「ある7月の晴れたさわやかな日のできごと。」⑲

「ミンスク。」

ベラルーシ共和国の首都を自慢げに言う母の声が聞こえる。


どうやらしりとりはまだ続いているらしい。


「えーとね・・・」

詩織も必至に応戦している。



さゆりは前方に目線を戻すと迫る左カーブに備えた。

白いガードレールが見える。


木々の隙間からラムネの瓶のような水色の空が覗く。

ハンドルを右へ傾けると同時に体重も右へ。

ガードレールが迫る。

1秒、2秒。


ハンドルを左へ切る。

風がシャツをバタバタと揺らす。


「わあーきれい」

右折すると眼下には美しい街並みが広がっていた。

四角形、長方形など様々な形の家々に赤や白のマンション。

中心には線路が走り、大手デパートやスーパーが所狭しと肩を並べている。

少し離れたところには赤と白にカラーリングされた鉄塔が立っており、電線はこちらの山間部の方に伸びていた。


まるで空から見下ろした様な素晴らしい景色だ。

カメラを覗いた時、思わず映る景色に圧倒されてシャッターを押すのを忘れてしまうようなそんな感覚。



【⑳に続く】



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