【襟裳の森の物語】第八夜

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〔控えめな提案〕

話のタイミング

 北海道から世界に問うた組曲の誕生から,1年半が過ぎた。私は職場の送別会の席にいた。皆が良い気分でほろ酔い加減になる中,私は緊張しながら話を始めるタイミングを図っていた。

 次年度の担当は既に決まっていた。私は音楽・書写専科になることになっていた。私は音楽専科になったら,やりたいことがいくつかあった。それをやっていいものかどうか,先生方の考えを探るために,この席はまたとないチャンスだった。

 私はにこやかに談笑する先生方の間に割り込んだ。来年度,3〜4年生を担当する先生方の集団だ。みんなの話題は来年度のこと。どんな教育実践を仕掛けていくかという話が続いていた。話が運動会から学芸会に移ってきたタイミングで,

「あの〜,学芸会の音楽なんですが…」

と私がおずおずと話しだした直後,先生方は

「ああ,いいよ,好きにやって。なんか考えてるんでしょ?」

と,にこやかに反応してくれた。スムーズすぎる展開にとまどう私に,

「なんかやりたいって,顔に書いてあるもん。そんな,目キラキラさせて」

と先生方は笑った。


前代未聞の

 私は意を決して

「音楽が専科制になるので,学年をまたいだ発表ができると思うんです。3,4年生の中学年合同の合唱発表,させていただけませんか?今までやったことがないと思うんですが,おもしろい取組にできると思うんです」

と,一気に話した。先生方は予想していなかった展開に驚き,一瞬の沈黙が流れた。


 しばらくして沈黙を破ったのは,一番の若手だった。

「それは,先生が指導してくださるんですか? 私には合唱の指導をする自信が…」

それをきっかけに,他の先生方も話し始めた。懸念事項は皆同じ。合唱指導はどうするのか,そして伴奏者は?

 私は考えている策を話し始めた。先生方は熱心に聞き入ってくれた。私の考えを全て話した後,先生方は

「それなら大丈夫だわ。お願いします」

と了承してくれた。一人の先生は,

「校長に話してあるのか? まだ? じゃ,今話しに行こうや」

と言ってくれて,私を伴い校長の席に向かい,あっという間に校長の了承も取りつけてしまった。


 中学年の席に戻ってきて,学芸会の発表について盛り上がっていると,近くの席に陣取っていた高学年担当の先生方から声がかかった。


(つづく)

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【襟裳の森の物語】第九夜

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