「ある7月の晴れたさわやかな日のできごと。」④
今日は金曜日。
部活の朝練から帰ってくる途中、子供の頃のユートピアを目にした時、かつての自由が懐かしかった。
あの店に入れば自由が手に入る。
たぶん髪の毛を染めることもできるだろう。
結局、さゆりは駄菓子屋には入らず、坂を下った。
その後はまっすぐ直進して、はじめの信号を右折し、公園を通りすぎて30メートル程行けば我が家だ。
「さて、ここからは自転車君の出番かな。」
押していた自転車にまたがると、さゆりは自転車のギアをいっぱいにまで絞るとペダルを足で押し込んだ。
ゆっくりとタイヤが回転を始める。
あとは下り坂の力を借りればいい。
ヒューという風の音とシャーというタイヤが回転する音が耳に届く。
全身の汗がさよならを言えずに去っていく。
「最高!」
前方からの車はない。
さゆりの自転車はさらに加速し、坂を下っていった。
信号が見える。
さゆりは慣れた様子で大きく、体を左に倒し、自転車で放物線の様な弧を描くとスピードを殺さず、上手く左折をやり遂げた。
このスピードだと1分もかからず家に着くだろう。
公園が見える。
大きなジャングルジム。
何人かの子供。
誰かの泣声がする。
「あっ!」
【⑤に続く】
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