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女性フォーラム開催の企画・提案をしたサトーの女性執行役員が語る狙いと本音。改革の鍵は、男性や役員の意識改革か?

著者: サトーホールディングス株式会社


サトーグループ(以下サトー)は、バーコードをはじめ、2次元コードやRFID(Radio Frequency Identification:無線周波数識別)タグ、位置測位システムなどのデータを自動で読み取り、あらゆるモノや人に情報をひも付け、デジタル化して現場課題を解決する「自動認識ソリューション」を提供する企業です。小売店での値札(ラベル)付けから、製品の製造時の管理、物流における商品の追跡まで、自動認識技術は今やあらゆる業界で必須の“情報インフラ”になっています。サトーは自社商品であるラベルプリンタとサプライを中心とし、ソフトウェアやシステムを構成する機器などを組み合わせて総合的に提案することで、トレーサビリティー、サプライチェーンマネジメントなど、さまざまな業務アプリケーションを現場で支えています。

<創造の小径でサトーの歴史や特長を紹介する武井美樹執行役員>


90を超える国・地域でビジネスを展開するサトーは、グローバルで5000人以上の従業員を抱えています。2004年に女性の社外取締役が就任し、現在、執行役員14人のうち、外国籍1人を含む4人が女性です。

国内の女性管理職比率を2025年度に8.4%、2030年度には10%に引き上げることをめざし、女性のキャリア形成支援だけでなく、全社を挙げた働き方改革、出社と在宅を組み合わせたハイブリッド勤務(どこでもワーク)の整備など積極的な取り組みを進めています。

2022年には、すべての執行役員で構成する「人財開発委員会」を発足し、人的資本経営の推進の一環として、女性活躍に向けたさらなる改革に乗り出しました。社内の女性同士の交流の場となる「女性フォーラム」を立ち上げ、今年3月に第1回を開催した武井美樹執行役員に、サトーがめざす女性活躍推進について聞きました。

<インタビューを受ける武井執行役員>


ーー日本の女性活躍の現状、さらに現在のサトーの状況をどのように見ていますか。


「先日、世界経済フォーラム(WEF)が発表した2024年版の『ジェンダー・ギャップ指数』で、日本は調査対象である146カ国中118位でした。過去最低だった前年の125位からやや改善したものの、いまだに驚くような水準です。ただ、日本の現状を見れば、それもそのはずだと感じます。サトー国内の従業員の女性比率は23%です。日本取引所グループ(JPX)の類似企業の同比率が15%ですから、業界内ではとりわけ低いわけではないようですが、女性管理職の比率は低いと言わざるを得ません」


ーー課題は何でしょう。


「子どもの有無や新卒・中途を問わず、国内の女性従業員に行ったアンケートでは、仕事そのものに対しては意外にもポジティブにとらえている方が多かったんです。また、育児や介護との両立支援についても社内の制度が認知されており、満足度も高いという結果でした。一方で、キャリアアップ(昇進)と育児・介護との両立は難しく、女性であること、育児などとの両立がマイナスに働いているとの意見も多くありました。男性中心的な組織風土があり、『女性社員は昇進を望んでいない』と決めつけてしまっているような雰囲気もあるようです」


ーーどう変えていきますか。


「そうしたアンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)によって、女性の活躍が阻害されてしまうケースはあると思います。アンコンシャス・バイアスは誰にでもあり、なくすことはできません。まずはそれに『気づく』こと、気づいたら声を上げ、メッセージを発信していくことで、誰もが私らしく生きる未来につながると考えています。女性活躍推進に万能薬はなく、小手先の改革では浸透しません。最も大切なのはトップの本気のコミットメント、そして意思決定のボタンを押す立場のある男性役員の意識改革です」


<女性フォーラムの開催の様子>


ーー「女性フォーラム」発足のきっかけを教えてください。


「サトーは2011年に『ダイバーシティ宣言』を出し、女性活躍に向けた取り組みを始めましたが、海外売上比率50%を達成しようとする中で、真に女性が活躍できる会社になったかと問われれば、売上げやビジネスの規模と、ダイバーシティの実現状況はまだアンバランスだといえます。そんな中、2023年4月にサトーホールディングス(HD)社長に就いた小沼宏行(代表取締役社長執行役員グループCEO)が同年10月、ダイバーシティについて社内で発信し、それが大きな起爆剤になったように思います。人財開発委員会でダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DE&I)に向けたアクションを起こすことになり、私はかねてより温めてきた女性フォーラムの立ち上げを提案しました」


<女性フォーラムのディスカッションの様子>


ーーその目的と狙いは。


「元社長の故・藤田東久夫が綴った社員向けの指南書『サトーのこころ』には、『女性も高齢者も男性も、全員が活躍するサトーへ』と書かれており、サトーにはそうした企業理念がカルチャーとして根付いています。東証プライム市場の上場企業には女性役員比率の数値目標が掲げられていますが、『女性フォーラム』は、女性の管理職比率を高めるという会社側の都合ではなく、女性がいきいきと、十分に力を発揮できる組織にすることをめざし、人財制度改革と男性役員の意識改革・行動変容を促すという目的に設定しました。経営の意思決定をする執行役員は男性が多く、まずは彼らの意識と行動が変わらなければ、その傘下の男性社員の意識と行動も変わりません。そのため、参加対象を女性社員と全執行役員に敢えて限定しています。管理職比率などの数字は後からついてくるものだと考えいます」


ーー会のキャッチフレーズは「Her Story, SATO’s Future ~互いを知ろう、気付こう、変化しよう~ 」ですね。反響はどうでしたか。


「まず、社内の女性同士が互いを知り、男性役員などに子育ての実態などを知ってもらう。さらに女性自らが提言し、役員がそれを受け止めることで改革につなげていきます。1回目は、本社勤務の女性スタッフ職を対象に、執行役員が出席し、男性役員、マネージャー職の女性、子育て世代の女性がパネルディスカッションに登壇してそれぞれの経験や思いを語ったり、男性役員が女性の輪に一人だけ入ってランチをする“マイノリティ体験”をしたりしました。最後はワークショップで全員が改善に向けた解決策を積極的に考えて提言しました」


「ただ、対象女性社員の参加率は期待していたほど高くはありませんでした。前例のない初開催であったことや、執行役員が参加するということで敷居が高いと感じたことも理由の一つです。また、女性自身もジェンダー平等の今、『女性限定』の会に違和感を覚えるといった声や、会の開催自体を快く思っていない男性上司もいたようです。一方で、参加者の満足度はほぼ100%に近く、とても高い結果となりました。初開催の女性フォーラムは、会社に対する多くの提言が出て、とても意義のあるものとなり、今後の展開が期待される成果となりました」


<女性フォーラムの様子>


ーー武井さんご自身は、語学留学を経験され、オーストラリア企業での勤務を出発点に、香港では子育てしながらキャリアを継続し、7年前にサトーへ転職、その後、経営学修士(MBA)を取得されています。


「はい、そうですね。オーストラリアで約4年間、アパレル企業で多国籍マネジメントを経験し、香港では約7年間、広東語と英語を使い分けながら、日系商社で経営企画に携わりました。帰国後は、総合商社から大手アパレル企業に出向して経営再建を進めるなど、社長側近として、経営に近いところで仕事をしてきたと思います。当時、サトーHDが社長直轄のコーポレートマーケティング室を新設するということでお声がけいただきました。これまでアパレル業界で人々の生活を「より豊かにする」、プラスの価値を提供することにやりがいを感じていました。しかし、サトーはアパレルのみならず、製造や物流、ヘルスケアといった多岐に渡る業界のお困りごとに対して、人々の生活を「より便利にする」ことに関わっていけることから、私自身、未来に向けた社会的責任を果たし、誇りや達成感を得ることができると考えたからです。」


ーー海外の女性の働き方は日本とどのように違いますか。


「私は香港で第一子を出産しましたが、日本との違いに大変戸惑いました。日本には育児休業(育休)制度がありますが、当時の香港での育休は、出産前後8週間のみで、住み込みのお手伝いさんに娘を預け、産後6週間で職場に復帰しました。ただ、出張で長期間家を空ける日もあり、一緒に過ごす時間が短く“母親失格”かもしれないと涙する日も多かったです。しかし、香港ではそれが当たり前で、女性も長期出張や海外への単身赴任をこなし、仕事の男女格差はありません。そのためか母乳で育てるお母さんは少数派でした。実は、住み込みのフィリピン人のお手伝いさんも、貧しい故郷に3人の子どもを預け出稼ぎに来ているというのです。そして仕送りしたお金で、ようやく家が建ったと。私は感動し、世界にはさまざまな次元の異なる事情や背景で子どもを預けて働く女性がいるのだと知りました。また、香港ではむしろ家族の絆は強く、『一緒にいる時間の長さ=愛情の深さ』ではないと身をもって体験したことも大きかったです」


ーー日本でも少しずつ環境は整備されてきていますが、海外との差は依然大きいですね。


「日本は、歴史的背景や経済界の現状、法制度の限界、職場でのジェンダーバイアス、家庭と仕事の両立といった複数の要因が絡み合い、改革は道半ばです。従来の仕組みや社会構造から変えていく必要があります。例えば、日本では住み込みのお手伝いさんは現実的ではありませんから、託児所や保育園、パートナーはもちろんですが、親など周囲の協力が不可欠です。その際、周りに感謝することは大事ですが、協力者や子ども、会社に対して後ろめたさを感じる必要はありません。『すみません、妊娠しました』『すみません、子どもがいるので』といったように、罪悪感を抱えながら働くお母さんをなくしたいと思っています」



ーーサトーにおける女性活躍推進のゴールは何ですか。


「ジェンダーレスの時代に、なぜ『女性』なのか。そう問われることもあります。その時に私がいつも話をするのは、ダイバーシティ活動を通してめざすのは、『平等』ではなく、『公平』であるということです。日本全体を見ても、経営層には依然として男性が多く、気付かぬうちに男性視点に偏ってしまうことは多いと思います。男性は最初からげたを履いている。だからこそ、その分、女性にも同じ高さになるようにげたを履かせてあげないと、公平にはなり得ないのです」


ーー今後、取り組みたいことは。


「最近では、男性の育休取得も進み、保育園などのお迎えにもお父さんをよく見かけるようになりました。ダイバーシティ活動も男性、女性というくくりではなく、『昭和』と『令和』、それぞれの世代の関係性にも目を向けるべきだと感じているところです。この違いがかなり大きいんですね。『専業主婦と結婚した昭和生まれの男性』と、『共働きで子どもを育てる令和を生きる男性』。そうした対比も必要になってきていると感じます。これからも女性フォーラムは継続していきますが、回を重ねるごとに企業カルチャーが変化していくのが楽しみです。来年の今頃は女性活躍が当たり前になっていて、『ジェンダーフォーラム』へと発展させていきたいですね」


<女性フォーラムのプレゼンに登場したメンバー>




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