CO2排出量の実測・見える化を提供し、中堅・中小製造業のCO2排出量削減活動を支援する「GreenConnex」の開発秘話
セレンディップ・ホールディングス株式会社と東邦ガス株式会社は、中堅・中小製造業のカーボンニュートラルに向けた取り組み支援を目的として、CO2排出量と生産実績をリアルタイムで見える化できるサービス「GreenConnex」(グリコネ)を共同開発し、2023年8月29日にリリースしました。
GreenConnexでは、CO2排出量削減の促進に向けて実測データ(1次データ)を取得するために、エネルギーデータと生産実績データを組み合わせることによってCO2排出量と生産実績のリアルタイムでの見える化を実現しました。
さらに、東邦ガスのエネルギーコンサルティングとセレンディップの製造コンサルティングのノウハウを持ち寄り、見える化で得られたデータを活用して、エネルギー使用量と生産性の改善を同時に行っていきます。
このようにCO2削減活動を原価低減活動と結び付けることで、CO2排出量削減が費用対効果のある、企業の競争力強化へ貢献する取り組みとなります。
本ストーリーでは、CO2排出量削減のためのCO2排出量実測データの取得とCO2排出量の見える化、その先の具体的な改善方法の提案にまで繋がるサービスを開発した、セレンディップと東邦ガスの挑戦の軌跡についてお伝えします。
中堅・中小製造業のCO2削減を全力でサポート。セレンディップと東邦ガスによる共同開発サービス「GreenConnex」
GreenConnexは、セレンディップの製造コンサルティングと、東邦ガスのエネルギーコンサルティングの両社の強みを持ち寄り共同開発したサービスです。
カーボンニュートラルを支援する多くのサービスは、CO2排出量の算定とその結果の見える化を提供しています。
一方、GreenConnexではお客さまの「データの取得方法がわからない」「算定方法がわからない」「見えた結果からどう削減して良いかわからない」という声を受けて、測定方法や見える化に加え、そこから得られた結果を活用した改善コンサルティングまで一気通貫でサブスクリプションにて提供しています。
両社の課題感が協業のきっかけ
セレンディップでは、もともと製造現場向けに、原価低減等を目指した生産活動における人や設備のロスの改善を主軸とする製造コンサルティングを提供していました。中には昨今の電気代やガス代といったエネルギー費高騰に悩むお客様も多く、直接的なエネルギー費の低減支援がセレンディップとしての課題となっていました。
一方、東邦ガスでは、製造現場の生産設備で使用しているエネルギーを実測し、見える化を通じて生産現場のエネルギーロスの低減支援を行っていました。エネルギーロスの原因を分析するためには製造データが必要だったため、製造データをいかに取得するかが課題となっていました。
セレンディップの課題はエネルギー費の削減、東邦ガスの課題は製造データの取得。両社の課題が合致したことにより協業がスタートしました。
「GreenConnex」(グリコネ)のデータ取得イメージ
開発中の挑戦と克服
GreenConnexは、製品ごとのCO2排出量を実測できることをコンセプトにし、按分法では達成できない高精度なカーボンフットプリントへの対応が最大の特徴として企画が立ち上がりました。
しかし、カーボンフットプリントに対応する企業の多くは、まだ精度よりもコストを重視しがちな状況となっており、按分法でのカーボンフットプリントで問題無いとされることが多いことがわかりました。
GreenConnexは実測のためのハードウェア(センサー機器類等)や製造データとエネルギーデータを取得/結合するためのサーバが必要です。そのため、按分法と比較してコスト面での優位性を築くのは難しく、お客様の視点では「高精度でカーボンフットプリントができるならそれに越したことはないが、費用をかけてまでやる必要はない」と考えられてしまうことが多くありました。
そのような状況下で、「GreenConnexだからこそ出せるコスト面での強みとは何か?」と考えたときに出た結論が、「CO2排出量の削減=エネルギー費(電気代、ガス代)の削減」でした。
按分法ではエネルギー効率の良かったシーンや悪かったシーンが全体で丸め込まれて見えなくなってしまいますが、GreenConnexは実測だからこそありのままのエネルギー効率を把握することができるため、本来消費する必要のなかった無駄なエネルギーを即座に特定し、将来にわたって発生してしまうはずだったエネルギーロスを最小限に留めることができます。
こうして、GreenConnexは導入にかかる費用を上回るリターンを得られるシステムとして完成しました。
CO2排出量を自社で「見える化」する難しさ。多くの企業にCO2排出削減活動に取り組み、原価低減を実現してもらうためにサービスを開始
多くのCO2排出量の見える化サービスは、見える化の元となるエネルギーデータはお客さま自身が準備します。多くのお客さまの場合、会社や工場全体のエネルギーの使用量もしくは金額データ(活動データ)が元データとなります。そしてそれに認定機関が設定している係数をかけてCO2排出量を算定します。それは一定の仮説に基づいた結果になります。特に金額データを使うと、実際CO2排出量削減のために新しい設備を導入して同じ生産活動をしても、金額(減価償却など)が上がることでCO2排出量が増えているという結果になってしまいます。折角CO2排出量削減のために企業努力をしてもそれが報われない結果となってしまいます。そのためにもCO2排出量の実測データが必要となります。
また、上場企業ではサステナビリティ開示の一環として自社以外のサプライチェーンの上流下流まで含めた「スコープ3」の開示が求められる中で、自社以外の上流下流にあたる中堅・中小企業が情報提供の対象になります。さらにそれらに対し削減目標が設定されます。企業によってはCO2排出量削減を取引条件にしようとする動きもあります。
経営環境が厳しい中で儲けにつながらない投資の優先順位が下がりがちな中堅・中小企業に対し、自社のCO2排出量削減努力が認められ、さらにこの取り組みが原価低減に結びつくということで、積極的にCO2排出量削減活動に取り組んでほしいという思いが、本サービスを実現させました。
生産実績ツール「HiConnex」と改善活動のノウハウを活かしてエネルギーコストを低減
GreenConnexのポイントは「実測」と原価低減活動のきっかけを「見える化」(気づく化)することです。
企業によっては生産工程や生産設備にエネルギー使用量を計測する機器が既に設置されていますが、これでは1日に一工程、一設備で複数製品を生産している多品種少量生産の企業では生産計画や生産実績数などで按分した大まかなCO2排出量を算出することしかできません。製造工程では段取り替えや異常処置などで生産活動が止まっているにも関わらず、スイッチの切り忘れなどで使わなくても良いエネルギーが使われている場合があり、こういったものまでエネルギーの使用量として含まれてしまいます。
そのためにもエネルギーデータだけでは十分ではなく、生産状況が分かるデータが必要だったのです。
そのデータを補ったのがセレンディップが開発していた「HiConnex」(ハイコネックス)という生産実績収集ツールでした。これによりリアルタイムでCO2排出量がわかるようになりました。リアルタイムで分かることによって現場ですぐにムダなエネルギー使用に対して手を打てるようになります。
HiConnexの画面例:
設備(工程)×生産時間軸でリアルタイムにムダなエネルギー使用がわかる
そもそも、このスイッチの消し忘れの原因となっている段取り替えや異常は生産のムダから発生しています。つまり、原価低減のための改善活動のネタなのです。そしてそれに気づいてもらうための見える化が、本質的な課題解決に結びつくということに行きつきました。
見える化にあたっては現場改善に携わってきた経験が生きました。もともとセレンディップでは製造現場の改善コンサルティングであるKaizen Transformation(KX:カイゼン・トランスフォーメーション)を提供してきた中で、製造現場において「いつ、だれが、どんな情報を基に改善活動をしていけばいいのか」というノウハウがありました。
それにエネルギーデータを組み合わせて見える化することで、生産現場における「時間」、「数量」、「コスト」に加え「エネルギー」のムダが見えるようになりました。
この見える化の取り組みを、セレンディップのグループ会社である三井屋工業で繰り返し検証し、他の製造業でも使ってもらえる見える化のツールであるGreenConnexを開発できました。三井屋工業ではGreenConnexで生産とエネルギーの使用状況を見て改善を行い、実際にエネルギーコストの低減効果がでています。
スコープ3開示も予測される中、「CO2排出量削減は原価低減活動」ということを広めていきたい
大手企業では23年3月期の有価証券報告書にサステナビリティ開示の一環としてスコープ2までの開示が始まっており、目標設定と削減結果を含めたスコープ3の開示も時間の問題です。
さらにサステナビリティ開示のロードマップによると26年3月期から実測での開示も盛り込まれるという見解もあります。そのためには様々な企業でCO2排出量取得の仕組みの検討や算出のための体制づくりを始める必要があります。
一方、スコープ3として関与する多くの中堅・中小企業は、コスト、体制面でCO2排出量削減の取り組みには二の足を踏んでいます。
また活動量と係数で算定できると考えていた企業でも、実測しなければ企業努力を正確に開示できないということも徐々に理解されてきていますが、大掛かりな仕組み、人手が必要と認識されています。
こういった中堅・中小企業に対して、CO2排出量削減活動は原価低減活動であること、つまり費用対効果がある活動であることを理解してもらう必要があります。そのためには両社に限らず、エネルギー企業、設備機器関連企業、CN企業などさまざまな企業を巻き込み、スピード感をもって「実測」「CO2排出量削減は原価低減活動」ということを広めていく活動に取り組んでいく必要があると考えています。
「GreenConnex」(グリコネ)
セレンディップ・ホールディングス株式会社
行動者ストーリー詳細へ
PR TIMES STORYトップへ