なぜ、食肉メーカーが代替肉を発売するのか。高かったハードル、担当者の逆境とは
今年の3月に発売を開始した大豆ミート「まるでお肉!」。順調な滑り出しのこの商品、9月に低コレステロールへリニューアルを控えている。
発売後好調な理由と、なぜリニューアルをするのか、どんな背景や想いで発売までこぎつけたのかの軌跡を追いました。今話題の大豆ミートで作った商品。おいしさの秘密は?本当にお肉のような食感なの?
同商品の企画開発を担当されたマーケティング部の弥冨さんにお話を伺います。
担当者プロフィール
弥冨紀子さん
2005年に伊藤ハム株式会社に入社
入社後は九州地区で営業をしたのちに、マーケティング部にてギフトや調理加工食品などを担当。現在は新規市場の商品企画などにたずさわっている。
―食肉メーカーの伊藤ハムが、なぜ代替肉を?
豊かな食生活の実現に貢献したい
世界的な人口の増加に伴って食肉需要が増え、将来的な食肉価格の高騰と供給不足の問題が懸念されています。また近年の消費者意識の多様化への細かな対応の必要性は言うまでもありません。
国内でも大豆などの植物を原料に使った代替肉商品の展開が広がっており、その中で当社は、たんぱく質摂取の選択肢として大豆ミートを加えることで、選ぶ楽しみをお客様に提供し、豊かな食生活の実現に貢献していきたいと考えています。将来的には、大豆ミートが肉・魚に次ぐ第3のたんぱく質摂取の選択肢として認知され、生活の一部となっていくように市場を育成していきたいですね。
フレキシタリアンの存在に注目
代替肉の商品は、ヴィーガンやベジタリアンの方をメインターゲットと考えがちですが、多様化するライフスタイルの中で近年出てきた、フレキシブルな菜食主義である「フレキシタリアン」の存在に着目しています。このストイックになり過ぎないフレキシブルな考え方は、飽食と呼ばれる日本人の食生活にもマッチするとともに、ターゲットとなる方のキャパシティーも大きいと考えていますね。
そのような方々の日々の食生活におけるたんぱく質摂取の選択肢として、食べ応えのある植物性たんぱく質という新しい価値を「まるでお肉!」シリーズで提供していきたいと思っています。
―どのような商品ですか
他社にはないフライ系の商品を軸に8ラインアップ。選ぶ楽しみがあります
大豆ミート「まるでお肉!」シリーズは8品※のラインアップで、2020年3月に発売をしました。発売して販売重量・納入軒数ともに順調に推移しています。話題性などでSNSやメディア上でも大豆ミートについて多数取り上げていただいており、他社にはない加熱フライ済み商品(やわらかカツ、ハムカツ、メンチカツ)の取り扱いや、商品のおいしさについてお客様よりご評価をいただいています。
※ウインナータイプは8月末で終売です
―会社として初めての商品カテゴリーですが、どうやって発売にこぎつけたんですか?
発売までは苦労の連続。代替肉ってどんなもの?から始まりました
発売まで、苦労の連続でした。大豆ミート関連の加工品が世の中に出回っておらず、代替肉を取り扱っているレストラン探しや海外の代替肉商品を取り寄せなど、「代替肉とはこんなものだ」となる判断材料・商品探し自体も難航しました。ただ、この商品を世に送り出すことは食肉メーカーとしてもチャレンジではありましたが、今後当社がより成長するためにも、お客様が求めているニーズにお応えしたいという思いでしたので、インタビュー調査や会場をおさえてのアンケート調査など、発売に至るまで消費者調査にも時間をかけました。
おいしさには妥協せず生まれた自信作です
開発段階から絶対に「おいしさ」については妥協しないようにしました。それは、初めて大豆ミートを食べたお客様にも「お肉と変わらないくらいおいしい」と思っていただけないことには市場が育たないと考えたからです。「おいしさ」を絶対条件に試作を進め、それぞれの商品特長をしっかり出すために、さまざまな形態の大豆たんぱくをおりまぜながら、お肉のような噛み応えを感じることができる「食感」、長年培ってきた肉への味付けを応用した「味」、大豆特有の香りの際立ちを抑え、大豆と相性の良い香辛料を使って大豆ミートの良さを引き立てた「香り」を実現している自信作です。
実は、伊藤ハムは大豆たん白の加工技術ノウハウがありました
私たち伊藤ハムは長年、食肉加工品を製造し、蓄積してきたノウハウの中に、原材料の一部として使用してきた大豆たん白の加工技術がありました。それが強みだと考えています。
ただ、大豆たん白を主原料とした商品の開発は今回が初めての試みだったため、試行錯誤を重ねながら発売に至るまで何度も改良を行いました。
―発売半年でリニューアル。気合が感じられますね
おいしいのは当たり前。それだけではない、健康に対する配慮から低コレステロールへ
現行ラインアップの開発コンセプトとしては、第3のたんぱく質の選択肢としての大豆ミートと、より多くの人に広く楽しんでいただくために「おいしい」ことを目指してきました。実際当社が実施した大豆ミート関連商品の消費者調査の中でも良質な植物性たんぱく質を手軽においしく食べられるのが良い、といったお声をいただいています。
一方、なんとなく身体に良さそう、ヘルシーそうといった健康面へのご期待の声もいただいていました。そのため、お肉と変わらない食感・味わい・香りそのままに、健康に対する配慮へのご期待にお応えして、低コレステロールという今回のリニューアルに取り組みました。
相反することを両立させる。その高いハードルに挑戦
今回のリニューアルにあたり、食感・風味を大きく変えずに「まるでお肉!」シリーズに使用している植物油脂の量と種類の見直しを行ったこと、つまり相反することの両立が、一番ハードルが高かったです。
また、テーブルサンプルの社内チェック、外部機関でのコレステロール値などの分析、さらにロット生産品での味のすり合わせ、外部機関での再分析と、最終規格決定するまでにクリアしないといけない関門が多く、低コレステロールが謳える規格が無事発売できるのか常にドキドキしていました。
チャレンジし続け、念願の低コレステロールを達成
3月に発売した当初も、健康機軸の付加価値を付けたいと考えていましたが、おいしさとの両立から、低コレステロールについてはハードルが高く断念せざるを得ませんでした。しかし、大豆ミートの商品が多く市場に登場していることを鑑みても付加価値は大切だと思い、継続して商品開発部署をはじめ、関連するたくさんの部署の方々商品開発部とともにチャレンジし続けた結果なので、とても嬉しく、この商品をもっと多くのお客様に召し上がっていただきたいと、強く願っています。
―今後の展望は
お客様からの指名を目指します
「まるでお肉!」シリーズを大豆ミートならではの健康要素商品とお肉のようなおいしさを両立した商品として、お客様に指名買いしていただけるような商品に育てていきたいと思っています。
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