その日は突然やってくる。〜日本と外国の間で生きるという意味〜

著者: Yuji Hoshino


はじめに

皆さんは、ある日を境に自分のバックグランドを失う経験をした事がありますか?

こう書いてしまいますと、辛い体験が多いような気がしますが

海外駐在をすると、家族全員が体験することでもあるのです。


日本から赴任地に向かって飛行機に乗った瞬間、日本の文化、友人、風景・・

自分のバックグランドを失う、リセットされる感覚とでも言うのでしょうか。

片道切符を持って飛行機の乗ることも影響あるでしょうね。


そして赴任を終え、日本に帰国する飛行機に乗った瞬間、

外国で築き上げた人間関係、親しんだその国の文化、空気、風景・・・・

これらを全てリセットし、日本に戻ってくるのです。

次はこの国にいつ戻って来られるかな? 来られないかも。

日本に戻れる安心感と、もう少し居たかったなという複雑な心境が交錯します。


そして帰国してしばらく経つと・・・・・

その日は突然やってきます。私は日本人なのだろうか? 

いわゆる海外生活の長い帰国子女と言われる子供達が体験するものです。


帰国子女と聞くと、皆さんはどういうイメージでしょうか。

英語(外国語)が堪能なだけ、自己主張が強い、賑やか、自由な考え方をもっている・・・

協調性を重視する日本では、少しマイナスなイメージがつくような気がします。

(私の偏見かもしれませんが)


私の娘(大学1年生)曰く

「帰国子女って、日本の人が勝手に決めた枠組みでしょ。私は帰国子女ではないよ。私は私。」


でた〜、帰国子女と思われたでしょうか。


単一文化の中で生きる多くの人とは異なった経験を持つため、

周りからは少し違うなという奇異な目で見てしまう。

帰国子女という言葉に、そんなイメージを重ねる人も多いと思います。


「サードカルチャーキッズ(TCK)」という概念


TCK(第3文化の子供)の定義とは、

発達段階のかなりの年数を両親の属する文化圏の外で過ごした子供のことです。

あらゆる文化と関係を結ぶが、どの文化も完全に自分のものではない。

TCKの人生経験は、彼らが関わったそれぞれの文化から取り入れた要素から

成り立っているが、彼らが帰属意識を覚えるのは、同じような体験を持つ人との

関わりにおいてである。(本文引用)


簡単にいうと、

2つの文化の間で特定の文化に属することなく、

独自の生活文化を創造していく子供たちです。あのオバマ大統領もTCKとか。

この概念は、ハウトン大学のデビット・Cポロック教授が発表され

彼の本は日本を含め世界中で出版されています。


私はグローバル化の進む日本において、

これからはTCKの活躍が不可欠ではないかと大げさに考えています。

彼ら、彼女らは、異文化の間の橋渡しができる能力を持っているからです。

まずはTCKの親として、まさに今経験している身近なことを書くことで、

TCKを理解してもらうこと。

そして、その先に何かできることがあるのではないかと漠然と考えていますが、

どんなことができるのか、皆さんと考えていけたらいいなと思います。


この2年間、子供たちの大学受験で右往左往しておりましたので、

いわゆる日本で言う「帰国子女」の受験奮闘記を最初に書いてみたいと思います。

これからここで経験談を話していくことで、

帰国子女という言葉だけではなく、TCKという概念を日本でも一般的にして

いきたいし、今から海外赴任する人々の参考になれば幸いです。

著者のYuji Hoshinoさんに人生相談を申込む