日本のシニアに「心から笑顔になれる高齢者住宅」を。~中楽坊ストーリー
「今の日本の状況はおかしい」。その想いが、シニア向け分譲マンション「中楽坊」誕生のきっかけに。
当時、北欧やアメリカの高齢者住宅を視察した私たちは驚きました。笑顔にあふれ、明るく幸福そうに老後を過ごしている方々の様子は、日本とはあまりに違っていたからです。
日本の施設では、入所している高齢者を弱者や子供のように扱い、狭い場所に押し込め、画一的なサービスを施すばかりで、まるで病院のように活気がありません。
「今の日本の状況はおかしい」。幸福な老後の生活、高齢者に心からの笑顔が生まれるような場を、日本にも創りたい。創らなければならない。
その時に湧いてきた、義憤のような、使命感のような感情が、シニア向け分譲マンション「中楽坊」誕生のきっかけとなりました。
●この国のどこにもない、新しい「高齢者住宅」の形を見定める。
とはいえ、海外と日本とでは、制度も文化も国民性も異なりますから、そのまま真似てもうまくはいきません。また、国内に参考になる事例は皆無です。理想の高齢住宅を新しく創造しようとしている以上、当然とは言え、高い壁に挑まざるを得ませんでした。
私たちは、高齢者や高齢社会に関する文献・論文を幅広く紐解きました。1万4千名を超える高齢者に協力をいただいて、アンケート調査やフィールドワークを実施しました。それらを元に徹底的に議論・検討・研究を重ねました。その結果、高齢者の心身を充足させ、笑顔を生み出すための「住まいの形」について確信を得るに至りました。
幸せな高齢期を実現する住まいは、現役時代に手に入れた広い一戸建てや、今どきのファミリーマンションでもなければ、要介護者向けの施設やサービス付き賃貸住宅でもない。高齢者向けのハード・ソフトを兼ね備えた、新しい「分譲マンション」であると。
●「笑顔が生まれる住まい」の実現へ、悩み、試行錯誤した日々。
そうしてシニア向け分譲マンションをスタートさせた私たちですが、すぐに現在のような、入居者の方々の笑顔、素晴らしいマンション内コミュニティが実現できたわけではありません。
何年も研究・検討を重ねてきてとは言え、実際に「入居者の方々の笑顔を創る」ことは、マンションという建物や設備をつくるよりもはるかに難しいことでした。
この国に真似るものがない以上、残された道は、これまでの研究と入居者の声を照らし合わせ、学び直し、修正する、試行錯誤しかないと皆で誓いました。
私たちは、生活支援やレストランなどのサービスを外注ではなく、自ら手掛けるように変え、入居者の方々と直接向き合い、その声に耳を傾け、心の通った対話を徹底しつづけました。その中から、心豊かな老後の生活の実現について悩み続けました。
●私達の役割は“明珠をいつくしむ場の提供”と気づく。
ヒントとなったのは、ある書家が私たちに示してくれた「明珠在掌」(みょうじゅ たなごころにあり)という禅語でした。
高齢者の方々は、実はすでに大切にすべき宝物(明珠)を手にしている(在掌)。例えば、子や配偶者との思い出、気の置けない友人たちとの関係、磨き上げてきた知識・技術、時間を忘れて没頭できる趣味、なお衰えない学ぶ意欲や知る喜び、豊富な人生経験に基づいた知恵、歳を重ねてきたからこそ得られる感性や視野…。
それらに気づき、心置きなく発揮して頂くだけでいい。私たちの仕事は安心や楽しみを改めて与えることではなく、既にお持ちの「明珠」をいつくしむ機会や場を創ることだけだと思い至ったのです。
そして、そのような機会・場を通して、外形的・金銭的基準による「極楽」ではなく、内面的で個別に異なるちょうどよい楽しみ(=中楽)、また、気の置けない仲間たちとの関係の中にいる楽しみ(=中楽)という幸福を味わって欲しい。そんな想いを「中楽坊」の名に込めたのです。
●「集まって住む」ことの価値。
以来、10年以上かけて10棟・約1500戸を提供してきた中で、大きな気づきもありました。それは「集まって住むこと」そのものに、超高齢社会における価値があるということです。
例えば、毎朝のラジオ体操やサークル活動には「見守り」の機能があります。ロビーでの人の行き来や声掛けや井戸端会議は、一人一人の存在を確認し、支え合う機会となっています。郊外の一戸建てに暮らす人が感じる不安や危険、隣人の顔も分からないマンションで暮らすような孤独感はありません。
ロビーで挨拶を交わしたり交流をしたりする日常は、体調の急変など、万が一の際の気づきや対応に大きな影響を与えます。毎日会うから、何かの時にすぐに気づいてもらえる。それが、集まって住む価値です。
ちなみに、老人介護施設では新型コロナウィルスの集団感染も発生しましたが、中楽坊の入居者はほとんどが要介護状態ではなく、生活支援サービスにおいて濃厚接触がないために感染リスクは格段に低くなります。いずれにしても、様々な体調変化に対しスタッフや入居者同士が気づける環境にあるのは、郊外の一戸建てとは違って、心強いことでしょう。
●100世帯で、顔見知りの「お抱えシェフ」と「生活支援員」を雇う。
重いものを運ぶ、面倒な書類を書く、難しい機械の操作、よく分からないことを教えて欲しいなど、高齢期にはちょっとした世話や手伝いを気軽に頼める人が近くにいることが大切です。また、料理を作るのがしんどい、億劫という時もあるでしょう。でも、普通の人にはお手伝いさんを雇うほどの余裕はありません。
でも、100世帯共同でなら生活支援員や料理人を雇うことが可能になります。一戸建てなら自分でしなければならないことが、皆で住めば助けてもらえるスタッフが雇える。サービスのシェアです。
顔見知りで、親しみを持って、気兼ねなく接することができるスタッフや料理人がいつでも近くにいてくれる。これも「集まって住むこと」の価値と言えるでしょう。
●目の前の入居者の方を、笑顔にすることだけを考えて。
上の写真は、2019年に撮影した実際の入居者の方の表情です。「世界一幸福度が高い」と言われる北欧の高齢者の笑顔を見て驚いた、あの日から十数年。私たちが追い求めてきたものが、ようやく実現しようとしているのが、おわかりいただけるのではないでしょうか。
私たちの使命は、すべての「中楽坊」においてこのような笑顔を創り続けること。楽しい高齢期、心豊かな老後の生活を提供し続けること。
近年、私たちを「社会的課題の解決企業」と呼んでくださる方もいらっしゃいます。もちろん、結果として活力ある超高齢社会の実現に少しでも貢献できれば幸いですが、私たちにとって何より大切なのは入居者の方々と心から向き合い、もっとたくさんの笑顔を創り出すこと。
それはとてもワクワクすることだと、私たちは思うのです。
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