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「ある7月の晴れたさわやかな日のできごと。」②

次から次へと全身に汗が吹き出てくる。

これでは少し止まって体を拭いても仕方がない。

「あと半分くらいかな。家に帰ったら服脱いで、シャワーを浴びよう。頭からザバッと。それからパジャマのズボンとキャミソールに着替えて麦茶を飲もう。気持ちいいな。」

さゆりはそう心に決めて歩を進める。

体中が気持ち悪い。

汗が気化して、おなかが少し冷えてくる。

それでもさゆりは一歩一歩と家への距離を縮める。

すでにもう、最高のエンディングはできているんだから。



もうすぐで坂の頂上だ。

さゆりの目には英字で「heart」と大きく書かれたお店の看板が映った。

外壁にはたくさんのおもちゃのポスター、入り口の左側にはガチャガチャが十台ほどおかれている駄菓子屋だ。

幼かった頃、お小遣いを親からもらうとよく妹と二人で通ったものだ。

両親と出かければ、もっと大きなスーパーやデパートで買い物が出来たのに、さゆりはこの駄菓子屋で買い物をするのが好きだった。

今と比べてあの頃は親の意見に従ってばかりだったから、いつでも、何を買うにしても自由だったこの駄菓子屋はユートピアだった。

そう、さゆりは今反抗期を迎えている。

親が言ったことをそのまま、「はい」と受け入れることは少ない。

すかさず「でも」「だって」と切り出して意見を出す。

最近は髪を染めるかどうかで親と揉めたばかりだった。

【③に続く】

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