仮眠の文化を日本へ!世界初となる“立ち寝”仮眠ボックス「giraffenap」の開発秘話と広葉樹合板株式会社の新たな挑戦
1971年に創業した広葉樹合板株式会社は、『お客様にとって良い商品を提供する』という価値観を大切に、半世紀にわたり合板を取り扱ってきました。新たな価値を創出するために合板加工も早くから手掛け、お客様の声に真摯に耳を傾けながら、空間を演出するオーダーメイドの店舗什器や特殊加工を施した階段材「ラフステップ」など様々な商品を展開しています。
2023年8月、世界初(※)となる立ったまま寝る仮眠ボックス「giraffenap(ジラフナップ)」が誕生しました。これまで世界に存在しなかった「立ち寝」に着目し、仮眠ボックスを開発しようとしたのでしょうか。giraffenap誕生の裏側や、商品にかける思いをお伝えします。
※「世界初」の表記について:2023年11月時点、ステラアソシエ株式会社調べ
睡眠の重要性から仮眠に着目したプロジェクトをスタート
「このプロジェクトは、北洋銀行さんが開催する「知財ビジネスマッチング」に訪問したことがきっかけでスタートしました。大企業に眠っている知的財産を活用し、中小企業やベンチャー企業が商品開発を行う取り組みでオフィス家具の製造販売や空間デザインを手掛けるイトーキさんの話を聞きました。様々なアイディアがありましたが、最後に出てきたのが仮眠ボックス。斬新なアイディアでユニークな商品開発をしてみたいという強い思いが込み上げました。」
そう語るのは、広葉樹合板株式会社代表取締役 山口裕也です。
最初聞いた時は「何それ?」と思ったのが、率直な感想だったという。
もともと広葉樹合板では最新機械を導入して業務効率化を図ったり、師弟制度で職人の技術継承を進める取り組みを続けていました。「少数精鋭でパフォーマンスアップ」をテーマにさらなるパフォーマンスアップを模索していたが、「睡眠」というワードに出会うことになります。
睡眠の専門家に相談したところ、個々のパフォーマンスアップには「睡眠」がかなり重要だと分かり、「仮眠なら手軽に取り入れることができるのでは」とさらに調査を進めることになりました。
その後、イトーキさんとの打ち合わせを経てライセンス契約の調印式を行い、そしてプロジェクトがスタートしました。知財ビジネスマッチングで成約した初プロジェクトだったこと、そして「立ったまま寝る」という独創性から各種メディアで注目を集めます。
しかし、「使ってみたい」という声もある一方で、「せめて横になって寝たい」「そこまでして働かせるのか」など批判的な声も数多く見られました。
難航を極めた仮眠ボックスの開発とポイント
ライセンス契約の調印式後、すぐに仮眠ボックスの開発に着手したが、思い通りにいかないことの連続だった。これまで存在しない商品のため、全てが手探り。試作品を作っては課題が見つかり、また試作品を新しく作り直す…。課題は山積みで仕事が終わっても、かた時も仮眠ボックスのことが頭から離れなかったと最高技術責任者の菊池文貴は語ります。
「この仮眠ボックスを使用した人が怪我をすることは絶対に避けなければいけないので、安全性には注意しました。けれど、安全性を優先すると無難なデザインになり、今度は使ってみたいと思えないと指摘を受けました。」
初期段階では木の格子デザインではなかった
イトーキさんが所有する開放特許「人体収納用構造体及び睡眠用筐体」では、上半身・臀部・すねを固定することで、立位状態で休息や睡眠をとることが可能になると言われています。
ですが、仮眠ボックスを使用すると想定されるのは、老若男女問わず身長や体格もバラバラ。お尻やすね、腕などに体重を分散させ快適な姿勢を維持するには、自分の体型に合わせて高さが調整できる仕組みが必要でした。giraffenapでは頭部とお尻の高さを上下に動かし、最適な高さに調整できる設計となっていますが、"すねを動かさないこと"がポイントだと気づいたのです。常務取締役の野原嘉人はこのように述べています。
「固定する4点のうち、どの部位を上下させれば快適に調整できるかを考えました。
人体の構造上、すねには約4割の体重がかかり、すねが動いてしまうと体重がかかる場所が変わってしまい、からだが安定しません。すねの位置を固定することで、足裏の位置が合わせやすくなり、ボックス内にも入りやすくなりました。」
立ち寝で求められるのは「リラックスできる姿勢」と「身体を固定するホールド力」。
仮眠ボックス内で仮眠した際に、足に体重がかかりすぎると休憩後に足がだるくなってしまいます。また眠りに落ちて力が抜けた瞬間に身体が動いてしまったら、怪我につながりかねないのです…。
すねの位置を固定することにより、身体を支える安定性が向上しました。そして操作性も頭部とお尻の高さ調整のみとシンプルで使い勝手も良くなりました。こうして仮眠ボックスの設計が少しずつ出来上がっていきました。
北海道大学電子科学研究所との共同研究によって得た「立ったまま仮眠」の効果
仮眠ボックスの開発と並行して、立ち寝と仮眠の効果に関する実証実験にも着手しました。社会心理学者ジェームス・マースが提唱した「パワーナップ(積極的仮眠)」は、仕事のパフォーマンス向上に直結する習慣として世界的企業で推奨されており、NASAによって科学的効果も実証されています。
とはいえ、「立ったまま仮眠しても効果を得ることができるのか?」
こればかりは体験してみなければ分かりませんでした。
幸いなことに、立ったまま寝る仮眠ボックスの記事を見て興味を持った北海道大学電子科学研究所の石橋晃教授から連絡をいただき、北海道大学・台湾の国立成功大學と共同で研究することになったのです。北海道大学に仮眠ボックスを持ち込み、仮説を立て、同じ条件下で多くの被験者に協力してもらい、実験を繰り返しました。
被験者は実験開始10分後には入眠し、すぐに睡眠段階2(軽い寝息をたてる程度の睡眠状態)まで到達しました。途中で覚醒することもありましたが、50分以上に渡り睡眠状態を維持することが実証できたのです。
横になって寝た場合は、睡眠段階2に到達した後に、さらに睡眠段階3(名前を呼んでも気付かない程深い眠り)まで進んでしまうのですが、熟睡し過ぎてしまうため、寝起きに頭がぼーっとしてしまうのです。
立ったまま寝た場合には睡眠段階2でキープする時間が長く、熟睡し過ぎることはありません。睡眠ではなく、仕事中の「仮眠」として充分な結果を得ることが出来ました。
多様化する働き方に「仮眠」という文化を定着させたい
仕事中に寝ることはいまだにネガティブなイメージが強いかもしれません。近年では午後の眠気を我慢したまま業務するのではなく、「シエスタ制度」と呼ばれる短時間の睡眠を取り入れる企業も増えてきています。
デジタルツールやIT技術の進化、コロナ禍におけるテレワークの普及もあり、多様性のある働き方が推進されるなど、ワーク・ライフバランスが重視されるようになりました。「タイムパフォーマンス」という言葉も生まれ、適正な労働時間で成果を落とすことなく、より意義ある時間を過ごす風潮が強くなっています。
そうした中で出来上がったgiraffenap(ジラフナップ)。
2023年8月1日に近未来をイメージした「SPACIA(スペーシア)」と森の中をイメージした「FOREST(フォレスト)」の2つのラインナップを発表しました。
SPACIA(スペーシア)
FOREST(フォレスト)
多くの反響をいただき、イベントや展示などのお誘いもあり、皆様に体験してもらえる機会が着実に生まれていきました。
特に、ネスレ日本さんが運営する「ネスカフェ 睡眠カフェ in 原宿」ではいち早くコラボレーションし、「ネスカフェ 睡眠カフェ × ジラフナップ “立ち寝コーヒーナップ”体験席」を開催することになりました。リリースから間を置かず、すぐに体験していただく機会が生まれたのは幸運でした。
「ちょっと仮眠してくるね」という光景が当たり前になるまでがgiraffenapの挑戦
最高技術責任者の菊池は、「コロナ禍が収束に向かっている中で開発していましたが、看護師さんがちょっと休息する時に使ってもらえたらよかった」と語っています。
看護師はもちろん、人のために頑張っている人は世の中に数多くいますが、心身を削りながら頑張っている人も少なくありません。そんな時に一人きりで安らぎる空間でちょっとひと息をつくことで楽になれる人もいるのではないでしょうか。
続いて、常務取締役の野原は自身の経験を踏まえて思いを述べています。
「私自身も仕事中に眠くなってミスが続いたり、集中力が途切れたこともありました。オフィスで働いている人にもそうした経験は誰しもあるのではないでしょうか。そんな時に仮眠できる環境があることで、リフレッシュして、効率を高めていってもらいたいなと思っています。」
最後に代表取締役の山口はこのように語っています。
「日本国内において、仕事中に寝るということが今まだ受け入れがたい環境にあると思うんです。このgiraffenapをきっかけに、眠気を感じた時は素直に受け入れて、堂々と仮眠をとって頭をリフレッシュしてもらう一つのきっかけになって頂ければ幸いと思っております。」
giraffenapの発売日は、2024年1月23日(火)。
製品は完成しましたが、「ちょっと仮眠してくるね」という光景が当たり前になるまで挑戦は続いています。giraffenapが目指す道のりはまだ先にあります。
コンセプト
Sleep Well While Standing
立ったまま最高の休息を
立ったまま寝る仮眠ボックス「giraffenap(ジラフナップ)」
Website:https://g-nap.com
E-mail : info@g-nap.com
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