【襟裳の森の物語】第十一夜

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〔総合の学習で〜高学年合唱〕

 小学校三年生以上には,【総合的な学習の時間】というものがある。これは,文部科学省のページにおいて,以下のように説明されているようなものだ。すなわち,

  総合的な学習の時間は、変化の激しい社会に対応して、自ら課題を見付け、自ら学び、

  自ら考え、主体的に判断し、よりよく問題を解決する資質や能力を育てることなどを

  ねらいとすることから、思考力・判断力・表現力等が求められる「知識基盤社会」の

  時代においてますます重要な役割を果たすものである。

と。

 私はこの年,高学年の先生方にお願いして,【総合的な学習の時間】を環境問題を学ぶ時間に設定していただいた。子どもたちの学びが深まれば,最終的に“襟裳”に辿り着くだろうという目算だった。

 そしてそれは,

「音楽の授業が学芸会の練習の時間になってる」

という批判を生み出さないための工夫でもあった。子どもたちは学習の一環として,学芸会に取り組むのだ。


襟裳方式を知る

 子どもたちが環境に対して示す関心は高い。次代は子どもたちのものだから,これはすばらしいことだ。子どもたちは最初は現状を憂えてばかりいたが,次第に未来に向けて考えることができるようになっていった。

 特に子どもたちが高い関心を示したのは,世界各地で現在も進行している“砂漠化”についてだった。地球温暖化の問題とも相まって,絶望に近い表情の子どもたちに明かりが灯ったのは,“襟裳方式”を知った時だった。

 子どもたちは襟裳岬を砂漠にしてしまった人間の愚行に怒り,授業で告発した。しかしその後に続く物語を知った時に,人間の素晴らしさを感じることもできたのだ。学習は感動とともに,どんどん深まっていった。

 私が“襟裳方式”に詳しいということを担任から知らされた子どもたちは,私のもとに殺到した。私は様々な資料を並べ,詳細を語って聞かせた。子どもたちは何度も頷きながら,鉛筆を走らせ続けた。どの子もノートと自分の手が真っ黒になっていった。

 そして6月のある日,その日の音楽には,いつもは参加していない先生方の姿があった。音楽の授業自体が変わった形で,高学年児童が全員,体育館に集められての授業だった。

 授業の終盤,私の合図で,5年2組の担任がピアノに近づいた。子どもたちは何が起こるのかと,静まり返った。担任は,美しい三拍子のメロディーを奏で始めた。

 私は子どもたちの方に向き直り,ピアノに合わせて歌い始めた。子どもたちは困惑の表情を浮かべていたが,三拍子部分が終わり,四分の四拍子の激しい伴奏に続いて私が発した言葉に,子どもたちは騒ぎ出した。

「襟裳だ!」「先生,今,襟裳って歌った!」「昔の襟裳だ!」


(つづく)

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