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80代の著者さんもおられます。

新しい再生医薬品を世に出す

著者: スカイファーマ株式会社

スカイファーマ株式会社は東北大学に研究拠点を置く再生医薬品開発ベンチャーです。低分子化合物による脊髄損傷などの治療薬を創出し、安定・安価かつ治療効果が高い新しい時代の再生医薬品を患者の皆様に届けることを目標にしています。


弊社は大学・研究所で30年以上研究してきた成果を世の中に送り出すため、創業者の安藤が2019年に東北の仙台市に創設したベンチャー企業です。これまでに「脊髄損傷」「認知症」「緑内障」「糖尿病」「心筋症」といった疾患に有効な化合物を同定し、ラットからヒトへと導出に向けた道のりを歩んでいます。iPS細胞の誕生以来、再生医療の世界では幹細胞を使った細胞製剤の開発が再生医療研究の主流となっている一方で古典的な低分子化合物は開発が立ち遅れてきた感があります。


私たちは、この低分子化合物こそが次世代の再生医薬の主役になると信じています。これまでの研究で、低分子化合物が幹細胞移植では難しかった機能的な再生を動物にもたらすことを実証しました。その第一報として脊髄損傷での成果論文を海外の主要学術誌に投稿しました。


このストーリーでは、安藤の言葉とともに低分子再生活性化医薬の開発と臨床に向けた想いをお伝えします。



モデル動物との出会い

もともと私は創薬とは縁がなく、学生時代は岡山大学理学部で当時はやりの分子生物学をやっていました。線虫という小さな動物でしたがその過程で偶然ヒトの悪性高熱症の原因となる遺伝子変異の候補を見つけたことで、モデル動物でヒト疾患の治療薬を開発できるかも、とインスピレーションを得たわけです。


サリドマイド薬害との対決とそこで得た教訓

その後東大医学部に助手で任官され、理研、東工大とアカデミア畑を歩んできました。理研ではゼブラフィッシュという小型魚類を使い、紫外線を浴びると低分子化合物が外れて遺伝子が働き始めるという世界初の技術を開発したこともあって、そろそろ疾患と低分子化合物の距離感が私の中で近くなってきたのです。


理研の後東工大に移りましたが、この時にいたラボで取り組んでいたテーマの一つがサリドマイドのターゲット探しでした。私が移った当時にはすでにその候補が分かっていて、それをゼブラフィッシュで証明したい、とリクエストがあったのです。いろいろ工夫し、結果的にうまく行きました。読者の皆さんの中でシニアの方であればサリドマイド薬害をご存知でしょう。妊婦が服用した場合、手足が短くなる等の特徴的な発生障害を持つ子供が生まれる確率が高くなりますが、そのメカニズムは当時は分かっていませんでした。ターゲットの証明ができたとき、魚の胸ヒレが人間の腕のように短くなっていくことを観察し、ああ、やはり動物をモデルとした研究は強いな、と実感しました。それまで数十年もの歴史の間、世界中の研究者が探しても見つからなかったターゲットが見つかったことは当時いたラボの生化学の水準が高かった証左でありますが、それを発生学的に証明できたのは実際に生き物の体の中でアウトプットを見たことが大きかったのだと思います。


低分子化合物で再生医療に挑む

その後別の大学で准教授として独自に研究費を獲得し、一人で再生医薬のスクリーニングを行いました。さすがにそう簡単には見つかりませんが、それでもいくつかの低分子化合物がゼブラフィッシュの胚の神経や網膜、脊髄、心臓、膵臓等の発達を促進することが分かりました。私には一つの直感的な仮説がありました。それは動物が傷ついた組織を再生する際にはかつて胎児だった時に使った形造りのメカニズムを再利用するのではないか?というものです。


そこで考えました。この仮説が正しく、魚で見つかった化合物がネズミなどの哺乳動物の疾患モデルで治療効果を発揮すれば、低分子化合物の再生医薬品が現実味を帯びてきます。当時の私は59歳。大きな決断を迫られました。


大学を辞めて起業へ

欧米では昔から大学発ベンチャーはありましたし、当時の日本にもいくつかの大学からスピンアウトしたベンチャー企業はありました。しかしながら私がいた大学ではそうした導出パイプラインが当時はなく、これから先に行くには身一つで法人化する、つまり起業するのが一番早いと考えました。そもそも創薬という事業には10年という期間と何億というお金が必要です。大学の定年までに到底何かできるとは思えません。そこで知財の帰属を私個人にしてもらう許可を得て大学を辞めました。


大学を辞めてから投資家を探しました。これは本来なら順番が逆で、先立つものを確保して事業計画をしっかり決めて用意周到にスタートすべきものです。今から思えばゾッとすることばかりですが、結果的に仙台のファンドからスタートアップ資金を調達でき仙台を拠点とする再生医薬開発ベンチャーとしてスカイファーマ株式会社が産声を上げました。2019年末のことです。


スタートしたはいいものの

2020年の春に事業開始となりましたが、そこからが大変です。一人会社なので経営が大変なのはもちろん、これから必要な億単位の資金調達が全くうまくいきません。東北地方の新興事業活性化のプロジェクト(TOHOKU GROWTH Accelerator)に参加してピッチしたり(審査員賞をいただきました)、VCアタックをやったりと頑張りましたが、投資家からはいい返事は帰ってきません。「社内チームがない」「基礎研究だからまだ早い」等々。このように出資を受けるマイルストーンに到達するためのお金をどうするか?という大きな窮地に陥りました。考えてみれば当たり前で、数億円スケールの投資を一人会社の、しかも経営に素人の社長が「うちのクスリはスゴイんです!」というだけでポイと出資できるはずもなく、なんか戦い方が違うな、とその頃から思い始めました。


再び大学に

ちょうどその頃、以前一緒に研究したことのある東北大学の中井先生から客員教授のお話をいただき、ありがたくラボに入れさせてもらうことになりました。それまで起業以来研究はしておらず、ずっと資金調達や経営に関することばかりだったので、久しぶりに見る研究室は懐かしく、光り輝いておりました。すでに還暦を超えていましたが、ここから不眠不休の研究三昧の日々が始まりました。まずは追試。東京で見つけた化合物が本当に再生医薬たりえるのか?緊張した実験の日々でしたが、答えはオールグリーン。またスタートアップで出資いただいた東京の投資家からラットの脊髄損傷モデルで治療効果を見ては?と言われ大きなコストを消費してこれも実行しました。


そうこうしているうちにデータが集まり、さらに脊髄損傷ラットが驚くべき改善を見せたこともあって東北大学研究チームとしてとうとう海外主要誌に投稿できました。この論文には生き物の中でダイレクトに薬の効果をスクリーンする「超効率型創薬システム」、安定かつ安価、加えて細胞製剤に匹敵する再生誘導能力を発揮する「低分子再生活性化化合物」そしてこれまで不明だった「ヒトや高等動物で組織再生を実行する遺伝子ネットワークモデル」の3つが紹介されています。


今後の展望

iPS細胞に発した幹細胞による再生医療は未だ日本では疑いようのないトレンドです。一方で海外では低分子化合物による難聴治療薬等、再生医薬としての低分子化合物を事業化するベンチャー企業が複数存在し増加傾向にあります。日本の旗印はいいのですがそれ以外に目がいかないのは問題です。また元本格的研究者(ネイシャーやサイエンス等の一流誌に発表経験あり)が投資もやっている欧米と異なり日本の投資家はサイエンスではその周辺レベルしか知識を持たない方々が多い印象です。創薬は時間が命です。急がねばなりません。それは少しでも多くの患者さんを助けるためとやがて低分子が主流となる時代の波に飲み込まれないためにも必要なことです。また最先端の再生治療の情報を製薬メーカーと患者サイドの両方にも広く知ってもらうためにも学術誌への投稿は必要不可欠だったと思います。


今後の展望ですが、国内外を問わず弊社が保有するシーズを使って積極的な事業化を進めたいと思います。そのためには知財のライセンスアウトや事業提携も含めた柔軟な体制で臨み、本来の目的である「安くよく効く安定な再生医薬」を1日でも早く患者に届けるということの実現のために頑張っていこうと思います。


<関連情報>

スカイファーマ株式会社

◆URL: https://www.sky-pharma.net/

◆開発中の製品:低分子化合物の再生活性化医薬品

◆フェーズ:ラットによる薬効検定(非臨床試験前)

◆ビジョン:従来にない再生医薬を世に送り出すことで地方発のメガファーマを創設したい。また弊社の発展を通して東北地方の経済の活性化に貢献したい。

◆社ロゴのイメージ:青は蒼天を、社名は翼をイメージし、青空に羽ばたく先は無限の未来というメッセージです。




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