70年以上「ハム」と向き合い続けた丸大食品が考える、日本のお歳暮文化の中で「ハム」がもたらす本当の価値とは。~文化を繋ぐ新たな挑戦~
一年の締めくくりに大切な人へ感謝の気持ちを伝えるお歳暮。日頃のご挨拶を兼ねた贈答品として、最もポピュラーなものの一つがハムギフトです。手に持つギフトボックスから伝わる確かな重量感。その重さを感じつつ包装をほどき、箱を開けた瞬間に目にするブロック状の大きなハムは、受け取った相手に格別な喜びをもたらします。1954年の創業以来、70年にわたってハム・ソーセージ類の製造・販売を行う丸大食品株式会社(以下、丸大食品)でも、フラグシップブランドである「王覇」をはじめとしたハムギフト商品を長らく展開してきました。そもそもなぜ、日本のお歳暮文化の中で、ハムは重要な位置を占めるようになったのでしょうか。また、ハムギフトを通じて丸大食品が次代に継承したい価値とは。今回、ハムソーマーケティング部 部長 山本、同部 商品企画課 富田、総務人事部 総務課 課長 藤本の3名が語ります。
左から1970年、1980年、1988年 歴代の「丸大ハム」CM
お歳暮文化のルーツと、ハムがお歳暮の定番として定着した背景
お歳暮の歴史は古く、室町時代にまで遡ります。先祖の霊を迎えるお正月の行事「御霊祭り」で用意したお供え物を親類やご近所に配ったことがその起源とされます。江戸時代になると、年末に武士が属する組合の長に贈り物をし、商人が得意先へ手土産を持参して挨拶回りをする慣習が定着。上司やお世話になった人へ贈答品を贈るという現在の風習が生まれたのは明治時代頃とされており、「ハム」がお歳暮の品として重宝されるきっかけとなる出来事が起こったのもまた、この文明開化の時期だったと、山本は語ります。
山本:諸説あるのですが、明治5年に長崎へ訪問した明治天皇に献上されたこと、当時は製造するにあたって手間暇のかかる超高級品だったことから「ハム=特別な人に贈る贈り物」というイメージが持たれるようになったと考えられています。また、腐りにくく日持ちするハムの特性上、商店が一斉に休業に入る大晦日・お正月に近い暮れの時期に贈ると喜ばれたことから、お歳暮の品として定着していったとも言われています。
ハムソーマーケティング部 部長 山本
こうして日本のお歳暮文化の一部となったとされるハム。お歳暮用のハムと言えば、ブロック肉をイメージする人がほとんどでしょう。通常、食べやすくスライスされた状態で市販されるハムが、ギフト用ではなぜ、塊肉のままエンドユーザーの元に届くのでしょうか。富田は「一番大きい理由は、インパクトと特別感だと思います」と解説します。
富田:ギフトボックスを開けた時の「おっ!」という驚きは、スライスハムにはないものです。ブロック肉ならではのこの特別感により、「大切にされている」とうれしい気持ちになる方は多いのではないでしょうか。実際にご購入者様からは「スーパーで売られているハムとは味わいも満足感も違う」「もらって食べてみたらすごく美味しかったので、これからは自分用にも購入したい」などの声も寄せられています。
ハムソーマーケティング部 商品企画課 富田
見た目のインパクトもさることながら、実用性の高さもまたハムギフトが持つ価値の一つです。肉厚でジューシーなブロック肉は様々な料理に活用できますが、富田が推奨するのは、あくまでも素材そのものの旨みをしっかりと味わえるシンプルな食べ方です。
富田:お歳暮にハムブロックが届いたとして、まず試してもらいたいのが、1.5cmほどの厚みに切って焼いて召し上がっていただくことです。そうすれば、ハムそのものの旨みを存分に味わえるはず。このように素材の味を十分に堪能した後は、余ったハムを細かくカットしてグラタンやシチューに入れて煮込んで食べるのもおすすめです。
ちなみに以前お客様から「魚焼き器を使うと、表面がパリッとした食感に仕上がる」と教えていただき、それ以来私も真似しています。
ハムギフトの王道をいく「王覇」は、丸大食品のモノづくりの姿勢を体現した商品
丸大食品は様々なお歳暮用ハムギフトを展開しており、その中でフラグシップブランドと位置付ける商品が「王覇」です。「特色JAS規格」のハムを中心に詰め合わせた同ブランドが目指すところは、横道に逸れない「王道の味」。その理念は、発売開始当初より変わっていないと、藤本は説きます。
藤本:創業時より「お客様に美味しいものを食べていただきたい」という思いのもとハムづくりに注力してきた丸大食品ですが、当社が手掛ける数あるハムのギフトブランドの中でも、こだわり、丁寧さ、美味しさ、品質が高水準で集結した最高位クラスのものが「王覇」です。その名の通り、お客様に愛される「王道の味」を志向し、モノづくりに愚直に真面目に向き合ってきた当社の姿勢を表したブランドとも言えます。
総務人事部 総務課 課長 藤本
味への強いこだわりは、「モンドセレクション最高金賞」という確かな実績に結実しています。モンドセレクションは、世界各国の品質に優れた製品を発掘・顕彰することを目的とし、1961年にベルギーとEC(欧州共同体)が共同設立した製品の国際的品評機関およびコンクールです。衛生、味覚、包装、原材料など様々な項目で審査される同コンクールにおいて100点満点中90点以上の製品に与えられる「最高金賞」を、「王覇」は2012年~2024年と13年連続受賞し、2023年にも獲得しています。
(※13年連続受賞 王覇熟成ホワイトロースハム380g 王覇熟成ホワイトボンレスハム350g)
そんな「王覇」のイメージキャラクターとして、今年新たに、将棋棋士の羽生善治九段を抜擢しました。起用の理由は、羽生棋士と「王覇」に複数の共通点があるからだと、富田は言います。
富田:羽生棋士の誠実で真っすぐな人柄、将棋に真剣に向き合う姿勢が、当社のハムづくりの理念と通じているのではないかと考えました。また、将棋の「王将」と「王覇」、本ブランドが目指すのが「王道」であることなど、“王”という言葉で共通していると考え、今回打診させていただきました。キャッチコピーは「贈るは、この一手」。大切な人にギフトを贈るのであれば、丸大の商品が最良の一手であり、確信をもって選んで欲しいとの思いを込めました。このほか、羽生棋士の揮毫を使用した新しいデザインの化粧箱を採用し、ギフトを受け取った方がより強く特別感を感じられるような仕掛けを施しています。
お歳暮を次世代に残すために、丸大食品だからできること
お歳暮は年の瀬に感謝の気持ちを伝える風習として、また、人と人とを繋ぐ文化として長きにわたって脈々と受け継がれてきました。しかし近年は、「お歳暮離れ」が叫ばれ、年賀状と同様に廃れていっていると言われています。そんな中で丸大食品は、お歳暮の慣習を守り、次の世代に贈り物の価値を伝え、贈り物にハムを選択してもらうにはどうするべきかという課題意識を持ち、新しい施策にも取り組んでいます。
この施策の一つが他社とのタイアップです。実際に今年のお歳暮シーズンには、京都の老舗米屋 八代目儀兵衛の「京の料亭米」と「王覇」を同梱したお歳暮ギフトを数量限定で販売を予定しています。山本は「今回はハム×お米ですが、ハムはご飯のおかずにもなりますし、ビールにも合う。そんなふうに食事をするシーンが想像できるような親和性の高いタイアップを今後も展開していきたいです。こうすることで、今までハムギフトを手に取らなかったような人たちにもリーチしていきたいと考えています」と話します。
また、次世代にお歳暮文化を残していくためには、若い世代へのアプローチが欠かせません。ギフト市場は現在60~70代の高年齢層が中心ですが、山本は「若い方にお歳暮の良さを知ってもらうには“カジュアル感”を打ち出すのも一つの手だと思います。たとえば、バレンタインデーだと自分へのご褒美や友人にプレゼントする『友チョコ』を購入される方がいますが、これと同じように、自分用、あるいは友人用のちょっとしたプレゼントなどに利用できるようにしていきたいです」と私見を述べます。
加えて、核家族化や一人暮らし世帯の増加も、これからのお歳暮を考えていく上で無視できないトピックの一つです。お歳暮文化はこれまで、年末年始に親類一同で集まる日本社会の伝統を前提に育まれてきたとも言えます。家族・親戚が一堂に会し何日も食事を共にするからこそ、大量の食品や酒類、飲料などを贈るお歳暮が重宝されてきたわけですが、小規模な世帯が増加傾向にある今、富田は「ライフスタイルに合わせた提案をしていかなければと思っています」と語ります。
富田:そのために現在注力しているのが「箱のコンパクト化」です。環境問題に配慮するという側面もあるのですが、「冷蔵庫にそのまま入れて保存したい」というお客様の声がありました。かつてお歳暮は、重量感があるものが価値があるとされていました。今もその価値観は残っているものの、一方で、自分用に買いたいという方もいて、その場合に「パッケージよりも中身を充実させてほしい」「包丁を使わない手軽さが欲しい」、さらには「色んなハムをちょっとずつ食べたい」といった要望も聞かれるようになっています。ですので、箱のサイズを小さくするとともに、これらのニーズを叶える商品を作り、お歳暮の購入者層を拡張して行ければと考えています。
どんなに時代が変わっても、贈答品を通して食卓に溢れる笑顔と大切な人との縁を育むお歳暮の風習は、決してなくすべきではありません。このかけがえのない文化を基幹商品であるハムを通して守るために、丸大食品はこれからも挑戦を続けていきます。
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