マンションの踊り場にゲロ吐いてバレたヤフーな話(かんちゃん3 ゲロ×ヤフー)

前話: パスワード入力という単純作業を大事件に仕立てあげた犯人検挙の話(かんちゃん2 パスワード×アスワード)

僕の以前勤めた会社に、1歳年下で半年先輩という仲のいい社員がいた。

名前を「かんちゃん」という。


※画像はイメージです。かんちゃんではありません。



名前に見覚えがある方もいるかもしれない。

前回のストーリーにも登場した。


カラオケで日本酒を飲み過ぎて失踪未遂

かんちゃん1(カラオケ×日本酒×失踪未遂)

パスワードの入力という単純作業ですらも一大イベントに仕立てる手腕

かんちゃん2(パスワード×アスワード)




かんちゃんはすごい。

どうすごいかというと、

お酒の飲み過ぎで自宅マンションの階段の踊り場でゲロを吐いてしまったことがある。

これだけでもまあ迷惑行為なのだが、すごいのはこの後である。

朝起きて程なくするとマンションの管理会社から電話がかかってきたというのだ。

内容は、なんとびっくり「マンションの踊り場でゲロを吐くな、ふざけるな、またやったら追い出すぞ」というような趣旨だったそうだ。


かんちゃんはその場で罪を認め、謝罪に努めたそうだ。

僕には不思議だった。

そこでぼくはかんちゃんに疑問を投げつけた。

「なんでかんちゃんがやったってバレたの?」

「証拠ないじゃん」

「"僕じゃありません”とかとぼければよかったんじゃない?」


かんちゃんの答えはこうだった。




かんちゃん
とぼけるわけにはいかなかったんよ。
かんちゃん
だってそのゲロが僕の自宅まで続いていたんだもん。


さすがかんちゃんだ。


ヘンゼルとグレーテルもビックリ、パンくずならぬゲロで自宅までのみちしるべを作るとは。

己の常識でかんちゃんを測ろうと思った自分が、いかに浅はかだったか思い知らされた。


かんちゃんは踊り場でゲロを吐き切ったのではなく、全容量のうち約40%を放出し、残りは自宅での放出を計画していたらしいのだ。

そもそも自宅まで残り数メートルという踊り場での放出自体が、我慢の限界のための不意のアクシデントなのだ。


常人ならばもちろん自宅まで我慢、

それが無理でもそこで吐き切って自分で処理、が頭に浮かぶだろう。

姑息な人ならばそこで吐き切ってとぼけることが頭に浮かぶだろう。


しかし彼は違かった。

踊り場で40%放出、自宅までの道中で40%を定点放出、自宅の玄関で15%を放出、

自宅のトイレで残り5%を放出という実に見事な分割放出法を編み出したのだ。


いかに限界だったのかが分かる。

「我慢するつもりで精一杯頑張ったけど失敗しちゃった」を全力で体現しているのだ。

こんな一生懸命はみたことがない。


※画像はイメージです。かんちゃんではありません。



ーこんな具合だ。

そんなかんちゃんが、またやらかしてしまった。


当時のわれわれの仕事は、ECサイトの立ち上げなのだが、 

社長との細かいやり取りが続いており、

社長からの指示で、ヤフーやグーグルの広告提供形態を調査していた。 


そこで、われらがかんちゃんの登場だ。 

グーグルとヤフーの資料を提出するときのこと。 

かんちゃん
部長!これ、確認のうえ、提出お願いします!

かんちゃんが苦労感たっぷりに、自分が調べあげた資料を上司に手渡した。 

部長
お!早いね!
かんちゃん
はいっ!

忙しさのなかに、生きがいを見い出すかんちゃんが、輝いて見えた。 


しかし・・・。 

部長
・・・。
部長
かんちゃん・・・。
かんちゃん
はい?
部長
ヤフーのつづり、間違っているよ・・・。

僕は、隣で聞いたとき、戦慄が走った。 


にー
(あの、有名なヤフーのスペル(Yahoo!)を間違えた? )
にー
(あの、簡単なスペルを!?)
にー
(芸人ナイツが、ヤフーをヤホーって言っただけで全国でウケる、あのヤフーのスペルを!?)
にー
(ヤホー1つですでに出尽くした感があるのに、これ以上どう探せばいいんだ!?)

僕には、どんな間違いか、想像がつかなかった。 


僕は好奇心を抑えきれずに、かんちゃんより先に問題となった提出物を覗き込んだ。

※うちの会社は、指示に対する手書きでの返答が認められている。 

かんちゃんの提出物は3枚あって、すべてがヤフー関連の調査結果で、手書きだった。




≪1枚目≫

『Yahho!』調査結果、

添付します。




≪2枚目≫

『Yahho!』調査結果、

添付します。




≪3枚目≫

『Yahho!』調査結果、

添付します。




・・・・・・・・・。




『ヤフー!』じゃなく『ヤッホ!』になっている!!!!!


3枚とも!!!


かんちゃん! 


かんちゃん!


かんちゃん、かんちゃん!かんちゃん!!!


かんちゃんのハニカミ顔が夕日に照らされて、やけに美しかった。


おわり


※ストーリーに面白さを感じていただけましたら、おもしろ体験系で"ギリギリセーフの奮闘記「ゲイのおっさんにお持ち帰りされた話」"というストーリーも投稿しておりますので、そちらもぜひお読みいただければ嬉しいです。

ゲイのおっさんにお持ち帰りされた話



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