象牙色のフランス旅行 第5話
もう完全に道に迷いました(というか地下鉄降りた時点で迷子だったけど)。
それでもブラブラ歩きながらふと腕時計で時間を見ると既に13時過ぎ。もう3時間も歩き続けてます(若い!!←いや、そうでなくて)。
ヨーロッパって古い街並みが残ってる場所だと中世の頃の石畳がそのままなんですよね。しかもデコボコでまともに歩くのが大変。で、僕はブーツだったんですよ。しかもヒールのあるかかとが木製のブーツ。だからもう足が痛くて痛くて。
歩き疲れちゃって立ち止まりました。そして我に返りました。
自分が迷子でホテルの電話番号もわからない、パスポートもホテルに置いたまま、自分がどこにいるのか場所も方向も方角もすべてわからない、というこの状況の危険さに、今頃気づきました。
もう一気にネガティブ感情がMAX
今はまだ明るいからいいけど暗くなったら・・・とか考えると「今から目的地向かってすぐ着いたとしても、すぐ帰らないといけない。それにタクシーは怖くて乗れないし(ぼったくられたり、どっか連れてかれそうだから←すごい偏見)」などと考えてたら答えが出ました
「そうだ、帰ろう」と。
足も限界、これ以上歩いても辿りつける気がしない。「帰宅モード」に切り替え、頭の中をジャンヌ・ダルクから「一番近い地下鉄の駅へ変更」しました。
さぁ、今度は地下鉄探して歩き回ります。
グルグル・・・トコトコ・・・足痛いのと悔しいのと不安との闘いです。
こういう時って日本大使館とか電話してみるといいのかなぁ、とか俺一人フランス置き去りになるのかなぁ(←そんなことあるわけがないんだけど)とか色々頭に浮かんでくるけど、全部マイナス思考ばかり。
それから2時間ぐらい歩きました。計5時間も歩いてます。昼飯も食ってないので腹減りすぎて目眩までしてきます。疲労も限界、俺、一体どうなるんだろう・・・と思ってたら、路傍に看板が。
なんと、この地域の地図看板!! これはラッキー!! 早速地図と今、自分がいる場所を確認し、地図と地形を確認します。そして、地図看板内に「地下鉄」マークを発見!!
「やった、帰れる!!」
僕は嬉しくてたまらなくて、今度は道に迷わないようにしっかり地図を頭に叩き込んで(大通りまで直進して左折するだけだったんだけどね)、地下鉄目指し、最後の力を振り絞ります。
5時間よく歩いたなぁ~人間の歩く速度が時速4kmていうから、俺20kmも歩いたのか・・・などとさっきまで全然余裕なかったくせに、こんなどーでもいい計算などをしつつ、そして駅発見!!
神は俺を見捨てなかった!!
おお、神様ありがとう!!
地下鉄の駅だ!!
ありがとう、本当にありがとう。
もう泣きそうでした。さっそく駅名確認して、路線図と路線の色を確認、ホテルに一番近い駅までの切符を買って、改札口を通ります。
帰れる、帰れる、帰れる、帰れる・・・頭の中いっぱいです。限界だったんでしょうね、ホント。
改札口を抜け、ホームまでの階段を下ります。すると・・・
あーーーーーーーーっ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
と、ホームいっぱいに響き渡る声で僕を指さす子供がいます(あーなのかわかんないけどどう聞こえた。)。
そう、さっきの女の子たち。
しかも今度は2人じゃなくて20人ぐらいいる。
フリーズしました、僕。
頭の中、真っ白です。その子は後ろにいる仲間に声かけて何やら説明してます。
「ホラ、さっき言ってた珍獣だよ。ね、ウソじゃなかったでしょ。みんなで遊んでもらおうよ」(←多分こんな感じでしゃべってる)
その子が先頭になり、僕めがけて階段を駆け上がってきます。
それに釣られて、他の子供たちも奇声を上げながらいっせいに僕めがけて駆け上がってきます。
想像してみてください、20人ぐらいの子供が一斉に僕めがけて階段駆け上がってくる「地獄絵図」。
ホラーですよ。ホラー。
しかもブーツで5時間歩いてメシ食わず、もうフラフラ。やっとの思いで、地下鉄見つけて、今までの緊張感や集中力が切れて、解放感いっぱいのタイミングで、このハプニング。
駆け上がってくるのを見て、我に返り、逃げます。
逃げつつも、子供が何か見つけた時は万国共通のリアクションなんだなーと思いつつも、僕も階段を上がる。しかし、もう足はグダグダ。逃げ切れない、観念した僕は逆に、その「群れ」に向かっていきました。もう余裕なんて全くありません。
子供たちに囲まれて(昨日といい今日といいよく囲まれるなぁ)服を引っ張る子、足にしがみつく子、振り払い、力ずくで引き剥がし、電車に乗り込みます(そういやこのときにはテロの警戒解除されてたんすよね)。
そして電車に乗り込むと子供たちは諦めたようで、電車の中までは追ってきませんでした。
「勝った・・・」
まるで戦場から生還した兵士のようです。
車両の中から子供たちに「バイバイ」と手を振り、車両は動き始めました。
ホテルについたのは16時過ぎ。
部屋に戻るとメイドさんたちがベッドメイキングをやってくれてました。
もう寝たかったので僕はチップを渡し、「もういいですよ、ありがとう」と伝え(やっぱり日本語)、部屋から出てもらいました。
「ありがとうございました」と一礼し、扉を閉めて
「ふぅ~っ、よく帰ってこれたな、俺」
とつぶやき、そのままベッドへ倒れこみました。いやぁ~冒険した。
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