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80代の著者さんもおられます。

“セラムファースト”という逆転の発想で、新カテゴリーを創出する「ファンデ美容液」開発物語

著者: 株式会社資生堂



肌を彩るファンデーションにスキンケア効果を持たせるのではなく、肌を育む美容液から発想してファンデーションをつくる。そんな逆転発想から生まれた“彩る美容液”という新カテゴリーが、「ファンデ美容液」です。資生堂は、このファンデ美容液を新しい化粧文化として発信するコミュニケーションを2024年4月2日(火)よりスタートしました。この新発想ベースメイクカテゴリーはどのようにして生まれたのか。生みの親ともいえる、ふたりの研究員に話を聞きました。


従来のファンデーションの進化、ではなく、「新しいカテゴリー」をつくる

―現在の仕事の内容と「ファンデ美容液」開発における役割を教えてください


三浦 私はブランド価値開発研究所のプロダクト室長として、「ファンデ美容液」においては研究領域の総括をしています。


高田 私はプロダクト室で主にファンデーションの処方の開発をしています。中でも、リキッドファンデーションやクリームファンデーション、クッションファンデーションなど乳化ファンデーション全般の開発を担当しています。「ファンデ美容液」のひとつであるSHISEIDOエッセンススキングロウファンデーションの開発には2021年から携わってきました。


―資生堂で、化粧品の研究に携わる、その動機はどんなことでしたか?


ブランド価値開発研究所 プロダクト室 室長 三浦 由将


三浦 私は大学で化学を専攻していましたので、身の回りの商品に興味があり、それらを自分の手で作ることによって人々の生活の質が向上したり、毎日の生活が楽しくなる、というところに貢献したいと考えていました。中でも化粧品は身近で、色や香りのサイエンスに関心もあって。入社時の希望が幸いにして叶い、ファンデーションの部署に配属になったのが始まりです。


髙田 私は学生時代、化学と生物の中間領域を研究していました。そのバックグラウンドを生かせて多くの人の役に立つというと、化粧品がいちばん理想に近いと思い、資生堂に入りました。スキンケアを4年ほど担当してから、21年からファンデーションの部署に異動し、今ちょうど半々くらいのキャリアです。


ブランド価値開発研究所 プロダクト室 髙田 耕太郎


―そんな、ファンデーションを極めた二人に伺います。スキンケア効果のあるファンデーションは今までもありましたが、今回の「ファンデ美容液」は、その次元を超えたものだと聞いています。違いをひとことで言うと?


三浦 「新しいカテゴリー」をつくったと言えると思います。美容液という市場がある、ファンデーションという市場がある、その中で私たちがつくったのは「ファンデ美容液」という新しいカテゴリー、新しい市場なのです。目指したのは、まず、目を閉じて使ってみたら「これって美容液?」と思えるような感触です。そして、目を開けてみたら、肌がきれいに見える「彩る美容液」を作りたいと考えました。そのために感触や仕上がりを夢中になって研究していたら、ファンデーションを触れば特長的な成分がおよそどれくらい入っているか想像できるぐらいに、自然に感覚が鍛えられていました。


―研究や処方の現場にいない立場から見ると、研究の現場に対しては、感性を研ぎ澄ましているイメージより試験管とか顕微鏡、数字…というイメージを持っていました


髙田 私もこの仕事を始める前は、化粧品の研究開発とは大学の研究室のような基礎的な研究がメインでありながらも、プラスαとして消費者のことも勉強する、ぐらいのスタンスを想像していました。しかし仕事を始めてみると実際に店頭に行って話を聞いたり、生活者意識も把握しながら、研究するというスタイルにびっくりしました。そこはまだまだ深めていきたいと常に意識しています。


三浦 圧倒的に感覚を研ぎ澄ますことはものづくりの前提といいますか、価値を提案する立場として非常に大切にしています。感覚がわかれば、設計の際、生活者インサイトや実際の利用シーンに思いをはせながらもう少しこの球状粉末を増やそう、とか、この保湿剤を少し減らそう、と判断ができます。つまり処方を自由にデザインできるようになるんです。研究者は自分の中に、生活者意識を反映した価値軸、評価軸を持つことが必要です。


逆転の発想で壁を超える


―新しいカテゴリーと呼べるほどのものを作るために、今回どのようなブレイクスルーがあったのでしょうか


三浦 この数十年のファンデーション開発を振返りますと、スキンケア性を高めていく歴史だったと言えます。肌を彩るという目的を果たしながら、お客さまが求める「肌に対するベネフィット」を向上させていくことの積み重ねであったわけです。毎日実験を繰り返している中で、「ファンデーションをベースに考えていたらこれ以上のものは生まれない」とある日気づきました。もっと高みを目指すのであれば、壁を超えなくては、と。そこで、考えを逆転させて、美容液をベースにした処方の研究に方向転換をしました。従来のファンデーション基材でどんどんスキンケア性を高めようとしても、処方上で限界がある。限界突破のために試行錯誤を重ねてたどり着いた結論は、美容液の中にファンデーションを閉じ込める、それがひとつの解かなと。


―研究者の探求心と世の中の求めるものが合致した瞬間ですね


三浦 生活者として、そしてファンデーションの研究者として、もう一つの課題が、みずみずしく、使用感触のいいものをつくりたい、ということでした。気持ちよく使えることが大きなベネフィットになると考えたのです。専門的になりますが、一般的なリキッドファンデーションに用いられる乳化技術であるW/O型(油の中に水が入るタイプの乳化)ではカバー力はあるけれどもみずみずしさは感じにくい。とはいえ、みずみずしいさっぱり感触のO/W型(水の中に油が入るタイプの乳化)であれば肌に塗布した際に、水になじんでいるパウダーが汗などに流れてしまいやすい。それぞれの良さを踏まえたうえで、今回P/O/W型乳化という新しい技術を考えました。

P/O/W型乳化では、パウダーを油でくるむことで化粧もち効果も高め、それをミクロレベルにカプセル化して美容液で包む。こうすることで、美容液がまず肌に広がり、その上にファンデ成分が均一に広がるから、美容液が肌にずっとふれる。これがセラムファースト技術です。



―気持ちよく使える、ということは、身の回りを心地よいもので満たして健やかに暮らしたいという、コロナ禍を経た生活者の意識の変化にもあっているようです


髙田 コロナ禍で外出の機会が減ったときに、ファンデーションを使う回数が減った方、そもそも使わない方も増えたというデータがあります。その理由の中に「肌に負担がある」というイメージもあることがわかりました。粉が肌にずっと乗っているのは肌に悪いんじゃないか、と。今回の「ファンデ美容液」は、最初に美容液が肌に広がり、その上に均一なファンデーション成分の層ができるため、美容液がずっと肌に触れている状態なんです。そこに共感していただければ、コロナ禍を経てファンデーションから遠ざかった方にも、使ってみようかな、という気持ちになっていただけるのではと考えています。


―ファンデ美容液の処方の種が生まれた時は、「あ、これだ」っていうような感覚はありましたか


三浦 ありました。「感動」ですよね。狙ったものはこれだ、という。それをたくさんの研究者が多様なアイデアを盛り込み、磨き上げ、価値を高め、骨太の技術に育てて、リレーというか、想いをつなぎ、…最終的に完成度の高い「作品」にしてくれたのは、こちらの髙田さんら今のメンバーです。


専門領域を越境しながら進む


―逆転の発想という話ですが、逆転の発想というのは、その道のエキスパートであればあるほど、難しいことでもあると思います


髙田 資生堂の強みは、スキンケア、ファンデーション、サンケアなどいろいろあり、その分野に特化した研究、特化した技術がすごくたくさんあります。そんな中、領域をまたいで強みを組み合わせるという発想が、イノベーションに繋がっていると思います。何かを極めた人が、さらにそれを超えるのは非常に険しいチャレンジですが、「越境」はそれを超える大きな力になります。私自身、スキンケアからベースメイクに異動したこともあって、両方の強みが分かって、それぞれの良いところをしっかり組み合わせられたところが今回のものづくりに繋がったのかなと。ただ、新しいやり方であるがゆえに、過去の参考事例がないことは、大変ではありました。


―組織論でよく言われる、緩やかな横のつながりから生まれるイノベーションの実例ですね。領域を超えて、お客さまにとって何がいいのか、という、前例を疑うようなスタイルからブレイクスルーが生まれるんですね


三浦 専門領域という考えもありながら、横につながってイノベーションを起こす方向に、組織も、人の育成も変わってきています。基本的な考え方は、「まずはやってみましょう」。寄り道になることがあるかも知れませんが、そこから学びを得て軌道修正して、前を向く。この積み重ねだと考えています。その状態をつくるには、研究者がみな成し遂げたい夢をもち、それに対してチャレンジできると思える組織風土をつくること、そしてそれが価値観として浸透した組織文化にまですることが必要です。仮にうまくいかなかったとしてもDon’t mindではなく、Nice try。学びがあり、次に向かえることを喜びあいたいですね。がんばるとか、努力することも大切ですが、夢中になる、が理想だと思います。


―自分のやりたいことを見つけ、商品化してお客さまに届けるまでに成長させるというのは大変な道のりだと思います。実現のためにしていること、行動パターンなどはありますか


髙田 枠から飛び出す発想をするために、自分の信念をしっかり持って、お客さま調査で出てこないようなことでも直感も大切にして、自分のその信念を貫き通せる姿勢を忘れないようにしています。前例が無いことにめげずにトライし続ける気持ちを持ち続けないと。「心・技・体」みたいなところになりますね。担当した商品はどうしても気になるので、SNSなどの口コミをチェックすることもあります。自分の仕事の答え合わせと、これからのヒント探しも兼ねて。お客さまが書かれている良くない点もしっかり向き合い、次に生かします。隠し味じゃないですけど、自分なりに盛り込んだ改善点がお客さまに伝わっているとうれしいですね。


―着想から「ファンデ美容液」の製品化までの間に、試作って何回ぐらいされたんでしょう


髙田 過去からのつながりがあるので、だいたい1000回ぐらいでしょうか。色を合わせるとか保証とか、すべて含めて。今まで担当した他の製品とは比べ物にならないぐらい試作を重ねました。


三浦 資生堂の研究部門では、行き詰まったときに、「じゃあこの原料はどうですか?」と言ってくれる原料のエキスパートがいたり、安定性がどうも…となったら乳化のプロが助言してくれたり、こうした環境も強みになっていると思いますね。みんなで一丸になって、成功をささえるといった風土があります。


仕事を通して実現するBETTER WORLDとは


―最後に伺います、お二人にとってBEAUTY INNOVATINS FOR A BETTER WORLDの「BETTER WORLD(よりよい世界)」はどんなものでしょうか?


三浦 もちろん新製品の集合体が私たちのものづくりの成果ではありますが、その先にお客さまにとっての新しい化粧習慣、もっと言えば、優れた化粧文化を提案したい。新しいことはいつも資生堂から、と思われるような仕事に貢献することが、自分にとっての幸せです。わくわくとか、ときめきを提案していくには、お客さまの気持ちに寄り添いながら進化していくことが重要だと思います。「すべてのことはリッチでなくてはならない」「本物を創り出そう」、という創業以来の開発魂をみんなで引継ぎ、そのために自分は何ができるか。BETTER WORLDというのは、ゴールではなくて、常に進行形で変わりながら世界を良くしていくこと。それに自分が関わり続けることだと思っています。

「ファンデ美容液」発表会での技術プレゼンテーションの様子


髙田 お客さまが潜在的に思っていること、でも口に出すほどまだ欲しいとは思っていないようなインサイトを発見し、商品として提供できることが、資生堂としてやっていかなくてはならない領域であり、BETTER WORLDにつながるのかなと思っています。既にファンデ美容液の次の進化に向け、研究を開始しています。進行形です。



資生堂独自の「セラムファースト技術」は現在、「SHISEIDO エッセンス スキングロウ ファンデーション」および「マキアージュ ドラマティックエッセンスリキッド」の2品に搭載されています

彩る美容液、という奇跡。#ファンデ美容液サイトはこちら

関連リンク

逆転発想から生まれた“彩る美容液”という新提案


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