【第四話】『彼らがくれたもの』〜死に場所を探して11日間歩き続けたら、どんなものよりも大切な宝物を見付けた話〜
死の選択…
「死にたい…」
立ち上がることも出来ず、一日中横になって、
何をすることも出来ない僕は、そう思った。
現実の世界を生きていくという選択は、
この時の僕には考えられないことだった。
そんな僕に残された選択肢は、
「死」
だった。
僕は、自殺をする方法を探した…。
「死にたい…」
と言う人を多くの人は信じられないと思うだろう。
どうせ構って欲しいだけだ。
甘えているだけだ。
と思うだろう。
しかし、うつ病になり、本気で死にたいと思った人は、
すでに誰かに構ってもらっていることが、
心から申し訳なく思い、
周りの支えなしでは生きていけない自分を恨んでいる。
最終的には自分が楽になるためなのだが、
周りの人をこれ以上巻き込まないために、死を選ぶ人もいる。
決して軽々しく発しているのではなく、
長い時間悩み、苦しみ、考え抜いた末に、絞り出した唯一の答えなのだ。
うつ病とは本当に恐ろしい病気だ。
問題の解決方法が、自らの存在を消滅させることしかないと思わせる。
悪魔に呪いをかけられたようだ。
音楽をやっていた頃の僕は、
歌詞を書くためによく自分の気持ちを書き留めていた。
しばらくの間、全く書いていなかったが、
うつ病になり、色々と考える時間が増え、
僕はまた、自分の気持ちを詩にして書き溜めていた。
唯一の気持ちの吐きどころが詩だった。
その書き溜めた詩を読み返し、
リアルな状況を思い出しながら書いてるのが、このストーリーだ。
この時期に書いた詩にこういうものがある。
うつ病は心の風邪なんかじゃない。
心の癌だ。
苦しんで、苦しんで、
最期は死ぬんだ。
冒頭で不快な思いをさせたしまった方には申し訳ないが、
この時の僕は、何とも恐ろしい精神状態だったということをご理解いただきたい。
「自殺 やり方」
「首吊り 苦しい」
「睡眠薬 致死量」
僕は、ケータイでこんなキーワードを検索した。
やはり、首吊りが一番楽そうだ。
上手くやれば、15秒程で意識が無くなるらしい。
その後の姿は悲惨なようだが…。
少しずつ貯めた睡眠薬を全て飲んでから首を吊れば、
もしもすぐに意識が無くならなくても、抵抗も出来ず楽に死ねるだろう。
しかし、問題点があった。
家の中に紐を掛けられる場所がほとんど無かった。
あっても、全体重をかければ壊れてしまう。
確実に失敗する。
最悪の場合、脳に酸素が送られる時間が長いと、
脳の機能が停止し、一生寝たきりの状態で生き続ける。
今の僕の状況とあまり変わらないが、
自ら命を絶つことも出来ず、
肉体の死が訪れるまでこの状況が
永遠に続くと思うと、
失敗のリスクは実に大きかった。
誰か僕を殺してくれないだろうか…
外を歩く時も、
通り魔が現れないだろうか?
駅のホームにいても、
誰か背中を押してくれないだろうか?
あなたの親御さんの人生を雑誌にしませんか?
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