“あなただけではない、ひとりで悩まないで”と伝えたい。脊髄障害者の重度な排便の悩みに向き合う啓発サイト「スッキリ排便 .jp」開発ストーリー
コロプラストは、1957年に福祉の国デンマークで設立された、医療機器および医療用装具を製造・販売しているメーカーです。「個人的な健康上のニーズをお持ちの方々の生活をより快適にする」を使命とし、健康上に不安を抱えている方々の医療的な課題を解決するだけでなく、その後の暮らしにも目を向け、日々の生活の質を向上させるための製品やサービスを提供しています。コロプラストのサポートを必要とする方々の声に耳を傾けると同時に、その方々が求める医療や情報にたどり着けるよう、医療従事者の声も取り入れながら、常に新しい製品やサービスを提供し続けています。
その一環として、脊髄障害に起因する排便障害に悩む方やそのご家族ならびに一般の方々を対象とした、排便障害とその治療法についての啓発サイト「スッキリ排便.jp(http://sukkirihaiben.jp)」を2022年にリリースしました。
このストーリーでは、本サイトが出来上がるまでの背景を、シニアBMマーケットマネージャーである森山順子がお伝えします。
13人に1人が悩むといわれる排便障害。脊髄障害の方々が重度症状で困っている現状について
便秘や便失禁といった排便障害でお困りの方は、全国で約1,000万人いると言われています。症状の定義や調査方法によって報告される数値は異なりますが、便秘の有症者数450万人*1、便失禁の有症者数は500万人*2とされています。日本人口の約8%、つまり約13人に1人が悩んでいる、身近な病気です。
排便障害にも色々あり、重度の症状で困っている方たちがいます。その中でも特に脊髄障害の方々の多くが排便障害に困っています。
脊髄障害*3とは、何らかの原因による脊髄病変のために、障害部位に応じた特有の症状(脱力や麻痺、感覚障害、排尿排便障害など)が現れる障害です。障害の原因は様々ですが、その中でも事故等の外傷による脊髄損傷の方々、先天性疾患である二分脊椎の方々は排便障害の有症率が高く、その半数以上が悩んでいると報告されています。*4、5
シニアBMマーケットマネージャー 森山 順子
*1 令和1年度の国民生活基礎調査
*2 味村俊樹, 本邦における便失禁診療の実態調査報告―診断と治療の現状―日本大腸肛門病学会雑誌, 65 3 :2012
*4 脊髄障害による難治性排便障害に対する経肛門的洗腸療法(transanal irrigation:TAI)の適応および指導管理に関する指針 2021年11月 第3版 日本脊髄障害医学会
*5 加藤真介, 仙石淳, 乃美昌司, 能登真一. ウェブベース調査による日本での神経因性腸機能障害の実態調査. 日本脊髄障害医学会雑誌. 2017;30(1):46-50.
適切な治療法にたどりつくのには数年かかることも。排便障害の患者が直面する3つの障壁
コロプラストが行った世界的な調査*6では、排便障害の患者が適切な治療法にたどりつくまでには5~6年かかることが示されています。症状に悩んでいるのに改善されない期間が長いことは、患者にとって非常に苦痛です。ではなぜ、こんなにも時間がかかってしまうのでしょうか。
その理由は3つあると考えています。
1)排便障害を病気と認識していないこと
排便方法を人と比較する機会は日常において無いに等しく、何が普通で何がおかしいのか、自身で判断することは非常に困難です。そのため、そもそも治療が必要なこととは思わずに、多くの方が我慢しています。
2)対策・治療法がわからないこと
情報が行き届いておらず、どうしてよいかわからない、わかってもどこに相談すればいいのかわからないことも理由のひとつです。実は、脊髄障害の方を対象とした排便障害の治療として、2018年に経肛門的洗腸療法という治療法が保険適用となりました。この治療法は在宅で取り組めて、排便の自立をサポートする今までになかった治療方法です。ところが、実施できる医療機関が限られているため、情報にたどりつくことが困難であり、どこに相談すればいいのかわからないことが問題になっています。
3)排便管理に不安があること
脊髄障害かつ排便障害にお悩みの方は、他に治療があることがわかったとしても、慣れない方法だと失敗するのではないか、うまくいかないのではないかという不安を持っています。また、人に知られたくない、人と排便の話をしたくないなど羞恥心による心理的な面も影響していると考えています。
*6 Coloplast, Market Study, The impact of bowel dysfunction of patients and HCPs, 2017
排便障害の情報サイト「スッキリ排便.jp」の立ち上げ。正しい情報を患者に届けるためのデザイン戦略
そこで、私たちは「スッキリ排便.jp」(総監修:医療法人社団 健育会 湘南慶育病院 副院長 外科・消化器外科 前田 耕太郎 先生 自治医科大学 外科学講座 消化器一般移植外科学部門 教授 味村 俊樹 先生)を立ち上げました。
排便障害は、公にしづらいデリケートな問題です。だからこそ、知る第一歩として、自身で気軽に検索できるウェブサイトが適しているのではないかと考えたのです。
脊髄障害と排便障害、それぞれ単体では情報をまとめたウェブサイトがありますが、脊髄障害による排便障害に関する情報をまとめているウェブサイトは、実は本サイトしかありません(2024年現在)。
サイト内容を考えるにあたり、まずは、患者が病気を認知し、医療機関で診断・治療を進めていくプロセスである「ペイシェントジャーニー」に基づいて構成を考えました。ペイシェントジャーニーは「認知」「情報収集」「受診・診断」「治療」「フォロー」の大きく5つのステップに分けられます。このサイトの役割としては、前半部分の「認知」と「情報収集」に働きかけ、次のステップである「受診・診断」につながるような仕組み作りを意識しました。
なにより最も重要なことは正しい情報を届けることなので、排便障害治療のエキスパートである湘南慶育病院の前田耕太郎先生、自治医科大学病院の味村俊樹先生に総監修をお願いしました。
サイト作成に一番時間を要したのは、ブランディングです。「排便」というデリケートな内容に対して、羞恥心が払拭され、かつ受け入れやすいイメージを創り上げたいという思いがありました。私個人としてはもっとスタイリッシュでかっこいいイメージで考えていましたが、デザイン案を絞り込んでいき、最終的には医療従事者と社員の投票で現在のサイトイメージに決定しました。脊髄障害の方は小児から大人までの幅広い年代構成であるため、誰もが受け入れやすく、親しみやすさをメインコンセプトにしたデザインです。非常に評判もよく、今ではこちらにして良かったと思っています。
森山と一緒にサイトをチェックする前田先生(左)と味村先生(右)
体験談によるリアルな共感を届けることで、前向きな治療へつなげる
本サイトは、実際に排便障害治療を受けた方の体験談を掲載しています。その目的は、「排便障害でお悩みの方はあなただけではありません」というコンセプトのもと、「共感」をテーマに、様々なバックグラウンドの方々にご協力いただき、どのように日常生活を送っているのか、どのように排便管理しているのかという「リアル」をお届けすることです。
しかしながら、排便障害も脊髄障害も非常にデリケートな問題であるため、排便について、ご自身のご経験をお話しくださる方、ましてや顏を出してインタビューにご協力くださる方がはたして存在するのか?と苦悩しましたし、実際にどのように進めていくことが適切か、一方的な依頼になっていないかなど、我々の在り方としても悩みました。
そんなとき、もともと別のイベントでご協力いただいていたパラアスリートの選手が快く引き受けてくださり、先生方の力もお借りしながら体験談を掲載することができました。当初はアスリートの選手2名と、海外の方の体験談の3名でのスタートでした。今では、「誰かの役に立つことができるのならば」とお引き受けいただいた方々と医療従事者のご協力により、掲載数が増えてきています。
どのお話にも、その方の人生が詰まっており、脊髄障害による排便管理のご苦労と、どのようにその壁を乗り越えていったのか、そしてご協力いただいた皆様に共通している前向きさに、私自身が刺激をいただいています。この前向きさは、新たな治療を試していくという姿勢にもつながっているように思います。
確かに不安はあるかもしれませんが、良くなるかもしれない、まずは試してみようという前向きな思いを、この体験談から感じ取っていただけることを期待しています。
認知を広げることが、排便障害で悩む人を救えると信じて。これからも情報発信を続けたい
現在、スッキリ排便.jpの立ち上げから約1年が経過しておりますが、当初立てていた数値目標を早々に達成し、想像以上に多くの方々からアクセスいただいています。本サイトでは排便障害治療のできる病院を検索できるようになっていますが、施設情報の掲載にご協力くださる病院も増えてきています。掲載している病院からは、「スッキリ排便.jpを見た方からお問い合わせがあったよ」との声もいただいています。少しずつではありますが、排便障害への認知が広まってきていると感じています。
現在は、経肛門的洗腸療法を中心に、脊髄障害の方向けの情報を発信していますが、今後は排便障害に悩む方全般に対象をひろげ、より多くの方々へ疾患啓発を行っていきたいと考えています。
「スッキリ排便.jp」では、排便障害は治療で改善できること、ひとりで悩まないこと、困ったときに相談できる場があることなど、お困りの方々のお気持ちに寄り添いながら、これからもお役に立つ情報を更新していきます。
◆コロプラストグループについて
コロプラストは、1957年に福祉の国デンマークで設立された、医療用装具・治療材料では世界トップクラスのメーカーです。個人的でデリケートな医療状態にある皆さまの生活をより快適にするための製品やサービスを開発しています。製品をお使いくださっている方々の声に耳を傾け、ともに開発を行い、個々のニーズに即した解決方法を見つけ出しています。オストミーケア、コンチネンスケア、ウンドケア&スキンケア、ウロロジーケアの分野において、1万人以上の社員が世界136ヶ国で活動しています。
Coloplast A/S (英語):https://www.coloplast.com/
コロプラスト株式会社:https://www.coloplast.co.jp/
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◆本件に関するお問い合わせ先
スッキリ排便.jpサイト内のお問い合わせフォームよりお願いいたします。
https://www.sukkirihaiben.jp/contact/
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