1943年創業の「型」メーカーが子育て支援アイテム?小児の採尿を楽しくする「楽々おしっこゾウさん」誕生ストーリー
株式会社高橋型精(山形県山形市)は1943年創業。木型から抜き型、彫刻刃型など「ものづくりに欠かせない型」を作ってきた企業です。大手メーカーからの引き合いが多く、縁の下の力持ち的な存在です。これまで培った独自技術を異なる分野に応用できないかと考え、中空型採便シート「楽流カップワイド」を開発し、全国の大学、研究機関、医療機関をはじめヘルスケアテック企業にも採用頂いています。さらに、三歳児検診の検尿がうまくできず困る親が多いことを知り、小児の採尿を楽しく楽(ラク)にし、トイレトレーニングにもなる「楽々おしっこゾウさん」を開発しました。開発までの経緯から、開発にかける思いやこだわりと商品の魅力をお伝えします。
戦後「木型製造」と「抜型製造」の「二刀流」でコア技術を培ってきた
当社は先代社長が戦時中に木型を作るところから始まります。先代社長は学校卒業後、日立製作所でものづくりに携わるも軍隊招集を受けました。しかし、戦没者の遺骨拝領の命を受け軍隊招集解除となり帰還し、終戦後に木型製造業を始めます。木型製造の傍ら、1952年には現在も当社のコア技術である「抜型製造」を開始します。当時は「二足のわらじ」(今風に言えば「二刀流」)と揶揄されることもあったそうです。先代の「二刀流」を受け継ぎ、現在も「抜型製造」とその型を使用した「抜き加工」の受託生産がメインの事業です。
抜型製造はより高度化した「精密抜型」「彫刻刃型」へ
「抜型製造」は、ダンボール箱や紙器箱を作るための型が始まりとされ、様々なものづくりに活かされています。金型と違い刃先でものを打ち抜くため、薄く柔らかい素材への対応が得意な加工技術です。当社は業界でもいち早く「精密抜型」に着目し特許技術を多く生み出しました。「精密抜型」は、例えばスマートフォンやテレビなどの内側に使用される高機能フィルムなどを高精度に切り抜いくことや、リチウムイオン電池に使われる電極材料をキレイな切断面で打ち抜くなど、現代のものづくりには欠かせない技術です。
また、要求される精度や品質が高い製品向けに「彫刻刃型」も開発しました。これは、焼き入れ調質した鋼材を直接削り出し、一般的なトムソン刃を凌駕する硬度、精度、自由度を持つ抜型です。先代社長から引き継がれた木型の三次元的表現のノウハウが活きています。
抜き加工の受託生産では、これまで述べた抜型を使用し様々な分野で使用される部品を生産しています。中でも「オリジナルカッティング」と銘打つ独自の加工技術は、従来の抜き加工では不可能とされた脆性材料や三次元の加工、成形加工や融着加工などを可能にしました。また、図面1枚から型の作製、試作、検証、量産加工、外観検査、出荷まで一貫生産できる強みから、多くのメーカーの試作開発に携わっています。
「立体成形カッティング」を応用した製品「楽流カップワイド」
オリジナルカッティングの「立体成形カッティング」技術を使用し、小児の採尿を楽しく楽(ラク)にし、トイレトレーニングにもなる「楽々おしっこゾウさん」の前身として、オリジナル採便シート「楽流カップワイド」があります。「楽流カップワイド」は山形県が主催するものづくり勉強会を通じ医療分野における「様々な状態の便(下痢便など)を上手く清潔に採取する方法は無いか」といったニーズを知り、現社長自ら健康診断時の不満の把握に努め開発しました。
当社にとって初めてのヘルスケア製品でした。右も左も分からないところから開発やマーケティングを始め、幾度となく病院や大学、研究機関などへヒアリングを重ね、型を何度も作り直し製品をブラッシュアップしました。その後、「腸内フローラ(腸内細菌叢)」のニーズも高いことが分かり、現在では国内外問わず大学、研究機関、検査機関、ヘルスケアテック企業に販売しています。
経験のなかったヘルスケア領域でも、型作成から加工まで一貫生産ができる強みから、企画・開発・改善をすべて自社内で高速に完結することができたからこそ、本当に求められる製品づくりができたと思います。
尿も採取できる製品への要望から開発に着手するも中断に
「楽流カップワイド」の販売後、「これと同じように流せる採尿シートがあったら良いな」という意見を何度か頂きました。採尿シートに一定のニーズがあることが分かり、「楽流カップワイド」と同じ中空設置型の技法を用い、手を汚さずに採取でき、採取後は流せる製品を開発しました。従来の素材のままでは尿(液体)が透過して採取できないため、素材の選定を一から見直し、一定時間尿を保持できるようにもしました。しかし、尿を保持する性能とトイレに流せる性能は相反するもので、3分間程度尿を保持できて、なおかつトイレに流せるというバランスをとることが非常に難しく試行錯誤を繰り返しました。機能的に理想とする試作品を作っても、「ここまでの製品は不要では」といった意見も多く開発を中断しました。
幼児の検尿にまつわる親御さんの苦労を知り、開発を再開
そんな中、「幼児がオムツからトイレに移行する時期の三歳児健診の採尿は、朝の忙しい時間帯の実施が多く、子育て中のパパママは非常に苦労している」といった意見を聞きしました。特にこの時期はトイレトレーニングとイヤイヤ期が重なることもあり、お子さんによってはトイレに対しネガティブな気持ちを抱いていて、トイレに連れていくだけでも苦労する状況も多いそうです。
そこで製品の形状を、お子さんが喜び、なおかつトイレ設置の際の安定感を考慮してゾウさんのカタチにしました。「普段イヤイヤする子どもが、ゾウさんと一緒にしようと誘うと笑顔でトイレに向かい楽しく採取できた」といった絶賛の声も聞かれ、「楽々おしっこゾウさん」が誕生しました。
販売後も改善を繰り返し、認知を拡大し口コミ高評価。経産省の「ものづくり日本大賞」受賞も
販売後も尿の保持機能や流す際の利便性などをバランス調整。トイレに接着する粘着部分の改善。設置部分が破れてしまうことが無いよう強度アップなど細かな改善を繰り返しています。
また、地元山形県の新聞やテレビ局を中心に取材を頂く機会にも恵まれ、徐々に個人向けの認知が広がり、自治体からもお問合せが入るようになりました。しかし、コロナの感染拡大が続き、多くの自治体で三歳児健診が延期や分散開催といった事態になりました。一方で、当社直営の通販サイトで購入できるよう販路を整備したところ、SNSなどの口コミを通して個人のお客様への認知と評価が広がります。「採尿が劇的にラクになった」「子供が嫌がらず、トイレトレーニングにもつながる」「ラクに楽しく子どもと採尿に臨めた」といった評価も頂けました。
2023年1月には、日本の産業・文化の発展を支え、豊かな国民生活の形成に大きく貢献する製品として経済産業省「第9回ものづくり日本大賞」東北経済産業局長賞を受賞しました。また、8月には札幌市の「こそだてインフォメーション」事業、さいたま市の「父親等の1日保育士体験」などの受賞歴がある、各都道府県でその年最も優れた子育て制度やサービスを表彰する「山形県ベスト育児制度賞」(日本子育て制度機構主催)も受賞しました。主催する日本子育て制度機構は「イクハク」というWebサイトを通じ、国や都道府県、けんぽやNPOなど様々な団体が実施している子育て制度を地域ごとにまとめて分かりやすく伝える活動を実施しています。
また、「楽流カップワイド」の製造の一部は地元山形県の障がい者就労支援施設にお手伝い頂いています。山形県は全国的に見ても就労支援施設における利用者の収入が少なく「楽々おしっこゾウさん」についても今後お手伝い頂く機会を設け、改善の一助になればと考えています。
今後も当社が長年培ってきた技術とヘルスケア製品を通して身近なヘルスケアの課題の解決を推進し、少子高齢化をはじめとした様々な課題解決に貢献できればと考えます。
商品情報
楽々おしっこゾウさん
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