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行政も自治体も企業もNPOもみんなで一緒に、NPOの世代交代について考える場を!NPO事業承継サミット2023に込めた想いとは?

著者: 特定非営利活動法人NPOサポートセンター

サミット運営メンバーの集合写真


特定非営利活動法人NPOサポートセンターは、⽇本のNPOの世代交代の実態や事例を知ることができるイベント「NPO事業承継サミット2023」を開催しました。初の対⾯イベント開催に加え、事業承継に取り組むNPOに役立つ情報やサービスを学べるオンラインセッションも用意しました。


NPO法制定から約25年、社会課題解決に取り組む団体の⾼齢化が進んでいます。NPO法⼈は2018年度から減少傾向にあり、解散数も右肩上がりになっています。NPOサポートセンターでは2019年に創業者から⼆代⽬代表・松本へ代わった経験をふまえて、「NPOの世代交代」に注⽬してきました。


今夏には、⽇本初の「NPO代表者⽩書」作成にあたってアンケート調査を⾏いました。NPOの代表者が抱える悩み・現状の課題を分析して発信をすることで、NPOと市⺠活動の持続性につながる制度の実現や、⽀援メニューの開発と提供をめざしています。


今回は、NPOサポートセンター代表理事の松本祐⼀に、NPO事業承継サミット2023を開催した理由や企画する上で大切にしたこと、今後の兆しや可能性について話を聞きました。

NPOサポートセンター代表理事 / 多摩大学経営情報学部教授 松本 祐一

なんとなく話しづらいNPOの事業承継・世代交代のテーマについて、⾃由にポジティブに語り合いたいとの思いからサミット開催へ


──まずは読者の皆さんにNPO事業承継サミット2023の紹介をお願いいたします。


松本 : 元々は3年前の2020年にも今回と同じテーマでサミットを開催しました。ですので今回が2回目です。3年前は動画配信・音声配信のみでの実施でしたが、今回は初めての対面イベントで、その他にも繰り返し視聴可能なオンラインセッションもご用意しています。


NPOの事業承継・世代交代は、継がせる⼈と受け継ぐ⼈、古い世代と若い世代という対⽐的な構図ではありません。私たちの活動や組織の何を変えて何を残すかを、行政も自治体も企業もNPOも、代表もスタッフも寄付者もボランティアも、みんなで、いつでも、どこでも、問い続ける不断のプロセスです。


その第⼀歩として、なんとなく話しづらいこのテーマについて、⾃由にポジティブに語り合いたい。NPO事業承継サミット2023はそんな場です。


──なぜNPO事業承継サミット2023を開催したのでしょうか?


松本 : 内閣府の調査結果(*)によると、「約6割のNPO法人の代表が65歳以上」「約6割が初代の代表」、代表者交代に向けた準備の状況も「約6割が進んでいない」と世代交代があまり進んでいない現状があります。


(*)特定非営利活動法人における世代交代とサービスの継続性への影響に関する調査(平成31年)


私たちNPOサポートセンターは事業支援や経営支援の中間支援団体で、事業承継や世代交代の支援についてはコンサルティング等サービスレベルでも取り組んでいます。しかし事業承継や世代交代がなかなか進んでいかない現状に、これは社会に対して大きく問題提起していかないと間に合わないのではと危機感を持ちました。


前回サミットを開催した2020年当時も問題意識を持ってくださった方はいましたがまだまだ小さな動きでした。そこから数年経った今でもこの現状はなかなか変わっていません。改めてこの事業承継問題を世に問いたいということが、「NPO事業承継サミット2023」を開催した大きな趣旨です。


サミットの最初のコンテンツ「オープニングトーク」の様子

事業継承は個人や組織だけでなく、社会の問題。様々なセクターの視点から考える


──今回のサミットを企画する上で大切にしたことをお聞かせください。


松本 : 「NPOの事業承継について、もっと話しましょう!」と掲げて、NPOの事業承継や世代交代について、みんなで、考えたり話し合ったりできるようにと意識しました。


事業承継や世代交代のテーマって、「個人や組織の問題だよね」という意識がどこかみなさんの中にあると思うんです。しかしその意識のままだと、NPOはいずれ、まるでなだれのようにどんどん減ったり、予算規模の大きい団体や目立っている団体のみが生き残る結果になってしまうのではないかと危惧しています。


これはやはり、個人や組織の問題とだけ捉えるのではなく、社会の問題として捉えて、色々なことに取り組む必要があるのではないかと考えています。


──今回のサミットには様々なセクターの方々にご登壇いただきましたが、キャスティングの背景についてもお話をお伺いできればと思います。


松本 : まず、行政・自治体の方にご登壇いただいたのは、NPOの事業承継や世代交代の問題を自分ごととして一緒に考えていただくことで、これからのNPOとの協働のあり方を考えるヒントになればいいなと考えたからです。


続いて、企業の方にご登壇いただいたのは、最近、非財務的な価値をどうとらえるかという議論が活発になってきていますが、NPOの場合は企業以上にお金では換算できない価値をたくさん持っており、企業セクターの方々はその価値をどのように考えるのかということを知りたかったからです。


最後に、資金提供者の方にご登壇いただいたのは、資金提供者という存在がどのようにNPOの事業承継や世代交代に関われるのかということ自体が、新たなテーマだと考えたからです。


サミットのコンテンツ「スペシャルトーク」の様子

事業承継や世代交代、ソーシャルセクターが漠然と抱えている不安とは


──事業承継や世代交代のテーマについて今まで注目してきて、そして今回のサミット開催も経て、どのようなことがわかってきましたでしょうか?


松本 : 今回、「代表者」という切り口でNPOを見た時に、活動を支えたり、目指すべき方向性を示したり、しんどい時期を踏ん張るところも含めて、団体自体が代表という存在に良くも悪くもかなり依存していることをあらためて感じました。


もしなにかのきっかけで代表がいなくなったり、代表の心が折れたりしたら、その団体の活動自体がなくなってしまうことにも繋がるかもしれません。代表という個人の姿勢や行動によって、多くのステークホルダーが影響を大きく受けてしまう構造になっているのであれば、それは個々の問題ではなく、十分に社会問題だと思います。


また、正直まだ私の中でもはっきりと整理できているわけではないのですが、この事業承継や世代交代のテーマに触れること自体にある種のタブーのようなものがあって、これを放っておくと、今後他の色々な問題と繋がってしまうのではないかとも感じています。


もしかしたらこの事業承継や世代交代というテーマは、なにかソーシャルセクターが漠然と抱えている色々な不安みたいなものを炙り出していくような感じがするんですよね。


──ぜひもう少し詳しくお聞かせください。


松本 : はい。私もまだ漠然としている部分もあるのですが、もう少し詳しく話してみたいと思います。


誤解を恐れず言うと、NPOって「社会課題を解決するために取り組んでいるんだ」ということを、ある意味、とても自分たちに言い聞かせている部分もあると思います。


「世の中にとってこの活動は絶対に必要なんだ」と信じて、逆にそれを信じられなかったら活動も続けられていないはずです。そこまでお金が儲かるわけでもないですし大変なことも多いですが、それでも、「自分たちが今取り組んでいることは社会にとって大事なことだ」とみなさん日々頑張っていらっしゃいます。


ただ一方で、「今やっていることで、本当に問題を解決することできるのだろうか」?「自分たちが今目指しているものって、本当に社会のためになっているんだろうか?」ということも少なからずどこかみなさん抱えながら活動されていて、その不安をスタッフやボランティアの人に伝える機会って、特に代表の方々ってほとんどないと思うんですよね。だって、代表がそんなことを言ってしまったら、スタッフやボランティア、支援者の方々はもっと不安になってしまいますからね。


しかし私たちが、この事業承継や世代交代というテーマを投げかけることで、その不安も口にせざるを得ないというか、場合によってはお互いにとって触れられたくない部分にまで向き合わなければいけなくなります。言い換えれば、事業承継や世代交代というテーマをみなさんと一緒に考えることで、実はそれぞれの存在意義を改めて考え直したりする機会にもなるのではないでしょうか。


サミットの「分科会」の様子、当日は4種類の分科会が実施されました

NPOの事業承継や世代交代というテーマで継続して議論し、アクションを起こしていきたい


──サミットの対面イベントを開催してみて、率直な感想をお聞かせください。


松本 : 対面イベントにはなかなか人が集まらないと言われる中で、100名近くの方々にご参加いただきました。しかもみなさん、NPOの事業承継や世代交代に何かしらの問題意識をお持ちで、自分ごととして考えながらセッションを聞いてくださって、熱量をすごく感じました。各セッションにご登壇くださったみなさんも、共通して、NPOの事業承継や世代交代をポジティブに捉えて語ってくださったのが良かったです。


──NPOの事業承継や世代交代について、どのような兆しや可能性を感じていらっしゃいますか?


松本 : NPOの事業承継や世代交代というテーマが、ソーシャルセクターの今後を考えていく時の切り口として有効であると感じています。また2020年の時よりも世の中的にも、NPOの事業承継や世代交代について議論・対話する準備や環境が整ってきている感じもしています。


「次はいつサミット開催するんですか?」という声もありがたいことにさっそくいただいていますが、やはり継続してこのテーマで取り組んでいく必要があります。また、この事業承継問題をさらに広く伝えていくためにも、できれば我々だけではなく他の団体や行政や企業なども、このテーマで何かアクションを起こしていただけると嬉しいですね。


イベント当日は会場で色々な方々とお話しました。NPOの事業承継や世代交代で苦労した方々はけっこういらっしゃって、「みんなで一緒に話し合いたい」という気持ちもお持ちだと感じました。引き続き、「みんなで一緒に話そう」という雰囲気を大切にしていきたいと思います。


──ありがとうございました。


サミットの最後のコンテンツ、参加者同士による「振り返りワークショップ」の様子

サミットでご一緒した関口さまからいただいたコメント

セイエン 代表理事 関口 宏聡さま


弊会セイエンは政策提言(アドボカシー活動)・制度普及・活動支援の3つの事業に取り組むNPO法人です。NPO法も成立・施行から25周年を迎え、団体としても個人としてもNPOの事業承継に対しては以前から強い問題意識をもっており、細々と事例収集や講演等を続けてきたところにお声がけいただき、二つ返事でご協力させていただきました!


マニアックな内容にもかかわらず、当日会場に全国から100名超にご参加いただき、このテーマへの関心の高さを実感しました。担当した「NPO法人の共同代表制」セッションも盛況で、オンラインの方でも様々な事業承継ストーリーを紹介でき、非常にエポックメイキングなイベントだったと思います。ありがとうございました!


是非、サミットの継続的な開催をお願いしたいです!「NPO代表者白書」の分析も含め、まだまだ調査研究が求められるテーマですし、実際の事業承継への貢献においては、現場NPO・中間支援組織・専門家等のネットワーク形成が重要だと思います。これからも本テーマに関する取組みをリードしていってください。


××


執筆 : Ryota Yasuda

撮影 : 本田恵大撮影事務所




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