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<地方銀行×自治体×ベンチャー企業によるデジタル地域通貨プロジェクト>Part2~石川県庁と金沢市役所から出向した二人~地域への想いを形にするまでの活躍と戸惑い

著者: 株式会社北國フィナンシャルホールディングス

2023年10月に珠洲市でスタートした「トチポ(※1)」に続き、2024年3月には石川県全域でデジタル地域通貨サービス「トチカ(※2)」がスタートする。


(※1)行政のポイントをデジタル発行するサービス

(※2)自分の口座から任意の金額をチャージして決済するサービス


本プロジェクトは、2023年1月に始動。現在では、自治体・Digital Platformer 株式会社そして北國銀行の社員など総勢75名ものメンバーがプロジェクトの一翼を担う。しかし、立ち上げ当初のメンバーはたったの4名。その内の2人は、石川県庁職員の宮本と金沢市役所職員の富樫だった。


▼プロジェクトの立ち上げに関するエピソードは下の記事からご覧ください。

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“銀行”独自のルールやノウハウとは縁のない2人だったが、石川県全域でのサービス展開を目前に控える今、プロジェクトの進行には欠かせない存在となった。


(左)石川県庁職員 宮本、(右)金沢市役所職員 富樫


2人がどのような経歴をたどり、どのようにしてプロジェクトに携わったのか。

その軌跡を追った。

異動の辞令は数週間前 ー青天の霹靂ともいえる“民間企業”への出向ー

2023年3月中旬、『4月から北國銀行へ出向を。』と、石川県庁で働く宮本 達矢に辞令が発表された。


これまでも中央省庁への出向を経験した宮本。

県庁職員の外部への出向は1度あるかないかが一般的な中で2度目だった。

突然の事で驚いたが、同時に嬉しさもあったという。


県庁からの出向先に民間企業というのはあまり例がないのですが、いつかチャンスがあれば民間企業で働いてみたいと思っていたんです。当時から、北國銀行は最先端の働き方を実現している会社というイメージを持っていましたし、“地域のために”という想いで働く点は、県で働く職員と共通しているのかなと考えていましたね。



そう語る宮本は、2023年3月まで観光企画課に所属していた。

2008年の入庁後、県庁内で企画課や財政課に所属し、国土交通省の航空局への出向も経験してきた。


時を同じくして北國銀行への出向が決まったのは、金沢市の人事課で働く富樫 宏之だ。


金沢市と北國銀行が連携協定を結んでいることはわかっていましたが、私も前例のない民間企業へ出向することは、正直驚きでした。北國銀行に対する印象としては、入庁当初の税務課所属時代、支店を訪れる機会が度々あったので、デジタル化が進んでいる銀行という印象を持っていましたね。



業務上、北國銀行と関わりを持つ機会があったという富樫。2013年に金沢市に入庁後、税務課や人事課に所属し、テレワーク制度の導入などに携わってきたという。


異なる経歴を持つ2人。今回の出向では、いずれも自ら手を挙げたわけではなく、日ごろの働きぶりが評価されての抜擢だった。


数週間後に出向を控える3月末にも、着任後の詳しい業務内容は知らされていなかった。

富樫は、北國銀行の人材開発部長と面談した際、携わるプロジェクトが“地域通貨”の可能性があると聞かされたが、

Web検索しても情報が出てくるはずもなく、漠然と不安でした。ですが、北國銀行でしかできないことが経験できると感じ、とてもワクワクしました。

と当時を振り返る。


手探りの中進める日々 ー二人の経歴とスキルがプロジェクトを下支えするー

2023年4月、2人は北國銀行のデジタル部の社員として、正式に“デジタル地域通貨プロジェクト”に参画した。


当時、他のプロジェクトメンバーも日々手探りの状態。そのような中でも、4月末には珠洲市・興能信用金庫、そしてDigital Platformer社との共同プロジェクト開始の記者会見が予定されており、慌ただしい日々が続いていた。


着任早々に記者発表に携わることとなった宮本と富樫。


行政においては、詳細が全て細かく決定してから公表するのが当然です。詳しく決まっていないことがある中で記者会見?と、とにかく驚きました。

と宮本。そのスピードの速さに戸惑ったという。


富樫は、

着任当初、目指すべきゴールや大きな指針はあるものの、何から手を付けていいのかという状態でした。宮本さんと私に限らず、とにかく誰に聞いても分からないような状態で(笑)。進めれば進めるほど、次にすべきことがどんどん出てくるような毎日でした。

と苦笑する。


当初、他のプロジェクトメンバーは着任した2人にどのような振る舞いを期待していたのか。


デジタル部長の寺井はこう話す。

正直、“あえて”あまり期待をしすぎないようにしていました。プロジェクトでは預金や資金決済、マネーロンダリングなどの知識が必要ですが、それについては全くの素人と分かっていましたので(笑)。

ですが、お客さま扱いしてもお二人に失礼ですし、しっかりと役割を与えてプロジェクトの中心を担ってもらおうと。働く場所は違っても、我々と同じ志で地元のために働いているお二人ですから、限られた時間でも何かやり遂げてほしいという思いでした。


    デジタル部長 寺井


 “北國銀行で働くことが出来て楽しかったと感じてもらえればそれで十分”と思っていたともいうが、実際に2人が見せた振る舞いは“予想以上”のものだった。


プロジェクトで宮本が担ったのは、珠洲市をはじめとする各自治体とのやり取り、そして広く自治体にサービスを展開するためのルール作りなど。


2024年春からの「トチカ」「トチポ」石川県全域への展開に向けた各自治体への説明に際しては、『石川県庁から来ている宮本です。』と伝えることで、自治体担当者とのやり取りがスムーズになる場面も多かったという。


“県の職員だから”ということだけではなく、宮本が持つ知識や対応力には、宮本の上司である寺井と今津も心強さを感じていた。


何より、ビジネスパーソンとしてのインテグリティが備わっており、考え方や立ち振る舞いが素晴らしい。さまざまな場面で、求める所に必ず先回って動いてくれているのが宮本だと、プロジェクトメンバーは太鼓判を押す。


一方の富樫は着任後半年間、加盟店の利用規約やユーザーの規約、そしてプライバシーポリシーの作成などに携わった。


市役所での人事課時代、定年延長に関する条例改正に関わったことがあり、その時の経験が活きましたね。法律に対する耐性ができていたんだと思います。

と富樫は語る。


プロジェクトメンバーにとっても心強いスキルだったのではないだろうか。

ミーティングの前に自身で論点や問題点を整理し、常に高い生産性でプロジェクトが進捗するように動いていた、とプロジェクトメンバーは評価する。


10月頃からは、デジタル部のデザインチームとFigmaを使ってアプリのデザインを検討するなど、その活躍は幅広い。これまでFigmaを使用したデザインの経験はなかったというが、『プロのデザイナーの方々と一緒に仕事ができるのは、本当に新鮮で面白いと笑顔を見せる。


2人の働きぶりに今津は、

銀行業務の経験や知識がないことはマイナスではなく、それ以上に個々のベーススキルの高さに驚かされることばかりでした。

と振り返る。


    プロジェクトリーダー 今津

働き方の違いにある大きなギャップ ー感じる学びと戸惑いとはー

プロジェクトメンバーとして活躍を見せる2人だが、 職場環境の“違い”をどう感じていたのか。


宮本は、

北國銀行の社内は、とにかく“フラット&アジャイル”が浸透しています。今回のプロジェクトに限らず、社内で動いているプロジェクトの進捗を全社員がTeamsで閲覧できることもそうですし、議論のコメントに社長からのいいね👍マークがつくというのも最初は驚きでした。仕事の進め方が新鮮で、刺激的に感じましたね。

という。


富樫も同様に環境の“違い”を感じていた。

着任当初、オフィスには完全にフリーアドレスが採用されていて、外国の会社みたいだなと(笑)。他部署の人ともスムーズに交流ができますし、コミュニケーションが活発にとれているところに魅力を感じましたね。何より、会議で若手も積極的に発言するのには驚きました。まさに、“心理的安全性”が浸透していることを日々の業務で実感しています。


このように語る2人だが、環境の違いに対する“難しさ”は感じなかったのだろうか。



フラットな組織だからこそ、責任の所在が不明で不安になることがありました。行政は縦割りなので、仕事を振ると期日までに“完璧な状態”で戻ってきます。ですが、北國銀行における今回のプロジェクトでは、数多くのミーティングを重ねて、議論の中で答えを出していくことがほとんどでした。ボールがどこの部署に、部署の中でも誰にあるのか分からないということもしばしば(笑)。そこには少しやりにくさを感じましたね。

と宮本。


同じく富樫は、

Teamsでのコミュニケーションが浸透しているからこその“連携の速さ”や“聞きやすさ”は感じましたが、オープンなチャネルではなくチャットで確認作業をする際は、情報の”確からしさ”に疑問を感じることがたびたびありました。ですが、やはり議論がかなりのスピードで進んでいく点や、そのオープン具合はとても勉強になりました

と話す。


同じ“公務員”の立場として北國銀行に着任した2人。

戸惑いを持つ場面で互いに共感ができたことが、安心につながったという。



宮本さんとは、公務員という土壌が共通しているので、プロジェクトの進め方などに違和感を持ったときは素直にその気持ちを共有することができました。答え合わせというと大げさですが、そんな感覚でしたね。

と富樫。


宮本も、

同じ公務員と言っても、これまでにお互いが携わってきた業務は異なるので、共感だけでなく学びも多かったです。

と振り返る。


戸惑いや迷いを感じながらも、それ以上に前向きかつ主体的にプロジェクトに携わった2人。


『ここまで活躍していただけるとは思っていなかった。』と今津が語るほど、プロジェクトに欠かせない役割を果たした。

石川県のキャッシュレス決済比率100%に向けて ープロジェクトが目指す未来に感じることー

2023年10月の「珠洲トチポ」リリースを終え、2024年春のトチカ浸透に向けて動きを進めている現在。

デジタル地域通貨サービスとプロジェクト全体の“魅力”をどう感じているのか、2人に聞いた。


まずは、北國銀行という地元の企業がサービスの構築・運用を行うという点に、非常に安心感があると思います。サービス自体も地域内でお金が循環する仕組みになっていますし、早く地域に浸透している様子を目にしたいと率直に思います。ただし、浸透させていくためには、ユーザーがサービスの利便性を真に理解できるようなプロモーションがまだまだ足りていないとも感じています。

と宮本。


加えて、

プロジェクトを通じ、北國銀行が“本気”で地域の総合会社として、地域のために活動しているということを痛感しました。

と話し、石川県庁へ戻った後の業務に活かしたいと意気込む。


富樫は、プロジェクト参画当時を振り返りながら、サービスの浸透に向けた想いを語る。

最初にプロジェクトについて聞いたときは、PayPayなど多くの決済サービスがあるのに、本当に必要なのだろうか?と思いました。その後サービスの本質を理解していく中で、地域で経済循環できるって良い!と思いましたし、今は自信をもってサービスの魅力が語れます。


また、市役所職員として感じるサービスの展望については、

各自治体の職員が、本サービスの機能を理解し、日々検討している施策にいかに活用できるかを考えていく必要があると思います。

と話す。


2023年4月からの約1年間、プロジェクトの中心を担った宮本と富樫は、今春出向を終える。サービスのリリースがゴールではなく、ユーザーや自治体の声を取り入れながら、より地域に愛される決済サービスへと成長させることが、残されたプロジェクトメンバーに求められる。




本記事のPart3では、トチツーカアプリやWebサイト製作を牽引したデザイナー柴田(2023年2月キャリア採用)の想いに迫る。







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