「死ぬまでに会いたい奴リスト」に載ってる奴らに会ってきた話 〜ローマ編〜

3 / 3 ページ

次話: 続「死ぬまでに会いたい奴リスト」に載ってる奴らに会ってきた話 〜ローマ編〜


● そして18年後


更に時は8年が経過して先々週の話し。ふと、そんな出来事を思い出しながら、Facebookで名前を検索してみた。


これはイタリアに限らず海外在住してたら多分普通の事なんだろうけど、通常お互いの苗字を知らないのね。ビジネスでもプライベートでも苗字を名乗る事はまずなかったし。

おまけに当時は携帯電話もメールもインターネットも無い時代だったから、現代と違って実家の家電の番号を知らないとお互い繋がれない。つまり余程珍しい名前じゃない限りSNSでもGoogleでも探し当てる事が難しい。


でもね、本当偶然なんだけど、いろいろ当時の記憶をずーっと深くまで辿っていたら、ふとマルコの親父さんの苗字を思い出す事ができた。

実は当時の仕事上その親父さんの苗字をひょんな事から知る機会があり、そんなに多くない苗字だった事を急に思い出したんだ。


で、苗字を入れてマルコをフルネームで検索してみたら…発見!!!イタリア系コミュニティに参加してるしまず間違いない。


っていうか日本人と結婚して日本に住んでる!しかも関東!


本当はこのままFacebookでメッセージ送って「久し振り〜」とかやってもいいのだけど、それじゃあつまらない。勤め先でも自宅でも何かしらの手掛かりがないかと携帯アップロードの写真を丹念に見ると…手掛かり発見。


自宅で撮影したと思われる写真には位置情報がついてなかったけど、年賀状の写真があって番地はなかったけど住所の一部が掲載されてた。

で、他の写真に写ってる家の外壁の色を頼りにGoogleストリートビューを動かす事5分。あっけなく家を特定。もうやってる事が探偵かストーカーだよ。。





暫らく彼のFacebookを見ていると衝撃の事実が。


マルコの奥さんもその10人グループの中の1人、ミクだった事が判明した。まさかあの2人が結婚だと?!ってなったね。



● マルコと再会


そしてとうとうそいつの自宅に突撃をかける時が来た。21時頃目的の家に着くと玄関だけ灯りが点いてるが家は真っ暗。念の為イーターホンを押すも誰も出ない。家の前に駐車したままだと近所迷惑だろうと通りの方に車を停めて待つ事30分。一台の車が目標の家の車庫に入ったのを確認して真っ暗闇の中、車の運転席に近付く。どうやら奥さんの方だ。


相手からしたらヘッドライトに映されながらゆっくりと近づく私の姿を見て相当恐怖だったと思う。


警戒しながら窓が少し開いたところで俺から「久しぶり。」と一言。まだ全く誰だか解ってない様子。暗がりだという事もあるけど18年も経ち、当時は長髪だった私が現在坊主頭という事も考えたら昼間でも判らなかったと思う。

ローマのカネアキだよ
ミク
えーーーーーーーーーーーっっ !


想像通りのリアクションありがとうございます。その場で少し話した後に近くのファミレスに移動、マルコは都心の仕事場から帰宅途中だったから急いで合流する様に連絡を取って貰った。


マルコが合流してからは色んな積もり積もった話しをして懐かしんだけど、いよいよあの事を尋ねてみた。


「昔さ、スペイン階段に座りながら約束した事覚えてる?」って2人に尋ねたら、ミクの方は「そんな事あったねー、懐かしいー、もちろん当時は日本に居て、忘れてたから行かなかったけど。」という回答だったけど、マルコの方は「そんな約束したか?全く覚えてないわ」と。。。


この夫婦曰く、恐らくジョルジオとファブリッツィオのイタリア勢含め、間違いなく誰も行ってないだろうとの事でした。

曰く、あのメンバーの中でも一番しっかりしてる私でさえ忘れてたぐらいだから、誰一人覚えてるヤツは居ねーよと。


今から思えば「10年後の今日、この時刻」って約束がまずかったと思う。誰かの誕生日とか、イタリア人ならまず忘れない12月8日とかにしてたら誰かしら来てたかもなーと。



● ジョルジオとつながる



マルコはタカやゴウの連絡先は知らなかったが、ローマに居るジョルジオとファブリッツィオの両名とはFacebookで繋がっていた。2人はまだ仲良くつるんでいる様で2年程前に観光で来日していたらしい。


その後ジョルジオとはFacebookで繋がり、メッセージでやりとりしたんだが、そこからまたまた偶然にもジョルジオのお母さんがタカの苗字を知っていた。


これはさっき知ったんだけど、私がミラノに行った後、タカは仕事を辞め家を転々としたりテルミニ駅でホームレスと一緒に寝ていた時期があり、それを知ったジョルジオのお母さんが心配してジョルジオの家に暫らく住むよう計ってくれたという。


なんという偶然!俺もマルコもミクも知らないタカの苗字を遠く離れたローマから、しかもジョルジオのお母さん経由で知る事になるとは。



● タカに再会 1


それから俺の行動は早かった。昔タカから聞いた地元話の記憶を辿り、ヤツの実家があると思われる街の候補は4駅に絞り込んだ。


そして実家は建築か建設か設計か土木かリフォーム、工務店系の会社をやっていた…はず。


早速「地名 業種 苗字」でググったらいくつか怪しいのが出てきた。


苗字が同じというだけで、もしかしたら違うかも知れないが、そのタカと同じ苗字の人が代表を務めてるそれらの会社に一軒ずつ行ってみる事にした。


※注  俺、決して暇じゃない。


木曜日に18年振りの再会を果たしたところからいろいろ繋がり、僅か3日後の日曜日、もちろんマルコの時と同じ様にアポなしで会いに行く事にした。ただマルコの時と違うのはそこにタカが居るという確証がないのだったが。


その会社はどうも事務所っぽくなく、どうやら本社住所は実家になってるらしく住宅街にあった。通りから路地に入り、その会社の代表取締役と同じ苗字の表札の前で車を停めて外に出た。

いざインターホンを鳴らそうとした時に、子供とおっさんの話し声が聞こえてきて、ふとそちらを見たら、ガラの悪そうなおっさんが子供と一緒にこちらに歩いて来て、会釈された。

.....タカ...か?
タカ
はい?......???
タカ !!!
タカ
....... !!!!!


劇的な再会にお互い走り寄りガシッと強く抱き絞め合ったんだけど、多分細身の人なら背骨肋骨折れてる位強く抱き合ったわ。





相手も私と同じ年齢体格のおっさんだったので、多分周りから見たらアレ、薔薇族系の撮影と勘違いされてる可能性が高い。タカと一緒に歩いてきた子供は目の前で何が起こってるのか理解できてないらしく、抱き合うおっさん2人を見ながらドン引き状態。


「なんでこの場所がわかった?」という当たり前な質問と共に立ち話もなんだから上がっていけと。

会社住所と思われた場所は、やはりタカの実家で、家にお邪魔すると日曜日の孫達との団欒をぶち壊す様な突然の来客にも、タカのご両親も奥さんも快く出迎えてくれた。


まさか今日中に本人に辿り着けるとは思ってなかったから手土産一つも持たずに申し訳なかった。

タカと話してると、マルコの時もそうだったが18年間完全に忘れてた思い出がどんどん蘇る。


● タカに再会 2


それから場所を変え喫茶店で懐かしい話しをしてたら、なんと当時のメンバーだったゴウとカズの連絡先を知ってるという。


聞けばこのゴウは俺がミラノに引越した後にタカを追う様に日本に帰国。

しかし元々「何かを成し遂げるまで帰国は許さん」と父親に飛ばされイタリアに来ていた身だからすぐにまた日本を追われたらしい。(どんな親やねん?)


そして某国に渡りすぐ、とある容疑で捕まり僅か数十分のあっさりした裁判の末、まさかの死刑宣告され実刑確定。

しかしヤツも相当太い運を持ち合わせてるらしく、ピーな都合でピーな力を使い釈放、国外退去で死刑を逃れたんだと。


東南アジア、特にベトナムやタイの刑務所には悪さして捕まった日本人が結構いるとは聞いていたが、まさか知り合いが死刑アリの国で捕まってるとはね。。


私も大概、経験値は半端じゃなく高い方だがヤツの方が遥かに高かった。死刑宣告って。。。



そう言えばこんな話しもされた。ここまで散々お互いに機関銃の様に懐かしい話しが繰り出されてたのだが、一旦話しが途切れた時に急にタカが「あーっ!」って小さく叫んだ。


タカ
俺、埋めたんだよ
ん?? 何を?
タカ
俺、ローマを離れる時に、またローマに戻って来れますように…って願いを込めてある場所に大事なモノを埋めたんだよ


詳しく聞いてみると、どうやら小学生がやってる様なタイムカプセル的な何かを初代ローマ皇帝のアウグストゥスのお墓の近くに埋めてきたらしい。

この人、アウグストゥスさん。



おいおい…なんという場所に埋めたんだよ?ローマはどこでも穴を掘れば遺跡が出てくるから下手したら法律に抵触するよ。更に詳しく訊いて一応遺跡として保護されてるエリアではない事が確認されたので良かったんだが。


そんなこんなで積もる話しは尽きなかったが今度タカとゴウとカズの休みの合う日に集まる約束をしてその日は別れた。



● エピローグ


今回、本来ならもう二度と会う事はないだろうと思っていた旧友と会う事ができた。インターネットを駆使してマルコとミクと再会し、そこからジョルジオとファブリッツィオとFacebookで繋がり、そしてジョルジオのお母さん経由でタカまで探しあて、タカを通じてゴウとカズまで繋がった。


インターネットって凄いね。本当に凄い。

ただあのメンバーの中で、唯一探したけど見つからなかったのがノリコだった。彼女は元々機械やネットとか弱そうで、当然本名でSNSもやってないし、タカが持っていた唯一最有力連絡手段だった実家の電話番号は現在使われておりません…で繋がらない。彼女の知り合いがこのストーリーを読んでそれをノリコが聞き、都合よく私に連絡してこないかなー、、、なんて少しだけ期待している。


ジョルジオとファブリッツィオは結婚はまだらしいが、今もローマで真面目に仕事をしているらしい。


タカは次期社長として現場見習いしながら4人の子供達に囲まれ幸せに暮らしている。


ムネは結婚してるか分からないけど、東海地方で宝石会社の役員をやっている。


マルコは日本で某東証1部上場企業で上級役職。ミクと2人の子供と暮らしている。


カズは法律関係を勉強しており将来はそっちの道にいくようだ。


ゴウは一度結婚して最近離婚。今のところ定職に就いてるけど、あの感じではまた親父さんの命令でどこかの国に飛ばされそう。


こんな感じで、みんな元気でそれぞれの道を歩んでいる。そして俺はというと…


今が2014年再来年2016年の11月で、あの約束の日から丸20年が経過する。"10年後のあの日あの時刻あの場所"での再会が果たせなかったので、"20年後のあの日あの時刻あの場所"に、行方不明のノリコや不定期参戦してたイタリア人含むあの当時のメンバー全員で集まるっていう企画を密かに企んでいるのであった。



最後まで読んで頂きありがとうございました。


この手のエピソードは20~30はあるので、また気が向いたら書こうと思います。


続編を書きました→

続「死ぬまでに会いたい奴リスト」に載ってる奴らに会ってきた話 〜ローマ編〜






続きのストーリーはこちら!

続「死ぬまでに会いたい奴リスト」に載ってる奴らに会ってきた話 〜ローマ編〜

著者の奥野 兼明さんにメッセージを送る

メッセージを送る

著者の方だけが読めます

みんなの読んで良かった!

STORYS.JPは、人生のヒントが得られる ライフストーリー共有プラットホームです。