普通の医者だった34歳の僕が、一度はあきらめた出版の夢を追い続けたら実現したお話

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そして、このコメントを書いた翌日。


突然僕のiPhone4sに、知らない番号からの着信が。

まさか・・・


小木田さん
「私、幻冬舎の編集者をやっています小木田(こぎた)と申します。
原稿を読ませていただきました。ぜひ一度お会いしたく存じます。
お時間のある日に、弊社までお越し願えますか」



優しそうな、それでいて一瞬で切れ者とわかるはきはきとした喋り口の女性。

「わ、わかりました。では4日後の15時に・・・」


僕はとっさに手術予定表をみて、午後に手術が無い日を選び震える声でこう答えた。




あこがれの人に、逢いに行く


そして12月のある日の昼下がり、僕は慣れないスーツをまとい山手線の代々木駅にいた。




約束の時間より早く着きすぎた僕は、緊張のあまり昼に代々木駅前でなぜか家系ラーメンを食べてしまった。


しもた、口がくさい。どうしよう・・・。

仕方なく駅前のファミリーマートで歯ブラシを買い、トイレで歯を磨いた。いったい僕は何をやってるんだろう?

そしてiPhoneのgoogle mapを頼りに歩くこと10分。

幻冬舎のビルに着いた。5階建てくらいのビル。すぐ向かいには2号館がある。

なんだか「ゴゴゴゴ・・・」と聞こえてきそうな、迫力のある建物だった。



※幻冬舎 1号館。


約束の時間より40分くらい早く着いてしまったので、一旦離れて近くのスタバに入る。

「ソイラテなら豆乳だし、なんとなく口臭もおさえられるかも」

そう考えて、ソイラテを飲んだ。

・・・。

ぶはっ!!!!!!!

二口くらいでものすごくムセた。スタバ中の人が、僕を見た。顔が真っ赤になった。

もう何も手につかなかった。

こんなに緊張したのはいつぶりだろう。どんな大手術の前よりも、国際学会の英語プレゼンの前よりも、僕はカチコチになっていた。


約束の時間の20分前になったので、「幻冬舎」と書いてあるビルの目の前に行き、編集者さんの小木田さんに電話を入れた。

「あ、私中山と申します。本日こちらに伺う予定だった、中山です。少し早めに着いちゃったんですが」

もう敬語もクソもない。

「今伺いますので、ちょっとお待ち下さい」


そうして待つこと30秒。優しそうな女性が、ドアから出てきた。うわ、幻冬舎の人だ。秘書さんだった。促されるままにエレベーターに乗り、会議室へ通される。

3メートル四方はありそうなくらいの「正面突破」と書かれた額が、廊下に掲げられている。

全身の立毛筋(りつもうきん)が収縮し、毛が立つのがわかった。


待っていると、小木田さんがいらした。やっぱり優しそうな方。しかもネイルがかなり凝っていて、お話しながら観察していたら少し緊張がほぐれた。


「ところで、ネイル素敵ですね!」
小木田さん
はあ。
もうすぐ見城が参りますので。

流された。しかも圧倒的に。

さすが幻冬舎の編集者さん・・・。


・・・。

・・・。


ゴクリ。


もうすぐ見城さんが来る。

僕は今、憧れの人に会おうとしている。僕の人生を、音を立てて変えたその人に。


そしてついに、その人は会議室に入ってきた。

YouTubeでみた、「編集者という病い」の表紙でみた、755のトークの顔写真でみた、そのままの人。予習通りの人。

なだれのように、色々な情報が僕の頭の中に入ってきた。医者の職業病だろう、身体的な所見を見てしまうのだ。

やっぱりすごい肩幅だ。眼光が鋭い。でもその割に、よく聞くと優しい声をしている。

スーツはやっぱりアルマーニだ、ネクタイもアルマーニだな。そして少しお疲れになっているようだ。


びりびりと、部屋の空気が振動を始める。酸素濃度が15%くらいまで低下する。

圧倒的存在感。






そしてまずは名刺交換だ。

医者をやっていると、名刺を交換する機会はほとんど無い。名刺を持っていない医者のほうが多いくらい。

本気の名刺交換は、たぶん生まれて初めてだ。


名刺入れさえ持っていなかった僕は、生の名刺を上着の左胸内ポケットに4枚入れておいた。

見城さんと向かい合い、見城さんが名刺を出していらしたそのタイミングで一枚ぱっと出そうとした。

すると・・・。

なんと4枚全部出てきてしまい、幻冬舎の会議室の床になんと僕の名刺が散らばってしまった。上手く拾えない僕。

誰もくすりとも笑わない、しんとした広い会議室。緊張はピークに達していた。


それから始まった、50分間の会話。本のこと、僕の職場や私生活のこと、755のアプリのこと・・・。


見城さん
「すごいね、感動したよ。
でも、始めに僕はこれを読まなかった。
まず小木田さんに読んでもらって、感想を聞いたんだ。そしたら、彼女が『これは世に問いたい』と言った。そして僕も読んだ。
感動的だった。3月末に出版しよう」
あ、ありがとうございます!!!


信じられぬ言葉の数々。巨人を前に、僕はただ微笑んで「ええ、ええ」としか言えなかった。

見城さんが途中でいなくなってから、小木田さんと具体的なスケジュールを打ち合わせした。

僕は、フラフラになって幻冬舎を出た。

外はすっかり暗くなっていた。


満月が、ただ静かにやさしく僕を見つめていた。



※幻冬舎を出た直後に撮った一枚。「幻冬舎」の看板の上に、満月が光っていた。


その後のことは長くなるのでまた別の機会に。

こんな風にして、僕の書いたものは本になった。


でも、僕の熱狂はまだ始まったばかりだ。

この本を、読んで欲しいと思う。このちっぽけな、何者でもない34歳の若造外科医の渾身の想いを注いだこの本を。

特に、「死ぬこと」なんて考えたことのない人に。普段本なんて読まない、という人に。

立ち読みでも中古でも回し読みでも図書館でも、なんだって構わない。


もし読んで下さったなら。

いつか必ず来る、あなたの「その時」の哀しみや苦しみを、恐怖をそっと和らげてくれると思うから。

「死ぬこと」について考えることは、イコール「生きること」について考えることだから。

そして、どうやったら幸せに生き、どうやったら幸せに死ぬことができるかが少しわかっていただけると思うから。



参考までに、本の表紙と目次を下に貼っておきます。











アマゾンのリンクはこちらです。

「幸せな死のために一刻も早くあなたにお伝えしたいこと

         ~若き外科医が見つめた『いのち』の現場三百六十五日~」

http://www.amazon.co.jp/dp/4344983777



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