「ある7月の晴れたさわやかな日のできごと。」⑪
赤いミニトマトが一つ。
その赤色はとても鮮やかで周囲の緑の中で一段と映えていた。
サーモンの赤みなど赤ではないと主張するかのように、一つ、そのミニトマトは置かれていた。
詩織はシャワーから上がるとリビングでテレビを見ていた。
私は二階の自分の部屋で夏休みの課題に精を出し、母は昼間できなかった洗濯をした。
7時に父が帰宅するといつもの様に夕食をとった。
母が今日、祖母の所を尋ねた話をし、私、詩織の順で今日あったできごとを語った。
「あなたはどうでした?」
と母が父に話を振ると
「いつもと変わらないよ。今日もよく働いた。幸せさ。」
と答えた。
いつもと同じ。
赤いトマトは詩織が食べた。
私も詩織もトマトが好きだ。
なぜ母が一つだけサラダに添えたのかはわからない。
一つの方が見栄えがよかったのだろうか。
【⑫に続く】
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