桃の産地が販売した赤い桃のリキュール『桃赤(ももか)』。思いがけない効果までもたらした地元の愛される商品の開発ストーリー
岡山新見赤い桃プロジェクトチームはJA晴れの国岡山阿新桃部会を中心にJAや県・新見農業普及指導センター、市などの関係機関によって組織され、岡山県新見市の桃産地の振興を目的に活動しています。令和5年10月14日に地域の赤い桃を活用したリキュール『桃赤(ももか)』を発売しました。(以下URLの記事参照)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000003.000123788.html
ここでは6次化新商品開発に至った背景やプロジェクトチームの取組みを紹介します。
新商品の『桃赤』と関係者
JA晴れの国岡山阿新桃部会は岡山県北部の新見市草間・豊永地域を拠点とした60年近く続く歴史ある桃の生産組合です。生産ピークの昭和56年には150戸を超える生産者によって年間500tを超える桃を出荷していました。しかし、当地域は中山間地域に位置しており、過疎化や高齢化の影響から生産者数や出荷量は減少し続けています。そこで、産地再興を目指すため、令和3年からJA阿新桃部会、JA、新見市、新見農業普及指導センター、県民局で組織される「岡山新見赤い桃プロジェクトチーム」を結成し、活動を開始しました。
桃の開花風景(草間地域)
『桃赤』商品化は職員の一言から始まった
新見市はピオーネや千屋牛、リンドウなどは県下で有名な産地ですが、桃は岡山県南部を中心に産地化が進んでおり、知名度や販売単価が県南産地に比べて低いという課題を抱えていました。一方で、当部会は桃栽培の導入当初から果皮が赤い桃を栽培し、現在でも赤い桃を生産し続ける県内唯一の産地でした。さらに、近年は岡山県で有名な果皮・果肉ともに白い「岡山白桃」の栽培も増加しており、品種によって赤桃と白桃をつくり分ける県内では稀少な特徴を持っています。そこで、プロジェクトチームは赤い桃を活用し、まずは県内の多くの人に新見の桃を知ってもらうことを第一の目標としました。
新見の赤い桃(品種:白鳳)
第一回プロジェクトチーム会議では、知名度の低さや規格外の赤い桃(生果として販売できない桃)の販路の少なさといった課題解決のために、規格外の赤い桃を活用した6次化商品を開発しようと考えました。どんな商品にするか悩んでいたところ、当時のJA営農指導課長から「新見には三光正宗(地元酒造メーカー)がある、コラボしてオール新見産の桃のお酒をつくろう」と提案があり、『桃赤』の商品化に向けた開発がスタートしました。
JA、市、新見農業普及指導センターによるプロジェクトチーム会議
商品開発からネーミングまですべて地元に密着
三光正宗(株)からの協力が得られ、商品試作をスタートさせましたが、どのような商品設計にするかが最初の課題として挙がりました。そこで、消費者を対象としたアンケート調査を実施し、消費者ニーズの把握に取り組みました。調査結果をもとに、新商品の開発目標を『お土産用になる「桃の香り」、「爽やかな甘さ」が感じられるリキュール』に設定し、商品づくりに入りました。試作は三光正宗の杜氏からの指導を受けながら進めていきました。
三光正宗の杜氏による試作指導
リキュールの商品名は、地元に愛される商品になるよう市民を中心としたネーミング公募を実施し、100件を超える応募の中から、『桃赤(ももか)~新見で育った赤桃のお酒』に決定しました。
地元新聞を利用したネーミング募集
大きな反響を得た岡山県内外に向けたPR活動
三光正宗の協力のもと製品化が進み、令和4年10月に開催されたJA収穫感謝祭で『桃赤』を発売することができました。『桃赤』は新見市の地域振興も目的にしていることから、新見市内のJA直売所や新見駅前の新見市観光案内所での限定販売とし、新見市への訪問者を増やすなど一定の経済効果も得られました。
JA収穫感謝祭での桃赤販売(令和4年)
JA直売所での桃赤販売(令和5年)
令和5年10月には令和5年産の桃を利用し、さらに飲みやすくリニューアルした『桃赤』を製造することができ、これらの取組みは継続的なものとなりました。発売に際しては、対面販売イベントの開催、県広報誌やラジオ、新聞での『桃赤』と産地のPR活動を展開し、第一目標である知名度向上のための露出機会を増やすことができました。
令和4年12月に開催した対面販売イベント
また、本年は県外への情報発信にも注力し、PR TIMESを活用した情報発信に取り組み、2回のネットニュース配信によって予想を上回るページビュー数や転載数が達成できました。PR TIMESを活用した情報発信では、従来のPR活動では実感しにくい数値での成果が入手でき、魅力を感じています。7月に新見市草間で開催された「草間もも直売まつり」では、祭りの集客や産地紹介のためにネットニュースを配信したところ、4年ぶりの開催ともあってか、開始1時間半で用意していた桃が完売するという反響もあり、大盛況となりました。
草間もも直売まつり(令和5年)
産地にも思いがけない効果をもたらす
これらの取組による効果は産地にも徐々に表れてきました。新見市や新見農業普及指導センター、JAが共催する就農希望者を対象とした就農準備講座は、ここ数年受講希望者が集まらず、開催できていませんでした。しかし、令和5年には5組6名からの応募があり、7年ぶりに開催でき、うち1名は本格的に出荷を始め、部会に所属することとなりました。
ベテラン農家である部会長から受講者への栽培指導
販売面では、プロジェクトチームの活動によって令和5年の部会の桃単価は過去10年で3番目に高く、部会出荷金額は昨年を大きく上回る結果となり、部会員と関係機関がともに満足できる充実した一年となりました。
これからも多くの方に新見の桃を知ってほしい
新見の桃は歴史と伝統のある地域の特産品です。新見の桃産地を衰退させないためにも、今後もプロジェクトチームを中心とした活動を続けていきます。
スーパーや百貨店で買い物をする際、桃の産地に注目してみてください。そして、岡山県にお立ち寄りの際には、新見の桃をお召し上がりください。もし、桃がない季節であっても、『桃赤』をお土産にしていただければ、ご自宅で新見の桃を味わってください。
新見の赤い桃
桃赤~新見で育った赤桃のお酒
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