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人の数だけ、物語がある

鮮魚居酒屋「四十八(よんぱち)漁場」が完全養殖クロマグロへの使用切り替えで願う持続可能性と、熱き担当者たちの想い

著者: 株式会社エー・ピーホールディングス


2010年から宮崎県は島野浦からの0日流通「今朝獲れ」鮮魚の取り扱いを開始し、2011年からは水産資源の持続可能性を願う思いを屋号に込めた「四十八漁場」を展開している株式会社エー・ピーカンパニーは、業態発足10年を目前に、提供するマグロを『完全養殖クロマグロ』に切り替え、より一層、サステナブルな魚食へのメッセージを強化していく方針です。


マグロは日本人にとって欠かすことのできない食材・食文化ですが、個体数の減少状況から国際事前保護連合(IUCN)は、ミナミマグロ、メバチマグロ、太平洋クロマグロ、大西洋クロマグロを「レッドリスト」に指定しており、マグロ消費大国である日本の動向は、世界中から注視されるものとなっています。

この状況のなか、種を守りながら文化や嗜好を守っていく方法として有効なのが、完全養殖です。卵や稚魚など、出荷サイズ未満のものを採取し、人の手で肥やして出荷する「養殖」に対し、「完全養殖」は、人工ふ化させた稚魚を親魚に育て、その親魚が生んだ受精卵を、ふ化~稚魚~成魚まで育てるもの。人工で、2代、3代先まで手掛けていき、天然資源に頼らずに魚体数を増やし、出荷することを目的にしているものです。

完全養殖マグロについては、約50年前から研究されており、2002年に近畿大学が成功を発表。2016年には商業ベースに乗せられるまでになっています。しかし、急がれるべき完全養殖マグロの普及の拡大は、コストの折り合いなどハードルが高く、なかなか追いついていないのが実情です。

お客様との最前線に立つ私たちは、これまでも未利用魚や今朝獲れ、神経締めなどの漁師の努力と魚食文化の重要性を伝える“媒体”としての役割を自認し、お店を運営してきました。完全養殖クロマグロについても、その素晴らしい味わいとともに、生産者の想いや、待ったなしの現状に対する問題意識を喚起し、完全養殖クロマグロが一般流通していくその一助となれるよう、努めていきたいと意気込んでいます。


私たちにとって大切な、ひとつの節目となるこの機会に、それぞれの立場からコメントを寄せてもらいました。

  1. 事業全体の責任者の視点
  2. 生産者、産地の想い
  3. 流通担当者の視点
  4. 店舗から見る本取り組み

少し長くなりますが、ぜひ最後までお付き合いください。


四十八漁場から持続可能性の狼煙を上げる

株式会社エー・ピーカンパニー 執行役員

兼 魚事業本部 本部長 兼 ブランド開発室室長

横澤将司


四十八漁場はこれまで、天然魚を持続可能性ある漁法で獲り、その価値を高める力と考えのある漁師と直結することで、漁業や魚食文化を盛り上げていく「居酒屋から漁業を創造する」という理念をベースに、お店を運営してきました。

美味しさは絶対条件に、漁師には1匹ごとの価値を技術により引き上げてもらい高く買う。これにより乱獲を防ぎ、当社は付加価値の対価を漁師に還元し、お客様は最高の鮮度の価値ある魚を食べられる。このALL-WINな関係を築くため、2011年に「四十八漁場」というブランドを作り、魚を提供して参りました。

事業規模の拡大に伴って、より漁業に関わり、漁師と膝を突き合わせて語り合うと、知れば知るほどその苦労や、自然を相手にすることの難しさに接することとなり、同時に、将来のために養殖という事業がどれほど大切なことかということも理解できるようになりました。

魚のビジネスに携わる者として、資源枯渇や魚食文化の衰退は絶対にさせない。漁業に携わる人や地域の繁栄を夢見て魚を売っています。

完全養殖クロマグロを通じて、私たちから概念変化を起こしていく時である、という気概で、この度の切り替えに臨んでいます。



<生産>奄美の完全養殖の現場から

マルハニチロ株式会社 増養殖事業部一同

有限会社奄美養魚一同


私たちマルハニチログループは、140余年の時を超えて、⽔産資源を中⼼とする「⾷」の提供を通じて⼈々や社会にそして世界においしいしあわせをお届けすることで、企業として成⻑してきました。

⾃然の恵みを享受して事業活動を営んできた私たちにとって、⾃然環境を守ることは、⾃らの事業を守ることでもあります。

水産資源を守りつつ、食卓から海の恵みを絶やさぬ方法とは?

そのひとつの答えが「完全養殖」でありました。しかし、完全養殖への道程は遠く、クロマグロは本来デリケートな魚で、環境変化に弱く、夜間にライトを当てようものなら驚いて逃げ、生簀にぶつかって負傷死します。あるいは産まれた卵も、水槽では容易にふ化しません。100万の卵から1万5千の稚魚を得るのに20年かかりました

前例がないだけに、暗中模索は続きましたが、1987年より完全養殖事業に着手し、ようやく2010年、民間企業として初めてクロマグロの完全養殖に成功しました。餌の問題など、まだまだ課題は抱えておりますが、これからも美味しいクロマグロが安定して食べ続けられるように、マルハニチロ、奄美養魚一同挑戦を続けていきます。

 

この度は、当社完全養殖クロマグロのお取り扱いをして頂き、感謝申し上げます。


<流通>共感と敬意の気持ちで届ける、完全養殖クロマグロ

株式会社セブンワーク

羽田センターセンター長 

平沼秀之


今回、完全養殖本マグロへの弊社取り扱いのマグロ切替えにあたっては、決定までに様々な葛藤があり、数か月間、会議や話し合いを重ね、ついに導入に至りました。

2048年問題の提起を屋号に掲げ、持続可能な水産資源の活用をひとつのミッションとする四十八漁場およびエー・ピーカンパニー魚業態にとって、完全養殖という取り組みには共感と敬意しかなく、すぐにでも導入に踏み切りたい反面、流通をビジネスとする私にとって完全養殖本マグロのコスト面の負担は軽視できない問題でした。

完全養殖は、稚魚を獲ってきて育てる通常の養殖と違い、マグロを一から育てる手間がかかる分、どうしてもコストがかさむのです。

せっかくコストをかけて導入する完全養殖本マグロの、その価値や意義が、はたしてお客様にまで伝わるのだろうか。

私達のこの決断にメリットはあるのだろうか。正直そのようなことも考えました。

ですが、私達がやらなければ誰もやらないかもしれない。

せっかく研究を重ね、手間暇かけられ育った本マグロの完全養殖が意義のある事に変わるのは、私達次第である!という志でおります。

水産業界の未来のためといっては大げさかもしれませんが、私達はこれからも海とお客様に真剣に向き合ってまいります。



<店舗>養殖のイメージを覆し、魚食の未来をつないでいきたい

四十八漁場 恵比寿店 店長

兼 魚事業本部サステナブル推進室 室長

高舘佑朋(写真右)


魚食の未来について語らせると、私の話はちょっと長くなります…。

とにかく一人でも多くの方にこのマグロを食べていただきたい、その思いで準備に携わってきました。

まずは美味しさに驚いてもらって、それから少しでも魚や漁業について知って、興味を持っていただけたら嬉しいです。


日本の養殖魚のレベルは、本当に高いものになっています。天然物と味わいの異なるところはありますが、技術革新や長年の研究により、とても美味しいものがでてきています。しかし、養殖魚のイメージは全くクオリティに追い付いておらず、毎日お店に立つ私はジレンマを感じています。


完全養殖クロマグロを導入することが議論され始めた昨年の夏ころ、私は店舗を代表して、実際に奄美大島の養殖場にある生産現場を視察してまいりました。


味わうだけでなく、実際の現場を目の当たりにしたことで、このマグロをお客様が楽しんで下さる様子がありありと脳裏に浮かび、その意義を確信しました。

味の決め手となる餌の質はもちろん、マグロが育つ環境もこれ以上ない美しい環境で、徹底的に管理されている。

そして何より印象深かったのが、マグロを育てる全てが未来のために在るというその事実を目の当たりにしたことでした。

環境への配慮、地域への貢献、従業員一人一人まで浸透している理念。

現場にいるすべての人が、美味しいマグロと美しい海を未来へ繋ぐ…その一心で肌を焦がし、汗を流していました。


私は心から、このマグロを一人でも多くの方に食べてもらいたいと思いました。


マグロは日本人の魂に根付いたご馳走の一つだと思います。

晴れの日やお祝いごとには欠かせないし、マグロがない寿司なんて考えられない。無形文化遺産に登録された和食においても、マグロの存在がいかに大きいかは言うまでもありません。


しかし、そのマグロが絶滅危惧種に指定されていることを一体どれだけの日本人が知っているのでしょう。マグロだけではなく、天然の魚介類の個体数がどんどん減ってきているのを一体どれだけの人が認識しているでしょうか。


ただマグロが食べられなくなる、魚が食べられなくなるだけでは済まない問題がもうそこまできています。

水産業が崩壊すれば、日本を360度囲む漁村は崩壊し、経済も食料自給率もさらに大きく傾くでしょうし、寿司や和食といった文化の存続さえ揺るがしかねないと思っています。

                                                                                                                           

食文化や時代は目まぐるしく変わりますが、守っていかなければならないものも確かに存在する。

100年先の未来に美しい海と美味しい魚介類を残せるように、想い有る生産者様と挑むこの挑戦に胸が高鳴ります。

業種を超えて繋ぐこの想いのリレーがお客様の心に届き、水産業の現状を知り、変えたいと思う人が一人でも増えるように、この完全養殖クロマグロに関わるすべての皆様の努力を胸に刻み、責任を持ってその価値をお客様にお伝えしていきたいと思います。



四十八漁場について

http://www.48gyojyou.com/about/


四十八漁場店舗情報

http://www.48gyojyou.com/shop/

※新型コロナウィルスの影響により、臨時休業等の可能性があります。

営業状況を店舗にご確認の上、お越しください。




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