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人の数だけ、物語がある

英語の「評価」にかかる時間を減らして授業をもっと楽しく。長野県の語学スクールがAIを使った小学生向け英語パフォーマンステスト「Clara」を開発した経緯とは #開発ストーリー #英語教育 #AI

著者: 株式会社エー・トゥー・ゼット

エー・トゥー・ゼット(AtoZ)は、長野県を中心に、語学スクールの運営や学校への外国語指導助手(ALT:Assistant Language Teacher)派遣、外国人講師の人材紹介などを行っています。「真のグローバル人材の育成」をビジョン掲げ、1981年に岡谷市で祖業の学習塾を立ち上げた当時から現在に至るまで、時代の変化に合わせた事業拡大を続けてきました。

その中心にあるのは、「笑顔でHi‼と言える世界」への想い。コロナ禍や世界情勢が急激に変化する中で、語学学習にとどまらず、異文化を通じたコミュニケーションの大切さを伝え続けています。



そんなエー・トゥー・ゼットが、AIを使った小学生向け英語パフォーマンステスト「Clara」(クララ)の全国展開を2023年8月に発表しました。

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000004.000105387.html


地元の新聞を中心に各メディアで取り上げていただき、さっそく関東地方など信州以外の学校からのお問い合わせをいただいています。

https://www.shinmai.co.jp/news/article/CNTS2023090800219

語学学校がクラウドサービスの開発に挑戦した理由とは

2019年以降、エー・トゥー・ゼットはITやテクノロジーを活用した英語教育をテーマに掲げて、各事業を展開してきました。コロナ禍を経て、その必要性や可能性はますます高まっていると言えます。そんなエー・トゥー・ゼットがEdTechベンチャー企業であるアイード社とのプロジェクトチームを組成した背景、これまで長野県内の小学校で実証実験を重ねていたサービスが全国展開に挑戦するまで成長した要因、そしてその先に見据える英語教育現場の理想の形を、プロジェクトメンバーへのインタビュー形式でお届けします。

今回話を聞いた「Clara」のプロジェクトメンバー

・胡桃澤 良知(エー・トゥー・ゼット 企画・開発・セールス)

・Richard Hernandez(エー・トゥー・ゼット 企画・開発)

・窪田 優希(アイード 企画・開発)


きっかけは2020年の小学校での「英語改革」。スピーキングの評価方法が学校現場の課題に


胡桃沢:

「Clara」開発のきっかけとなったのは、2020年の学習指導要領の変更により、小学校で英語が「教科」になったことです。

この改革により、小学校5,6年生では英語の「評価」が実施されることになりました。これまでの「慣れ親しむ」英語の勉強から、「テストを受けて、正確に話す」ことが求められるように。英語が専門ではない小学校の先生たちにとっては、スピーキングに関する「評価」は難易度が高いケースが多いのです。公平性は保てるのか、テストに時間を割きながら指導改善も必要だがどう考えたら良いのか、そもそもリソースが割けないなど、積み重なる悩みが現場に降りかかっていました。


重ねて、コロナ禍です。私自身も現場の課題をどう解決したらいいのかもやもやした期間もありましたが、「現場の先生たちのサポートを通じて、子どもたちがもっと英語を楽しく身につけられるようにしたい」という想いはより強くなっていきました。

そして、アイードさんとの出会いがありました。



窪田:

アイードはグローバルで1,000社超が導入するPaaS(Platform as a Service)の英語スピーキング評価AI「CHIVOX®️」を展開しています。これまでも都立高校入試の対策テストの採点に「CHIVOX®️」を活用するなど、英語の「評価」分野にテクノロジーで貢献してきましたが、小学校の英語に関する評価は未着手でした。

エー・トゥー・ゼットさんとお話しするなかで、公教育の中でも特に小学校の「話すこと」の評価における採点基準の客観性や公平性の担保、工数、授業改善など、さまざまな現場の課題感がわかりましたし、アイードの仮説の方向性とも一致していました。

さらにスピーキング評価に特化して課題を分析してみると、「スピーキングの評価を人力で均質に行う難しさ」や、「効果の可視化の難しさ」などが挙げられ、現場の先生たちはとても授業改善どころではないのでは、と想像しましたね。

そんな課題感に、技術的にも事業的にも貢献できるのはアイードしかいないという自負もあり、具体的なご提案をさせていただきました。



Richard:

私はエー・トゥー・ゼット勤続16年で、ずっと日本の学校の英語教育現場を見てきました。

その中で課題は結局いつも同じで、「どうやって子どもたちの英語への興味を引き出すか」のアイデアが不足していることなんです。なぜなら、先生たち自身が楽しく英語を話し、学ぶ方法を経験してきていないから。

自分たちがそういった勉強方法を経験していないのだから、子どもたちに興味を持ってもらうやり方もなかなか思いつかないのは当たり前ですよね。先生たちに要因があるわけではなく、ポジティブで楽しい英語教育の全体的な経験不足による課題感が大きいと思います。

そしてここに「評価」の課題が上乗せされました。

テストって、怖いイメージがありませんか?

英語のスピーキングテストを、「間違えないように」「いい点を取れるように」臨むものではなく、ゲーム感覚で楽しめるものに変えていきたいという想いがありました。

苦労した開発の裏側 エンジニアと教育者は言葉が通じない?!


胡桃沢:

開発でもっとも大変であり、こだわったのは、「どの教科書を使っていても共通で対応できるテスト」にするという点です。これが先生たちの負担軽減に役立つ重要な観点だと思います。

国が認める英語の教科書は10社ほどの出版社からそれぞれ数種類出版されていて、地域によってもどの教科書を選ぶかは偏りがあったりします。

もちろん教科書なので共通の学習指導要領に基づいて構成されているのですが、学ぶ順番は任意だったり、細かな内容の差がたくさんあります。

たとえば自己紹介では、「My name is・・・」と教える教科書もあれば、「I am ・・・」や「I’m・・・」などの表現で教える教科書もあります。

そこで「Clara」では、複数の教科書で教えている単語や表現を網羅し、どんな答え方でも目的に沿っていて、シーンに適していれば評価が得られるように設計する必要があると考えました。


Richard:

学校ごとに違う教科書を使っている中で、共通の単元をチェックするテストはどんなものか?と考え、試行錯誤して、どんどん対応する幅を広げていきましたね。

「自分の家族について話してください」「将来なりたいものについて話してください」などの質問に対して、小学生はどんな英語で答えるのかを、幅広く調べて対応しています。たとえば、ご両親と外国に住んでいた経験のある児童がこなれた単語や表現を使った場合、その単語が小学校の教科書に正解だと表記されていないと、「Clara」では不正解という評価になってしまいます。そういったケースにも対応する必要があるので、システムの裏側の英語表現や単語のデータはどんどん増やしていきました。


窪田:

AIによる評価も、正解がない中での試行錯誤を続けました。

「CHIVOX®️」を小学校のパフォーマンステストに応用するのは初めてだったのですが、やはり問題、評価観点などが高校入試や社会人向けのテストとは異なります。

これまでの実績も活かしつつ、ルーブリックの定義から評価の実現方法まで検討を重ね、開発していきましたね。


Richard:

プロジェクト推進では、とにかくエンジニアの皆さんとのやり取りに最初は四苦八苦しました。思考も、言語も全然違うんです。


胡桃沢:

私もずっと教育の場で仕事をしてきたので、今までの業務とはまったく違うフィールドでの仕事でした。

エンジニアの専門用語が私たちは分からず、教育の専門用語(言語活動など)を彼らは知らない。言語の共通化は最初苦労しましたが、お互いに知らない領域の知識を増やそうとコミュニケーションを重ねて、徐々に認識が揃っていきました。


Richard:

いい挑戦だったなと思いますし、学びがたくさんありました。

前提が違っても、目的は共通だったので、数か月もすると慣れて良いチームになっていったと思います。

小学校での実証実験で芽生えたプロダクトへの自信


胡桃沢:

最初の実証実験では、初めてのことなので「あれ?テストの時間短くなるはずだけど説明とか含めるとけっこう長くかかるな」など想定と違うことが起こりました。その都度、「動画でわかりやすく短時間で説明を受けられるようにしよう」など、アップデートの糧を得て改善に繋げることが出来ましたね。


何より子どもたちが楽しんでくれたことが大きな成果でしたね。「今度やったらもっと上手にできるのに!」と、テストを楽しみにしてくれたり。

先生からも、クラスに30名近くいる中で「この児童はBe動詞が苦手」「この児童は声は小さく消極的だが単語力がある」など、児童ひとりひとりの能力の可視化により評価に気づきが生まれたというフィードバックをもらったのが印象的でした。評価の公平性のサポートをAIがしてくれるので、授業改善につながっていく確信が持てましたね。


窪田:

実証実験は現場の小学校にも見に行きました。

この取り組みに快く協力してくれた学校が複数あったのは、エー・トゥー・ゼットさんが普段から積み重ねてきた信頼の証だと思います。現場の協力なくして開発は良くなっていかないですから。

意外だったのはタブレットなどのデバイス操作のリテラシー。大きな問題なく操作ができる児童が大半で、「先生、パワーポイントは保存しないとだめだよ」など先生のサポートができる児童もいることには驚かされました。


Richard:

「QRコードの読み取り方がわからない」「マイクの許可はどこのボタン?」など、開発する大人にとっての当たり前が子どもたちや学校の先生と共通しているわけではないこともわかりました。そういった細かな操作性などは実証実験後に反映を重ねています。

実験に協力してくれた学校に感謝ですね。

子どもたちが楽しくテストできるサービスを作りたい、どんな子どもたちでも使えるものにしたい、という想いに共感してくれて、多大な協力をいただきました。


全国の小学校英語を「楽しく話して、テストも楽しい」に変えたい

窪田:

実証実験を経て、全国の小学校に展開できるレベルに仕上がったと自信を持っています。取り組みは長野県から始まりましたが、全国の小学校共通の課題なので、もっと活用してもらう学校を増やしていきたいですね。

英語教科における「評価」の課題に、実はまだ気づいていない先生も多いと想像しています。「Clara」を活用することで授業改善まで繋げられることを知ってもらいたいですね。


胡桃沢:

評価をもとにした授業改善、先生の工数削減によるALTとのコミュニケーションを通じて、子どもたちの自信や英語への興味関心を促進していきたいです。

初めてのプロダクト開発でしたが、実証実験や現場の反応を見て、全国のニーズに対応できるクオリティに仕上がっていると確信しています。

これからも改善を続けながら、ひとりでも多くの児童に使ってもらえるように邁進していきます。


Richard:

「Clara」を通じて、子どもたちが「今日テストだ、やったー!楽しみ!」という世界にしたいですね。

好きな教科を聞かれたり、楽しかったことを聞かれて「テスト」とこたえられるような世界を作りたいです。

小学校でそうなってしまえば、中学校以降も英語が楽しみになるでしょう?

テストに割く時間を減らして、クラスの状態に最適なティーチングに時間を割けるように、全国の先生たちに寄り添っていきたいです。


■AIを使った小学生向け英語パフォーマンステスト「Clara」について

学習指導要領に則り、「聞く、話す(やり取り,発表)、読む、書く」の4技能5領域のうち、話す技能のやり取りと発表の2領域に関する評価をサポートするパフォーマンステストシステム。

児童各自に割り当てられたID/パスワードで児童はClaraにログインし、目的・場面・状況に応じた各テストとテスト実施の説明動画を選択。説明動画にて、テストの流れや注意点等を確認し、フクロウの「クララ」と一緒に、問題文を聞いて、音声で回答を吹き込みます。

テスト開始から評価までは5~10分程度で完了。

発音・流暢さ・文法など各自の詳細なテスト結果と、ルーブリック評価の確認を通じて、テストの工数削減・効果的な授業改善への取り組みを実現します。


■プロフィール

胡桃澤 良知(株式会社エー・トゥー・ゼット 公教育部門 エリアマネージャー)

長野県松本市出身、2007年から株式会社エー・トゥー・ゼットにて英語指導及び講師トレーニングに従事。幼少期のアメリカ生活を活かし、大学での指導やALTのトレーナーとしても活躍。担任研修では指名を受けるほどの人気講師。





Richard Hernandez(株式会社エー・トゥー・ゼット 公教育部門 教務リーダー)

アメリカカリフォルニア州出身、2007年から株式会社エー・トゥー・ゼットにて英会話教師としてスタート。その後、ALTやトレーナとして活躍。機知に富み、クリエイティブな思考で知られている。多芸多才な彼は、常に新しいアイデアで人々を結びつける方法を模索している。




窪田 優希(アイード株式会社 代表取締役社長)

長野県長野市出身。2019年にアイード株式会社の創業メンバーとして参画し、英語スピーキング評価AI「CHIVOX®︎」の提供を通じた課題解決に従事。2023年に代表取締役就任。教育現場を含む多くの教育関係者の声を直接聞くことを意識し、教育業界の課題解決に挑戦し続けている。




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