猫は鎹(かすがい)
「大丈夫、今、息したよ」
「ねえ、ちょっとあんた抱っこしてあげてよ」
と言われた私は、
抱いたショックで死んでしまうのではないかと
ちょっと躊躇して、とりあえず
額の辺りと喉を撫でてみました。
すると、もう一度、大きく息をして、
少し伸びをしたような動きになり、
手足が少し痙攣しました。
そして、半分開いていた
目が閉じられました。
その後は、また動かなくなり、
目はまた半開き……。
ゴンの身体に耳をあてて
心臓の音を確認しようと思いましたが
……何も聴こえませんでした。
やっとの思いで、抱き上げてみましたが、
いつもフワフワの身体から
温度が無くなるのがわかりました。
肉球も冷たくなっている……。
私が実家に帰って来るのを
待っていてくれたかのような
最期でした。
「おお~、やっと来たか……
元気そうじゃん……
じゃ、 安心してあっち行くよ……
一緒に遊んでくれてありがとな~
じゃあな……」…………カクッ。
……てな感じだったと思いますが。
「子はかすがい」とは言いますが、
私の両親にとっては、
老夫婦の二人暮らしを送るの中で
「猫はかすがい」だったと思います。
父や母は
ゴンによくグチをこぼしていました。
「なあ~ゴン!聞いてくれよ~」
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