元彼と「友だち」になれるのか?

当たり前のことだけど、生きていれば好きな人がいて、恋人が出来て、デートしてキスしてセックスをして・・・ごく当たり前の人並みの恋愛を経験するものだ。

新しい恋人ができるたびに「これだけ好きになれるのはこの人しかいない」と感じ、「世の中にこれほど幸せな思いをしている人がほかにいるだろうか」と感じ、自分たちは特別だと勘違いすることも、また恋愛のだいご味かもしれない。


13歳で初めて彼氏ができた。

付き合うということがどういうことか、彼氏や彼女という立場になったときに何をするのかということが分からなかったその頃は、恋人ができたといえど何をすることでもなく、毎日一緒に下校して友だちに「ヒューヒュー」と冷やかされたくらいだ。

けれど、両想いという安心感、自分たちが好き合っているということを周りに認められているという感覚が心地よかった。


やがて高校生になり数人との恋愛を経て、17歳のときにできた彼氏は今まで好きになった人とは全然違った。

もちろん、多くの女性が「この恋は特別だ」と思うように、私の恋もそこらへんのどの女でも感じる陳腐でありふれた感覚だったのかもしれない。

でも、明らかに、全然違ったのだ。


同い年の彼は、自分の周りにいた男子とは全然違い、自由で頭が良くて面白くて堂々としていて、そして16歳なのに平然と女の子に優しくできる大人びた人だった。

彼は友だちの前でも私のことを堂々と紹介し、好きだと言ってくれた。最初はなれないストレートな愛情表現に困惑したものの、気持ちを言葉で伝えることがどれだけ素晴らしいことかということを彼との恋愛で知った。

誰に対してもまっすぐで、嘘偽りがなく、男らしい。

「恋人」という関係を抜いたとしても、一人の人間として彼のことを心から好きになった。

そしてなにより、昔から人より目立ちたがり屋でしっかり者で男勝りの自分が、これほど安心して頼れる人に出会えたことに驚き、人として尊敬できる相手と気持ちが通じ合っていることが嬉しかった。


恋愛経験の少ない頃は、恋愛が人間関係の延長だということを知らず気持ちのままに体当たりをしてしまうものだ。

恋愛が順調であっても不安になり、トラブルが起きても上手に対処ができない。感情が先行し、今の関係上手く続けていくことよりも、自分の思いがなぜ相手に分かってもらえないのかということが最大の悩みとなる。

だからこそ、付き合いが3カ月続けば”長いね”と言われ、半年続けば”すっごく長いね”と言われ、1年も付き合おうものなら周りのだれもが驚くのが、学生時代の交際というものだ。


それほど好きになれた彼とも、付き合いだして半年後には別れがやってきた。

きっかけは些細なこと。その頃の私は、やはりトラブルに直面した時に上手く対処できる方法を知らない17歳の高校生で、彼もまた、そんな不安定な17歳の女心にうまく対応できるほど大人ではなかった。


彼氏彼女という関係でなくなっても、私はずっとずっと好きだった。

今考えると、大人からすれば寒気のするような恋の歌で人気になった歌手の気持ちがわかる。
彼に震えるほど会いたかった。好きで好きでたまらず、会いたくて仕方がなかった。

何度も彼とヨリを戻したいと言ったけれど、彼は拒否した。

仲のいい女友だちなら、仲良くできる。でも、別れた彼女と何もなかったように仲良くできるほどの器用さは、いくら大人びていたとはいえ高校生の彼には持ち合わせてはいなかったようだ。

そして、彼とのあいだに少しずつ距離を感じ始めた頃に私は決めた。

「友だち」になろうと。


好きな気持ちを押し殺し、心の中の奥底にしまい、二度と彼への思いは出さない。

「今はダメでもいつかは彼と・・・」

そんな気持ちは、今日を最後に二度と出さない。

彼との関係は、ただの友だち。

一生、ただの友だち。



彼とはその後、15年ものあいだ「友だち」としての関係を続けている。

彼の家に泊まりがけで遊びに行ったこともある、彼の家族と一緒に何度もご飯を食べたこともある。

自分の恋人と一緒に飲みに行ったこともある。(もちろん付き合っていたことはあえて言わなかったが)


あの日、彼と「友だち」でいることを選んだときから、

彼とは今も「友だち」だ。



今、私のなかに彼に対する恋心があるのかと聞かれたら、正直わからない。

でもおそらく多分、ないと思う。

彼に恋をしていた頃の気持ちは今でも鮮明に思い出す。

思い出して胸がドキドキしたり、チクっと痛む感覚だって妙にリアルだ。


だけど、彼と「友だち」でいようと決めた日から、私たちは「友だち」なのだ。

だから、恋心があるかどうかは「ありえない」のだ。

胸の奥にしまって二度と出さないと決めた気持ちは、この先も二度と出てくることはない。


どちらかが少しでも恋心を出してしまうと、男女の関係は崩れてしまう。

もう二度と友だちに戻ることもできないかもしれない。

恋愛とはそういうリスクの高い、一種の賭けのようなものなのだ。

だからこそみんな、恋愛に悩み、慎重になり、失敗したり痛い目を見たりするのだ。

辛い思いやぐちゃぐちゃに揉めた経験も乗り越えて、今やっと「友だち」になれた。

この関係を崩してまで、リスクの高い恋愛に戻ることは、まるで考えられなかった。


彼が結婚をすると連絡してきたときも、心から嬉しかった。

一般的には、一応「元カノ」になる私にきちんと報告をしてくれることが嬉しかった。

彼も友だちだと思ってくれている、そして私は彼の幸せを喜べた、それが嬉しかった。


多くの男女が、結婚をして子供ができると付き合いが疎遠になってしまうように

やがて私と彼も、”昔仲良かった友達”程度の関係になってしまうだろう。

それでも良い。

友だちという関係は、何年たっても変わらない。

私は元カノではなく、彼の「友だち」なのだ。

昔の自分をよく知ってくれている安心感のある存在。

そう、彼とは「友だち」だ。

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