費やしてしまっていることだ。調査によれば、既存システムの維持管理に企業のIT予算の90%が使われてしまっており、新規プロジェクトに取り組む余裕がないと言われる。既存システムの維持管理にいくら予算を投じても事業の成長はなく、変化の激しい現在では現状維持は停滞ではなく退化だと考えると、この状況を放置していてはいずれ危機的状況に陥ることは明らかだ。こうした状況に陥ってしまう理由として脇阪氏は「経営陣がオプションの存在を知らないことが理由だろう」と指摘する。既存システムの維持管理に要するコストの中でも大きな比重を占めるのがソフトウェア・ベンダーに支払っているサポート費/保守費だが、ここに別の選択肢が存在することがまだ周知されていないという意味だ。
同氏は自動車のメンテナンスを例に、自由な競争市場でさまざまな選択肢が提供されることの意義を強調する。たとえば、新車を購入したユーザーは点検整備の際にも購入した正規ディーラーに持ち込むことが多いだろう。しかし、街中には格安車検などと看板を掲げ、最小限のコストで自動車を維持できるように支援してくれる整備工場も存在する。一方、限られたユーザーが選ぶマニアックな車種に関しては、その車種の専門家として高度な技術力と豊富な知識を備える整備工場も存在する。こうした工場は入手不能になった部品を自作するなどのサポートを行ない、豊富な知識を活かして過剰なコストを掛けずに車両のコンディションを維持してくれるが、相応の対価が必要になる。どれがベストかはユーザーのニーズに応じて選ぶことになるが、重要なのは異なるニーズに対応する異なる選択肢が存在していることだ。
リミニストリートは第三者保守を提供している。イメージとしては、先の自動車のメンテナンスの例で言えば専門店のサービスに近いだろうか。正規ディーラーでは断わられるような高度な作業にも対応してくれる一方、正規ディーラーよりも価格は安く、サービス内容を吟味して選択するユーザーにとっては最優先の選択肢となり得るが、残念ながら新車を買ったら正規ディーラー以外の整備工場では整備できない/正規ディーラーが受け付けてくれなくなったら買い換える以外の手段はない、と思い込んでしまっているユーザーが少なくないのが実情だ。しかし、分かっているユーザーであればよりよい選択を行なうことが出来るのである。
― 優先順位を踏まえた「戦略的先送り」の価値
経産省のレポートで2025年の崖という問題が提起された際に暗黙の前提となっていたのが、大手ベンダーのERPシステムのサポート切れ問題だ。ベンダー側にサポートを打ち切られてしまうとなると、仮にシステムのスペックの観点では新バージョンへのアップグレードを必要としていなかったとしても、ほぼ強制的にアップグレードせざるを得なくなる、と考える企業は多いのではないだろうか。しかし、実はここにも選択肢は存在している。第三者保守を提供するリミニストリートでは、開発元がサポートしなくなったバージョンでも、独自の技術支援体制を背景にサポートし続けることが可能だ。このため、ユーザー企業ではバージョンアップするかしないか、するとしてもいつするのかをベンダー側の都合に合わせるのではなく、自社の状況に応じて主体的に判断できるようになる。
ERPを例として考えれば、基本的な機能はほぼ完成の域にあるため、ユーザー企業としては「旧バージョンのままでも何も不都合はない」ことは珍しくないだろう。とはいえ、ITシステムを取り巻く環境も急速に変化しており、クラウド活用やコンテナアプリケーションの普及と言った状況を考えれば従来型のオンプレミスシステムを未来永劫維持し続けるのは、たとえ第三者保守を活用して大幅なコスト削減を実現したとしても、得策とは限らない。しかし、ERPの新システムへの移行は多額のコストを要する大プロジェクトとなる。そして、投資判断にはタイミングが重要だ。経営陣としては、いずれはERPも新システムに移行する必要があるとしても、それは今現時点で最優先に取り組むべき課題なのか、という点について熟慮する必要がある。
第三者保守の大きなメリットである、ベンダーのサポートが切れた製品のサポートを受けられる点は、一般的には単にバージョンアップのコストを回避して旧バージョンを使い続けるためと捉えられがちだが、DX推進という緊急課題と考え合わせるとまた別の意義が浮かび上がってくる。それは、DX推進に必要な予算を捻出するため、事業競争力の直接の強化に結びつかないシステム投資を先送りにし、さらに既存システムの維持管理コストを最小限に圧縮することでDXに最優先で取り組む体制を作る、ということだ。ともすれば「塩漬け」「延命」といった後ろ向きな文脈で語られがちな第三者保守ではあるが、IT予算の大幅増額が望みにくい現状で迅速な事業改革を実現するための現実的な対応策としては極めて効果的な戦略的な取り組みと言えるのである。
なお、リミニストリートでは新たに「ユニファイドサポート」という取り組みに注力し始めている。従来は特定の製品/特定のバージョンを対象として契約していた同社のサポートサービスだが、クラウドやSaaS、複数のシステムの組み合わせなどで構成されるハイブリッド環境に対して統合的なサポートを提供するというものだ。これによって、従来のオンプレミス中心の「保守契約」から、モダンなハイブリッド・マルチ・クラウド環境を運用するユーザーのニーズに応える体制に進化し、ユーザー企業がDXに取り組む際に必要とされる包括的な支援を提供できるようになる。
DX推進という企業の存亡を掛けた大きなテーマに取り組む際に支援を求めるべき最適なパートナーとは、どのようなサービスを提供する会社なのか。固定観念でなんとなく契約している従来の保守契約は本当にニーズに応えてくれているのか。DX推進を良い機会として、改めて根本部分から再検討してみる必要があるのではないだろうか。
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