【音のプロに聞いてみた!①】飲食店が工夫できる快適なおしゃべり空間のつくりかたって?
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音のプロに聞いてみた!シリーズ概要
40年以上に渡り商業施設や家電の最新の音を手掛けてきた
サウンド・スペース・コンポーザー井出 祐昭氏に
仕事の裏側や、私たちの傍にある音の問題、
今からでもできる音の工夫について聞いてみました。
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今回のテーマは「飲食店が工夫できる快適なおしゃべり空間のつくりかたって?」
「悩みを相談しに来たのに喋りづらかった」
「接待をしてるのに隣の部屋の声が漏れて落ち着かなかった」
そんな口コミに悩んでいる飲食店経営者の方々、実は多いんです。
今回は、飲食店のみならず、商談をするショールームや展示会ブース等でも使える「話しやすい空間の作り方」について聞いてきました。
雑音を無くせばしゃべりやすい訳じゃない?
ーまず、おしゃべりをするのに快適な状態はというのはどのような状態でしょうか?自分の話声が届いて、相手の声もしっかり聴こえる雑音のない静かな状態…
本当にそうでしょうか?
身に覚えがあるのではないでしょうか。勉強する際に適度な雑音のあるカフェのほうが捗ったり、余りにも静かだと上手く寝付けなかったり。これは人の心理状態としては非常に重要な視点で、実は遮音環境を作ると精神的にやられる人が多発するという話もあります。私たちの安心には適度なノイズが絶対必要なんですね。
商業的に考えても、ガヤが必要。活気が出てくるし、意外と静かな店って他の人に聞かれているような気がして、正直しゃべりづらいですよね。
「しゃべりやすい」は静かなだけではだめで、自分の喋ってる声よりも少しばかり小さい音量のノイズがある状態が理想的なのだと思います。
オシャレ建築は響きやすい
ーとはいえ、店に入って「うるさいなあ」と不快に感じることがあります。これは何が原因でしょう?
一つは、全体的な音が大きいということ。これは音が響き易い空間になっていることが原因です。
もう一つは、笑い声や吐出した大きな音が鳴る時も同じですね。これはなかなか防ぎようがないので、「響かない工夫」や「自分の声を通す工夫」をしていく必要があります。
実は、オシャレな建築材って、結構響くものが多いのです。ガラスや石、アルミや金属等、音が反響するものばかりです。お風呂の中みたいな状態です。
誰かが発した音が壁等に反射して、一つの音が色々なところで音のこどもを作っていきます。それが音を増幅させ、うるさくさせるのです。
客としてはどこに座るといいですか?
ーそういう中でも当然おしゃべりはしたいし、店に入って「やっぱりやめた」とも行かないですよね。
店の中でどのような席に座ればいいのかを知っていると楽になると思うのでお伝えしたいと思います。
ポイントは、「自分の後ろの壁」。
個室じゃなくても、自分の後ろにパーテーションか壁があると、自分の声が反射して前に飛んでいき声がはっきりします。
相手側も同じ様に壁のあるブースのような環境を選ぶと、周りがうるさくてもお互いの声は聴き取り易くなります。
端の席は、意外と音が集まってうるさくなりやすいです。
他の席に囲まれていないという意味ではいいのですが、単にコーナーというだけだと逆効果です。
入り口等オープンなエリアになっていると、音の反射効果は使えませんが、周りに人がいない空間が生まれるのでそれもアリです。
ソファーがL字やコの字になっている場所もお勧めですね。
お店側が今からでもできる対策は?
ーお店側としては、店内をぐるぐる回って、しゃべり声よりも少し小さい雑音で済む場所を知っておくと案内しやすいと思います。
また、物理的に改善する方法もいくつかあります。
お勧めは壁対策。
天井は消防法等も関連するので難しく、床は絨毯を敷くのが一番いいですが、大掛かりになってしまうので、まずは壁からやってみましょう。
ずばり、壁にタペストリー等、ファブリックのようなものを貼ると良いでしょう。
壁を吸音にするだけで大きく変わります。
更に工夫できる方は、「並行面を作らない」ということを覚えておくと最高です。
音が壁に真直ぐ当たって、そのままの角度で戻ってくると、その行き来の繰り返しで音が増幅してしまいます。
木のデコボコでも充分なので、できるだけツルッと並行にならないようにしてみて下さい。
深刻に悩まれている方は、消防法の制約の中でもできる対策もあるので安心して下さい。
壁全面で音を吸うのではなく、ゴ〇ブリホイホイのように、入ったら出られない「音のトラップ」を仕掛けることもできます。
今までは、音の対策を行う製品は岩綿吸音板等デザイン的な適合に難ありでしたが、最近はスマートな空間にも合うものができてきました。
この分野の技術もどんどん進化しているので、協力し合いながら、しゃべりやすい空間が増えていくと良いなと思います。
プロフィール
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井出 祐昭 HIROAKI IDE
サウンド・スペース・コンポーザー Sound Space Composer
有限会社エル・プロデュース代表取締役
井出 音 研究所 所長
ヤマハ株式会社チーフプロデューサーを経て、2001年有限会社エル・プロデュースを設立。最先端技術を駆使し、音楽制作、音響デザイン、音場創成を総合的にプロデュースすることにより様々なエネルギー空間を創り出す「サウンド・スペース・コンポーズ」の新分野を確立。イマジネーションを最大限に喚起する次世代の立体音響システム“ELPHONIC”を開発し、医療・健康分野との関連も深めている。
主な作品として、30周年を迎えるJR新宿・渋谷駅発車ベル、愛知万博、上海万博、浜名湖花博、表参道ヒルズ、グランフロント大阪、東京銀座資生堂ビル、TOYOTA i-REALコンテンツ、TOYOTA Concept-愛i、SHARP AQUOS、立川シネマシティ、世界デザイン博など。
またアメリカ最大のがんセンターMD Anderson Cancer Centerで音楽療法の臨床研究を行う他、科学と音楽の融合に取り組んでいる。最近では、日本ロレアルと共同で髪や肌の健康状態を音で伝える技術を開発。米フロリダ州にて行われた化粧品業界のオリンピックである第29回IFSCC世界大会、PR分野の世界大会であるESOMAR 2017にてグランプリを受賞。
http://elproduce.com/
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