映画制作から従来の勉強とは違った学びの在り方に気付いた話〜シネマ・アクティブ・ラーニングを生み出すきっかけ〜

「映画制作には学校で学ぶ全ての科目が含まれている」




私は現在、映画監督として活動をしながら、映画を通じたワークショップを各地で開催しております。
そんな私ですが、実は、元は大手予備校の物理講師であり、
映画業界とは全く縁遠い人間だった
のです。
そして、映画を作る過程には、学校の既存の科目とは全く違った学習方法に気付いたのでした。

映画制作は、学校の新しいカリキュラムに成り得るのではと思えるように至った過程を
順々にお話して参りたいと思います。

大手予備校講師時代

私は大学卒業と共に、大手予備校講師の物理講師になりました。
当時は将来への夢や目標もなく、一番身近な職業、というよりかそれ以外の職業を知らなかったので、
大学受験で接していた予備校の講師になったのでした。

特に物理は大の苦手科目で、その悔しさから物理学科に入り、
予備校では物理を教えるようになりました。

物理という科目は、他の科目と違い暗記が役に立たず、
現象の背景や過程を手順を追って組み立てていく必要があります。
ナゼ? を掘り下げていくことが重要な科目なのです。
学生当時、暗記ばかりに頼っていた自分にとっては、全く歯が立たない科目でした。

講師をするようになって思ったことは、物理は国語と数学のかけ算の科目であり、
ドミノ倒しのようにストーリーを追って解析していけばなんら難しくない科目だということでした。


「TEACHING IS LEARNING」

予備校講師を目指す中で、苦手科目がなぜ苦手だったのかに気付いた自分にとって、
生徒に向けて、噛み砕いて物理を教えるようになったことで、
全く理解ができなかった物理が手に取るように理解できるようになったのでした。

その時に気付いたことは、
学びとは、受け身ではなく、自ら発信することで課題を見つけ、理解を深めることができる
「教えることが最大の学びである」
ということに気付いたのでした。


そんな予備校講師を始めてから、年を追うごとにいろいろな疑問が生まれてきました。


・受験をするための勉強に本質的な意味があるのか?
・偏差値や有名学校を目指す為に勉強することに意味があるのか?
・そもそも、勉強とは何の為にするものか?


有名な大学に入るために受験勉強をしていた自分にとって、
目標もなくただ与えられた内容を勉強し、点数で他者と比較する在り方に疑問を抱いておりました。

大学も名前や偏差値だけで選び、入学した後にその大学の特徴を知る在り方にも
疑問をもつようになりました。

自ら発信することに学びの面白さがあることに気付いた自分にとって、
ただひたすら受け身で一人黙々と勉強をする受験勉強は、
学びの在り方に於いて逆行しているのではないかと考えるようになったのです。


不思議なめぐり合わせから映画業界に

予備校講師をするようになった年の2004年に、
不思議なめぐり合わせから映画業界に足を踏み入れることになりました。


小さい頃からテレビの世界に憧れていた自分でしたが、
そんな業界にどうやったら入れるのか? 全く分からなかった自分が、
高校時代の知り合いを通じて、偶然映画業界のアシスタントをするようになったのでした。

当時は、朝5時まで制作現場でアシスタント、
朝の8時から数時間、予備校講師として登壇という

真逆の生活を一緒に行っておりました。

アシスタント生活は、怒鳴られ叱られ、過労を強いられ、
予備校講師生活は、22歳で先生、先生と持ち上げられ、
そんな真逆な対応をされる生活を一日で半分半分繰り返していたのでした。

映画の現場で早稲田であることを笑われる

社会人にもなったことなく、映画の業界のことも全く知らない自分がいきなり映画の制作に
放り込まれたので、当時は、何をすることもできず、
ただあたふたとして迷惑ばかり起こしておりました。

自分の映画のチームは20名程度で動いておりましたが、
ベテランのスタイリストからは、

現場のスタッフ
「こいつ早稲田だぜ! お勉強しか知らないお馬鹿さんだぜ」

としょっちゅうからかわれておりました。

映画の現場で知った自分に足りないもの


・自分中心に物事を考えていた

誰かと何かを組み立てることができなかった自分にとって、
映画の制作現場は、20〜30名のスタッフが一斉に動くので、
自分勝手な行動を振る舞ったり、勝手な憶測を付けたて行動したり、
チームの輪を乱すことばかりでした。


下は10代から上は60代以上という現場の中で、
年上だけでなく、年下の俳優にもよく叱られておりました。


・他者との協調性、相手の気持ちを考える姿勢

みんなが一つのことに向かっている時に、自分中心の考えや行動を取る癖がありました。
映画の現場では、それは全く許されないので、徹底的に指導を受けて、
チームとして行動をする習慣を身につけました。

特に上下関係が強い映画の現場では、指示系統はトップダウンな訳ですから、
上の指示に従い行動するというごく単純なことを徹底的に覚えていった訳です。

またプロの俳優を前にして、失礼な行動を取らないよう、
配慮や心配りを叱られながら覚えていきました。

予備校講師を10年続け、映画業界に10年を過ごし

10年続けた予備校講師は辞めました。
予備校の時給は、他のバイトからすると日給に近い金額をもらえる仕事なので、
こんなに美味しい仕事はないのですが、
この業界では自分のやりたいことができないと思い、辞めることにしました。

その理由としては、
大学の受験の在り方は、昔から今までほとんど変化がなく、
個性や主体性が求められる現代社会に、その仕組みそぐわない
と感じたからです。

また、現在は社会人に於いて求められる
社会人基礎力(前に踏み出す力、考え抜く力、チームで働く力)というのがあるのですが、

大学受験では全く教わらないのに、社会に出たら知識ではなく、
すぐに人間力を求められるという矛盾
を抱え、
その矛盾した日本の受験社会で仕事をするモチベーションを感じられなくなったからです。

そして、予備校の講義では出来なかった講義の在り方を映画の観点から現在行うようになったのです。

映画制作には、人間力を養う力を秘めている

映画制作は、学校の科目でいうと「体育(スポーツ)」×「美術」なのです。

美術のように作品を1つ完成させるのですが、一人では作り上げることができないため、
スポーツのようにチームでの連係プレイが重要になります。

映画制作は、

物語を考える=企画力、構築力、
俳優やスタッフと物を作り上げる=交渉力、コミュニケーション力、
撮影や編集でイメージを他者と共有し具現化させる=表現力や発信力


など様々な人間力を養うことができる要素が沢山含まれていることに気付きました。

大学受験のような詰め込み型の勉強ではなく、
理論と感性を兼ね備えた右脳×左脳の学習効果が映画制作には含まれているのではと思うのです。


机の上で黙々と勉強する従来の学習方法は、学びにおいて非効率であることを感じ、
「体験型」で学びができる仕組みを行っております。

1テーブル4名のワールドカフェ形式を取っております。
上記に掲げた「TEACHING IS LEARNING」の考えより、
「受講生皆さん=先生」である考え方を元に、私はファシリテーターとして、
質問の投げかけ、回答の誘導や各テーブルの知的交配を促す役割を行っております。


映画はストーリーから出来ております。
ストーリーは、人生に於いての設計、仕事やプロジェクトに於いての企画立案など
様々な場面に応用出来ることを、身近な映画の作品、映画の歴史から質問形式で話を進めていきます。


レゴを用いたり、ポストイットを使いながら、
自分の中に生まれたストーリーを他者と共有するために可視化させていきます。


映画に出てくる俳優の動き、感情表現などを一般の方にも分かりやすいように
ゲーム感覚で体験をして頂きます。


iPadやiPhone、ハンディカムを使いながら、チームで外に出向き、
「監督」「撮影」「俳優」の役割分担を行い、撮影をしてもらいます。



撮影が終わったら、すぐに編集を行い、作品の発表会を行います。

予備校で物理を教えていた時とは全く違う形態のワークショップを行うことで、
考える力を主体的に養って頂き、他者の気持ちを身体ワークを通じて感じてもらい、
チーム一丸となって作品を生み出すコミュニケーション力を育んでもらいたいと思っております。
これは、自分が受験勉強では養えなかった、
「主体性」「表現力」「コミュニケーション力」を映画制作を体験しながら、
向上させていくことができるということを各地の会場で行っていて、感じております。


映像原理:理科

企画立案:社会

脚本作成:国語

予算作成:数学

画コンテ:美術(デッサン)

撮影:体育

編集:美術(造形)

MA:音楽

字幕作成:英語

上映によるディスカッション:道徳

という形で各工程に、学校教育で学ぶ様々な科目が織り交ぜられていることが分かります。

自分が長年疑問に思っていた詰め込み型、偏差値重視の日本の教育がこれからは、
心や感性、他者との協調性や思い遣りを大切にできる教育に進んでいけるよう
このワークショップを積極的に展開していきたいと考えております。

サンプル映像(Find!アクティブラーニング)

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