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IT未経験人材を育成し、“事業を後押しするセキュリティ”の実現を目指す―リスキリング人材受け入れの裏側

著者: パーソルホールディングス株式会社


パーソルグループでは中期経営計画2026において、「“はたらくWell-being”創造カンパニー」を目指すための事業成長のエンジンに「人的資本」を掲げています。中でも重要指標となっているテクノロジー人材獲得に向け、外部からの採用はもちろん、グループ内でIT未経験者を中心に希望者を募り、独自のプログラムを通じてテクノロジー人材を育成していくリスキリングの取り組みを2022年度より開始しています。


今回は、パーソルグループ独自のリスキリングプログラムの受け入れ先となったパーソルホールディングス グループIT本部 情報セキュリティ部 部長の持田(もちだ)と、情報セキュリティ部・ITガバナンス部を兼務する郭(かく)に、リスキリングによってテクノロジー人材を獲得していくに至った背景や、リスキリング人材を受け入れる際の工夫や苦労を聞きました。

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「セキュリティ人材育成プログラム」概要

過去の職務経験を問わず半年間業務から離れ学習に専念することができ、修了後は専門人材としてパーソルホールディングス内のIT部門へ配属されるプログラムとして2022年度より開始。パーソルグループの全社員を対象にした公募型の異動制度「キャリアチャレンジ制度」(※審査あり。グループ会社間の転籍可能)と連携し、セキュリティ人材へのリスキリング希望者を中心に参加者を募集。2022年度は7名が修了した。

市場動向を踏まえ、リスキリングによるセキュリティ人材の拡充に挑戦

―まず、リスキリングによるセキュリティ人材の拡充を実施するに至った背景をお伺いします。なぜ、リスキリングプログラムを実施することになったのでしょうか?

持田:まず社会的な背景からご説明すると、市場全体としてセキュリティ人材の不足が大きな課題となっています。


そもそもセキュリティ人材に限らず、テクノロジー領域においては求人倍率が高い値で推移する売り手市場の状況が続いており、日本の多くの企業にとってテクノロジー人材不足が課題になっていると言えるでしょう。そうした中でもとりわけ採用が難しいのが、テクノロジー領域の素養に加えてコンプライアンス観点での知識や経験も求められるセキュリティ人材であり、企業はその育成や待遇改善などの対策を求められています。

―パーソルグループとしては、どのような課題感や思いがあったのでしょうか。

持田:パーソルグループ全体として、保有するすべての情報資産の保護と適正な管理をしなければいけないという意識を強く持っています。情報セキュリティの脅威が増大する中、セキュリティをしっかりと担保した上で事業やサービスを通じてお客さまに価値をご提供し続けるためにも、セキュリティ人材の拡充に向けた施策を急ぎ進める必要性を感じていました。

―さまざまな施策が考えられる中でも、リスキリングを選んだわけを教えてください。

持田:市場動向をふまえ、長期的な視点での採用活動が必要となる中で、短期的に成果を挙げられる施策として可能性を感じたのが、グループ内からセキュリティ領域に興味や意欲のある人材を募ってリスキリングを実施する方法でした。


すでにパーソルグループに在籍しているからこそ、一定の事業や業務理解を期待することができます。“現場視点” を持ってセキュリティ領域の業務に取り組んでもらえるという点に大きな価値を感じたほか、自らセキュリティ領域へのリスキリングを望む人材であれば、短いリードタイムで活躍できる可能性を感じました。

―そうして、実際にセキュリティ人材のリスキリングプログラムを実施するに至ったのですね。

持田:はい。まずは2022年度、パーソルグループ全体のセキュリティに関するルールの策定や展開を担うグループIT本部 情報セキュリティ部とITガバナンス部 セキュリティガバナンス室の2つの組織において、セキュリティ人材獲得施策の一環としてリスキリングプログラムを実施することにしました。


パーソルグループには「キャリアチャレンジ制度*」という公募制度があるのですが、この制度を活用し、「パーソルグループのセキュリティを高めたい方を募集します」とリスキリング希望者を募りました。


*キャリアチャレンジ制度:自身のキャリアデザインとその成長のために、自ら異動希望を出すことができる制度

―セキュリティ領域では初となるリスキリングプログラムの実施とあって、募集の際の準備は苦労されたのではないでしょうか。

郭:キャリアチャレンジ制度では、リスキリングポジション以外にも多数のポジションが公募されます。そのため、応募者を集めるためには、魅力的な仕事であることを伝えなければならないことから、プレゼン資料を作り込み、応募にあたって不安がある人材に向けた説明会を2回ほど開催しました。


持田:応募者には用意しているカリキュラムや今後のキャリアの見込みなどをお見せするとともに、「とはいえ0からの挑戦となるため、一人ひとりの頑張りが重要になる」という点をしっかりとお伝えしていて。やる気とご自身で学ぶ姿勢を持ってくださっている方を受け入れ、リスキリングを実施していこうという思いで面接を進め、結果的に2022年度は7名とのご縁があり、プログラムに参加してもらうことになりました。

日々の業務で蓄積したナレッジを活かし、リスキリングに専念する6カ月間のカリキュラム

―「グループ全体から応募を募った」とのことでしたが、応募者はセキュリティに関する知識は持ち合わせていたのでしょうか。

持田:直接的にセキュリティ領域に関わっていた人材や、すでにセキュリティ領域に関する知識を豊富に持っている人はいなかったという理解です。

でも、皆さんセキュリティ領域への興味やキャリアチェンジに対する意欲を強く持ってくださっていて。「面接までにこういうことを調べてきました」「こんな本を読んで勉強してみています」と前向きな姿勢を見せてくださったこともあり、結果的にプログラム参加者の応募時の職種は、エンジニアやキャリアアドバイザー、リクルーティングアドバイザーなどさまざまで、また所属も分散していた印象です。

―異なる背景を持つ参加者へ向けたリスキリングプログラムは、どのような内容なのでしょうか。

郭:下記のようなスケジュールで実施しました。

特徴的な点は、リスキリングプログラム参加中は半年間にわたり、お給料は維持したまま担当業務は持たずに学習に専念してもらう点ではないでしょうか。


IT・セキュリティ領域における基礎的な知識を身に着けるべく、パーソルイノベーションが提供する『Reskilling Camp』のカリキュラムを活用しながら、情報処理推進機構が実施する「情報セキュリティマネジメント試験」の受験・資格取得を行いました。無事に12月には全員が合格しましたよ。


1月からは、「実際の現場を見て業務理解を深めたい」という参加者の意向を汲み、3カ月の業務体験を実施しました。その後、翌年4月には無事に本配属に至ったという流れです。

―プログラムは受け入れ組織の方々が考えられたそうですね。そのような点を意識してプログラムを設計していったのでしょうか?

郭:受け入れを決めてから準備期間がかなり短く、また受け入れ組織自体が比較的在籍歴が浅いメンバーが多かったため、「受け入れは無理では?」と思いながら準備を進めたのが正直なところです(笑)


ただ準備をする中で、自組織が抱える「業務の属人化」や「人材不足解消」といった課題を解消する良い機会だという意識に変化していきました。そのため、プログラムはこれまでパーソルグループで運用してきた実際のセキュリティ対策から積み上げたナレッジをそのまま活用し、実際の業務に役立つ内容にすることを意識しています。

リスキリング成功のカギはチャレンジする本人のやる気と、それを支える環境

―今回の6カ月にわたるリスキリングの取り組みの成果を、どのように捉えていらっしゃいますか?

持田:本配属から3〜4カ月ほどで、先輩社員の補助を受けながら業務を回していく、新卒入社2,3年目の方と同じくらいのレベルの動きができるように。それから半年ほど経った今では、一人で業務を担当できる方も出てきており、思っていた以上のスピード感で成果が挙がっているかなと思っています。


未経験からの挑戦で大変なことも多かったと思いますが、難易度の高い試験に全員一度で合格したことも含め、皆さんの意欲の高さが成果に繋がり、チームの戦力として活躍してもらえるようになってきたという印象です。


郭:私は既存メンバーにメンターとして成長してほしい、という裏テーマを持っていました。リスキリング人材が半期で平常業務を1人で回せるようになることを目標に設定し、それが実現できるような教育を各メンターにお願いしたのです。


その結果、半期でリスキリング人材全員が平常業務をこなせるようになりました。メンバーのなかには、平常業務に加え自ら課題を見つけ出し、改善方法を提案・実行して成果を出すところまで辿り着いたリスキリング人材もいましたよ。

―リスキリング人材の受け入れによって、組織に生まれた変化はありましたか?

持田:もともとはIT領域でキャリアを積んできたメンバーが中心の組織でしたが、今回キャリアアドバイザーをはじめ多様な職種を経験された方が加わり、組織の雰囲気が少し変わったかなと感じています。


やはり皆さんそれぞれに現場の最前線で活躍し、お客さまに直接価値をご提供する経験をされてきたことが大きいのではないかなと。バックオフィスの業務だけをずっと見ていると価値を届ける相手が見えづらくなり、自分たちの理論だけで話をする状態に陥ってしまいやすい中、新たなメンバーとの対話を通じて現場の様子が少しずつ見えることで、一人ひとりが持つ情報や視点が変わってきた感覚です。


郭:受け入れ組織では当たり前のこととして担当してきた業務について、「この運用はいつから始まっているのか?」「なぜこのようなルールになっているのか?」と改めて聞かれることがあり、既存メンバーである私たちも立ち止まって振り返る時間や気づきをもらいました。運用側に立っていなかったからこそ出てくる素朴な疑問が出たりしたのは新鮮で、ポジティブな要素でしたね。

―施策を進めるにあたって特に苦労された点があれば教えてください。

持田:セキュリティ領域はもちろん、IT領域も未経験という方が多く、前提となる情報や知識の量が大きく異なる中で、皆さんに理解してもらえるようにものごとを翻訳して伝えることに初めは苦労しました。


また今回7名のリスキリングを一気に進めたことで、異動してきてもらったメンバーにも、メンターとして指導するメンバーにも、負荷をかけてしまったなという印象があります。皆さんの頑張りのおかげで取り組みを進めることができましたが、少人数から始める方が良さそうだという気づきが得られました。

―施策全体を振り返って、リスキリングの成功のために必要なことは何だと思われますか?

持田:組織として受け入れ態勢に責任を持つ必要があるのはもちろんですが、それ以上に重要なのはチャレンジするご本人の主体性なのではないかと、今回の取り組みを通じて感じました。


今までやってきたことが通用しない環境で「新しいことを知る」「経験にないことをする」にあたっては、恐らく辛いことの方が多いはずです。そんな中でも、目的意識を持って楽しみながら挑戦したり、新しい学びを得ることに喜びを見出したりできる方は、きっとその辛さを乗り越えていけるのだろうなと。


今回のメンバーはご自身の業務の中でセキュリティの重要さを感じ、「自分もその領域でキャリアを築いていきたい」と、今ある立場を捨てて飛び込んできてくださった方々です。そういった前向きさ、「これは何でだろう」「ここはどうしたらいいんだろう」と自分で考え、調べ、人に聞ける積極性があったからこそ、今回の成果が挙がったのではと思います。


郭:これは反省点でもあるのですが、さらにリスキリング人材がチャレンジできる機会を増やすため、能力やスキルに応じて複数のカリキュラムを用意した方が良かったかもしれないなと。今回迎えたリスキリング人材は、ITを基礎から身につける必要がある人材から、システム開発を経験した人材などさまざまでした。カリキュラムを2段階用意するなどの調整ができれば、より満足度の高い内容になったと思います。


また、プログラム設計時から、既存メンバーを巻き込んで進めることも重要だと思います。新たな人材を受け入れる時こそ、たくさんのメンバーの視点や意見があったほうが良いのではないでしょうか。

―それでは最後に、今後の展望について聞かせてください。

持田:セキュリティ領域でこのリスキリング施策を実施したのを皮切りに、以降ITやDX、ITガバナンスなど多様な領域において同様の施策がスタートしています。

お伝えしたように本人の意欲が非常に重要になる施策だからこそ、「たまたまこの職種で募集しているから」「この職種しか候補がないから」ではなく「この領域に興味がある」と思って挑戦してもらえるように……今後もこの施策が多様な組織・職種に展開され、キャリアチェンジに挑戦する方にとっての選択肢の幅が広がっていけばいいなと思います。


※2024年2月時点の情報です。


パーソルホールディングスが運営するWebメディア「TECH DOOR」では、パーソルグループ内で取り組んでいるITプロジェクトを紹介しています。本記事と併せてぜひご覧ください。





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